医療・福祉

義肢装具士

ぎしそうぐし

医師の処方に基づき、義足・義手や体を支える装具を採寸・採型、製作、調整する国家資格の専門職。装着した人の歩き方や皮膚への圧力を確かめ、生活に合う形へ何度も適合させる。

製作室で、男性の義肢装具士が下腿義足を作業台に置き、両手で部品の接続や形を確かめている。
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はじめに

歩きやすさや体の動きを助ける、義足・義手や装具を一人ひとりに合わせて作る仕事です。足の形を測り、材料を加工し、使う人に実際につけてもらって調整します。見た目だけでなく、体重のかかり方や痛み、靴をはいたときの使い心地まで確かめる技術が必要です。

2050年の見通し

2050年編集部の見立て

2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。

今の年収約454万円平均値・2025年の統計
2050年(物価の上昇を除いて)少し上がる幅:少し下がる〜上がる
収入
個別に合わせる技能と資格は需要の下支えになるが、補装具の公定支給基準や製作所の設備投資は賃金への還元を制限する。機械で加工時間が短縮され、熟練した適合担当の価値が高まる場合を中心に、実質では小幅な上昇を見込む。
需要
高齢者の歩行支援と装具の再適合は継続的な仕事を生む。一方で三次元測定・加工の省力化が製作人数を減らし得るため、需要はやや増加を中心としつつ幅を持たせた。
人による差
人による差が広がる

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今の義肢装具士の仕事

今
  • 医師の処方と生活動作の確認診察で示された治療上の条件と本人の仕事・歩行環境を確かめ、必要な装具の形を考える。
  • 装着部位の採寸・採型義足のソケットや足首の装具が合うよう、体の寸法を測り、型または立体形状を取得する。
  • ソケット・支柱・継手の製作プラスチックや金属などを加工して、体重を支えるソケットや動きを助ける部品を組み上げる。
  • アライメントと仮合わせ義足の各部品の角度と位置を調整し、立位や歩行で体重のかかり方が適切か確かめる。
  • 装着後の圧迫部と摩耗の再調整使い始めてからの痛み、赤み、部品の摩耗を聞き取り、削り直しや交換の必要を判断する。

2050年、仕事はどう分担される?

2050年編集部の見立て

業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。

AI・ロボットが中心

  • 三次元形状データからの初期設計 確からしさ:中 採寸データと過去の製作例から形の候補を提案できるが、実際の骨の出っ張りや負荷には個人差がある。
  • 切削・積層造形による部品加工 確からしさ:高 型が確定した部品の切削や積層造形は、指定条件のもとで自動機械に任せやすい。

AIと協働

  • ソケット内の圧力と歩行の測定 確からしさ:中 センサーが荷重の偏りを数値化しても、痛みや生活場面と照らして調整すべき箇所を決める。

人が中心

  • 初回装着時のアライメント調整 確からしさ:中 足の着き方を見ながら角度を微調整するには、本人の感覚や転倒への不安を聞く必要がある。
  • 生活環境が変わった後の再適合 確からしさ:中 通勤、スポーツ、体重変化などで求められる支え方は変わるため、本人と相談しながら調整を重ねる。

2050年の一日

2050年架空の一日

2050年、義肢装具士の一日(架空)

作業台の上に、青い靴が左右一足ずつ置かれていた。三十代の義肢装具士・航は、その横に仮組みの義足を立て、金属の継手を指で少しだけ動かした。今日は、利用者が仕事用の革靴から休日の運動靴に替えても歩きやすいかを確かめる日だ。朝の製作所には、削った樹脂の細かな粉が残っていた。

足の形を三次元で読み取る機械が、義足のソケットの候補を作っていた。航は画面の滑らかな曲線を見て、膝の近くに圧力が集まりそうな部分を手で修正した。型を自動で削り出す機械は速いが、椅子に座ったときの違和感まで決めてはくれない。利用者に仮合わせをお願いし、骨の当たる場所を一つずつ確認した。

廊下の短い歩行路を歩いてもらうと、計測器には右への荷重の偏りが出た。航は足首の部品の角度を少し変える。数字は改善したが、利用者は『階段を下りるときは少し怖い』と言った。航は数値が良くなったから完成とは言わず、手すりのある低い段差で足の運びを確かめ、もう一度調整した。

夕方、作業場の隅で航は二組の靴に合わせた設定を記録した。利用者は靴ひもを結び、『明日は駅まで歩いてみます』と笑った。航は急な長距離を勧めず、少しずつ慣らすことと、圧迫感が出たら連絡することを伝えた。作り終えることではなく、暮らしの中で使い続けられることが、この装具の完成に近づく道だった。

収入

平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。

今の年収

今統計

約454万円(年収・平均値)

調査
令和7年賃金構造基本統計調査(job tag掲載の年収)
調査年
2025年
対象
job tag「義肢装具士」に対応づけられた「その他の医療・看護・保健の専門的職業」等の雇用労働者で、義肢装具士のみに限定された平均ではない。
税・賞与
税・社会保険料を引く前、賞与を含む
  • job tag「義肢装具士」の2025年全国年収454.2万円を円に換算した。統計は複数の医療専門職を含む職業分類で、義肢装具士だけの平均値ではない。
  • 義肢装具製作所、病院、リハビリテーション施設では担当業務と給与体系が異なる。
  • 熟練した適合調整やスポーツ用の特注品を扱う仕事と、既製品の調整中心の仕事を同じ年収とみなせない。
  • 独立した製作所の売上から材料費・設備費を引いた事業所得は、雇用者の給与統計に含まれない。

収入を動かすもの

2050年編集部の見立て

AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。

  • 高齢者の歩行能力と慢性疾患上がる方向

    歩くことを助ける装具が必要な人が増えると、体に合わせて作る仕事も増えます。

    大人向けの詳しい説明

    下肢装具や足部の支援は、疾病、まひ、加齢に伴う機能の変化で需要が生じる。装具の交換・再適合も必要になる。

  • 三次元採型と自動製作どちらにも動きうる

    足の形を機械で測って作れても、実際に歩きやすいかは確かめる必要があります。

    大人向けの詳しい説明

    CAD/CAMや積層造形は加工を効率化する一方、圧力の調整や使用者との適合確認には技術が残る。

  • 補装具費・医療保険の価格基準どちらにも動きうる

    必要な装具の費用を支える制度が、作る人の給料にも影響します。

    大人向けの詳しい説明

    制度の支給価格や償還基準は製作所が得られる収入に影響する。材料費の高騰を価格に反映できなければ利益は縮む。

  • 個別採寸と熟練者の確保上がる方向

    同じ形のものをたくさん作るだけではなく、一人ひとりに合わせる技術が大切です。

    大人向けの詳しい説明

    装具の装着状態と歩行を観察して調整できる技術者は、加工自動化後も品質と安全を左右する。

2050年の3つのシナリオ

2050年編集部の見立て

未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。

  1. 高齢者の歩行支援と適合調整が増える

    条件身体機能を支える装具を必要とする人が増え、製作後の定期調整も重視される。

    起きそうなこと特注調整の仕事が増え、経験を積んだ専門職の賃金交渉がしやすくなる余地がある。

  2. 三次元測定・加工の普及で製作工程を短縮

    条件採型、部品切削、積層造形の自動化が普及し、適合に必要な手作業だけが残る。

    起きそうなこと少人数で多くの件数を扱える反面、機械投資の負担と製品価格への競争が賃金上昇を抑え得る。

  3. 医療・福祉制度の支給価格が伸び悩む

    条件補装具費支給制度や医療費の価格基準が実質的に抑えられ、材料費だけが上がる。

    起きそうなこと需要があっても製作所の利益が伸びず、待遇改善が難しくなる可能性がある。

働き方と暮らし

2050年編集部の見立て

人手は足りる? 余る?

義足や義手に加え、足首や膝、体幹を支える装具の製作・適合を担うのが義肢装具士だ。医師の処方に基づき、測る、作る、試す、直すという工程がある。高齢化や慢性疾患に伴う歩行支援が続けば、利用者の体に合わせた調整の需要は残り、やや増える方向を中心に見込む。

ただし三次元採型や加工機械の進歩は、一人が製作できる件数を増やす。業務量が増えても必要人数が同じ比率で増えるとは限らない。医療・福祉の支給価格と製作所の設備投資の条件が、全国の職場数と報酬に差を生む。

働き方

勤務先は義肢装具製作所、病院、リハビリテーション施設など。作業場で模型を削り部品を組み立てる時間と、病院などへ出向いて利用者の採寸や仮合わせをする時間がある。理学療法士や医師の観察結果も聞いて、作った装具の角度や圧迫部を調整する。

昼間の勤務が中心だが、製作所では納期や病院の診療時間に合わせて外出や残業が発生することもある。材料、工具、加工設備の管理も必要だ。特注品の再製作には時間がかかるため、本人の生活で困ることを事前に聞く大切さが大きい。

この仕事に近づくには

今

進路と資格

  1. 高校卒業後、義肢装具士の指定養成課程へ進む指定された学校や養成所で3年以上、臨床医学、義肢装具工学、材料学、採型・適合などを学ぶルートがある。大学等での履修を経た別のルートもある。
  2. 義肢装具士国家試験に合格して免許を受ける義肢装具士法に基づく国家試験で、臨床医学大要、義肢装具工学、材料学、生体力学、採型・採寸学、適合学などを受験する。合格後は厚生労働大臣の免許を受ける。
  3. 製作所や医療の現場で採型・仮合わせを積むソケット製作、足部・膝継手の調整、利用者の歩行観察を学び、材料や製法が変わっても個別適合できる技術を磨く。

今から伸ばしたい力

  • 骨の出っ張りや体重のかかり方から圧迫部を予測する力
  • ソケットや支柱を安全な強度で加工する材料・工作技術
  • 義足のアライメントを歩行に合わせて微調整する力
  • 使う人の痛みや靴・通勤環境を聞き取る対話力
  • 医師の処方とリハビリ計画に合わせて適合を判断する力

出典と前提

最終確認日
2026年10月30日

出典

  • 義肢装具士|職業詳細(job tag)(厚生労働省)、2026年10月30日取得 採型、ソケット製作、アライメント、職場と労働条件、2025年年収454.2万円を確認
  • 義肢装具士国家試験の施行(厚生労働省)、2026年10月30日取得 国家試験科目、指定学校や養成所の3年以上の受験資格、試験制度を確認
  • 福祉のしごとガイド|義肢装具士(独立行政法人福祉医療機構)、2026年10月30日取得 主な職場、昼間の勤務と不規則な製作所の勤務、製作とリハビリテーションの役割を確認

予測の前提

  • 2050年も義肢装具の採寸と身体への個別適合には専門技術者の判断が必要となる。
  • 三次元採型と自動加工の普及は施設の設備投資と製品の種類によって異なる。
  • 補装具の支給制度と材料価格の変化が製作所の収益および賃金に影響する。

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