医療・福祉

作業療法士

さぎょうりょうほうし

病気や障害などで暮らしの動作が難しくなった人に、食事、着替え、家事、仕事、遊びなどの活動を使ったリハビリを行う専門職。体と心の状態を確かめ、その人が望む生活に近づける方法を考える。

リハビリ室で、女性の作業療法士が着替え練習用の布を示し、高齢の男性にボタンを留める動作を案内している。
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はじめに

着替える、料理する、字を書く、遊ぶといった毎日の動きを、もう一度できるように手伝う仕事です。手を動かす練習だけでなく、使いやすい道具や部屋の工夫も一緒に考えます。体を動かす力だけでなく、本人が「またこれをしたい」と思う気持ちも大切にするリハビリの専門家です。

2050年の見通し

2050年編集部の見立て

2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。

今の年収約444万円平均値・2025年の統計
2050年(物価の上昇を除いて)ほぼ変わらない幅:少し下がる〜少し上がる
収入
生活動作や在宅支援の需要が伸びても、保険サービスの価格や養成される担い手の数が給与上昇を抑える。自助具や訓練計画の専門性が評価される余地はあるが、実質年収は横ばいを中心とした。
需要
高齢化と在宅生活の支援が、実際の家事・更衣・趣味などの活動を扱う作業療法士の役割を広げる。一部の反復訓練の自動化と施設の予算制約を考慮し、増加を中心に幅を持たせた。
人による差
人による差が広がる

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今の作業療法士の仕事

今
  • 日常生活動作の評価食事、着替え、トイレや入浴などで何が難しいかを観察し、手の動き、注意力、生活環境を整理する。
  • 調理・更衣など実際の活動による訓練台所や作業療法室で料理や服を着る練習をし、本人が使える手順や道具を選ぶ。
  • 上肢・手指の機能訓練手を伸ばす、つまむ、握るなどの動きを課題に合わせて練習し、生活で使える力へつなげる。
  • 認知機能と精神面の作業療法注意や記憶、意欲の状態に合わせて創作活動や生活課題を使い、社会生活への参加を支える。
  • 自助具・住環境の調整柄の太いスプーンや滑り止めなどの道具を選び、家族と相談して暮らしやすい配置を考える。

2050年、仕事はどう分担される?

2050年編集部の見立て

業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。

AI・ロボットが中心

  • 動作映像からの可動域・速度の計測 確からしさ:高 手首や指の動きと課題に要した時間を映像から測る作業は、画像解析で補助しやすい。

AIと協働

  • 生活課題に合わせた練習案の作成 確からしさ:中 過去の訓練記録を使って候補を出せても、本人が何を大切にするかは面談で確かめる必要がある。
  • 自助具と住宅改修案の検討 確からしさ:中 道具の寸法選びや配置のシミュレーションを機械が助けても、本人が使い続けられるかは現場で試す必要がある。

人が中心

  • 調理・着替えなどの実地訓練 確からしさ:高 台所の配置や本人の疲れ方を確かめ、手を添える位置を調整する支援は対面性が強い。
  • 本人の生活目標と家族の支援方針の合意 確からしさ:高 何を自分で続けたいか、どこで家族に頼るかの調整は本人の価値観と関係性に関わる。

2050年の一日

2050年架空の一日

2050年、作業療法士の一日(架空)

作業療法室の台所には、二種類の包丁と滑りにくいまな板が並んでいた。二十七歳の作業療法士・由梨は、七十代の女性が今日何を作りたいか尋ねた。女性が選んだのは具だくさんのみそ汁。腕の動きが不自由になってから、家族に料理を任せることが増えたが、週に一度は自分で台所に立ちたいという願いがあった。

由梨はまず、まな板の上で野菜を押さえる動きを見た。手元の小さなカメラは指の角度を測り、握る力の目安を示した。けれど数値どおりに持っても、野菜がうまく切れない。女性は「立ったままだと、途中で肩が疲れる」と話した。そこで椅子の高さを変え、片手で食材を固定できる道具を試した。女性はゆっくり三切れを切り、「これなら家でもできそう」と笑った。

午後、由梨はその家庭の台所を立体図で確かめる。調理台の幅と収納の高さだけでは、動きやすさは分からない。家族との面談では、鍋を運ぶ工程だけは誰かが手伝い、材料を切るところは本人に任せる案を示した。便利な調理機械を買うこともできるが、女性は「全部機械にやってもらうのは寂しい」と言う。その希望が訓練の順番を変えた。

夕方、由梨は次回の練習用に、少し柄の太い菜箸を用意する。記録画面には手の動きの改善が表示されていた。しかし今日いちばん大きかった変化は、女性が来週の献立を自分で決めたことだ。作業療法は、数字では測りきれない暮らしの楽しみを取り戻す仕事でもある。

収入

平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。

今の年収

今統計

約444万円(年収・平均値)

調査
令和7年賃金構造基本統計調査(job tag掲載の年収)
調査年
2025年
対象
job tag「作業療法士(OT)」に対応する職業分類の雇用労働者。理学療法士・言語聴覚士などを含む集計分類の共通値。
税・賞与
税・社会保険料を引く前、賞与を含む
  • job tag「作業療法士(OT)」の2025年全国年収443.6万円を円の整数に換算した。
  • job tagの分類統計は理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に共通の数字が表示されるため、作業療法士だけの平均ではない。
  • 回復期病院、精神科、児童発達支援、訪問リハビリなどで担当業務と給与が異なる。
  • 勤務年数、職位、地域や雇用形態で収入差があり、独立事業者の売上や所得と同一視できない。

収入を動かすもの

2050年編集部の見立て

AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。

  • 在宅生活と認知・身体機能の支援上がる方向

    家で料理や着替えを続けたい人が増えると、暮らしの練習を助ける人が必要です。

    大人向けの詳しい説明

    高齢化と在宅ケアの拡大は、身体機能だけでなく住環境や習慣を含む支援を必要にする。

  • リハビリ報酬と介護保険の仕組み下がる方向

    必要な仕事が増えても、病院や介護施設が使えるお金でお給料は変わります。

    大人向けの詳しい説明

    保険で定めるサービスの単価と提供時間が雇用者の給与原資を左右する。

  • 動作の自動計測と家庭での練習どちらにも動きうる

    手や体の動きを機械で測れても、何を練習したいかは本人と相談します。

    大人向けの詳しい説明

    反復練習の一部は遠隔・自動化できても、生活目標や住環境の調整は対面の評価が残る。

  • 養成課程の修了者と地域偏在どちらにも動きうる

    専門家が多い場所と少ない場所では、仕事の見つかり方も違います。

    大人向けの詳しい説明

    就業者の増加と都市・地方の配置差によって、求人の強さと賃金交渉力が異なる。

2050年の3つのシナリオ

2050年編集部の見立て

未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。

  1. 在宅リハビリと生活支援が広がる

    条件高齢者が自宅で暮らし続けるため、調理・着替えなど生活動作に関わる訪問支援への財源が拡大する。

    起きそうなこと自宅の道具や家事を評価できる作業療法士の活躍の場が広がり、経験者の需要が高まる。

  2. 訓練の計測と練習支援が自動化する

    条件動作映像の解析や家庭用訓練機器が普及し、病院外でも練習を継続できるようになる。

    起きそうなこと定型的な反復訓練の担当時間は減る一方、目標設定や暮らしの環境調整が仕事の中心へ移る。

  3. 診療・介護報酬と養成人数の制約が強まる

    条件施設の支払い余力が伸びず、養成校からの新規参入が続く。

    起きそうなこと需要があっても職員一人当たりの報酬が伸びにくく、専門分野による収入差が広がる可能性がある。

働き方と暮らし

2050年編集部の見立て

人手は足りる? 余る?

高齢者が住み慣れた家で暮らし続けたいという需要が高まれば、食事、着替え、調理など日常生活を支える作業療法の重要性は増す。作業療法士は歩行の訓練が中心になりやすい理学療法士とは異なり、本人がやりたい生活行為や社会参加を直接の訓練課題にできる。

一方で動作の計測と反復練習は自動化され、施設の報酬制度と養成される人員の数も求人に影響する。病院内の訓練室、精神科、児童支援、訪問サービスでは需要の理由が異なる。全国としてはやや増加を中心に考えるが、専門分野による差は大きい。

働き方

勤務先は病院、回復期リハビリ病棟、精神科、介護施設、児童支援施設、訪問リハビリの事業所など。食事や着替え、家事、手先を使う仕事や遊びを課題にして訓練するほか、心の状態や社会参加も支える。対象者の自宅にある調理台や家具を確かめ、道具を変える支援も行う。

多くは昼間の勤務で、患者や利用者の訓練予定に合わせて働く。病院では理学療法士、言語聴覚士、医師、看護師と連携するが、実際の作業を本人ができるかどうかを確かめる点に独自の専門性がある。身体の回復だけを目標にせず、本人の趣味や家族との生活を考える。

この仕事に近づくには

今

進路と資格

  1. 作業療法士養成課程で3年以上学ぶ高校卒業後、指定された3年以上の専門学校や大学などで、作業療法評価学、身体・精神のリハビリ、臨床実習を学ぶ。
  2. 作業療法士国家試験に合格する養成施設の所定課程を修了するなどして国家試験の受験資格を得て、合格して作業療法士免許を取得する。
  3. 医療・福祉の現場で専門領域を経験する病院や介護施設などで生活動作、精神科作業療法、児童支援や訪問リハビリの経験を積み、本人の生活目標に合わせる方法を学ぶ。

今から伸ばしたい力

  • 食事・更衣・調理などの動作を細かい手順に分けて評価する力
  • 手指の運動機能と注意・記憶などの認知機能を合わせてみる力
  • 本人が大切にする生活行為を聞き出す面接技術
  • 自助具の形と家具の高さを個人に合わせて調整する力
  • 実際の活動から疲労や安全上の注意点を見つける観察力

出典と前提

最終確認日
2026年10月30日

出典

予測の前提

  • 2050年も身体・精神・認知の機能を日常生活に結びつける支援が必要とされる。
  • 在宅生活を支える公的サービスの普及は地域・制度によって差がある。
  • 動作分析は自動化するが本人の価値観と実際の住環境を踏まえた訓練は残る。

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ラベルの意味や予測の限界は「予測の読み方」で説明しています。