医療・福祉

理学療法士

りがくりょうほうし

病気やけが、加齢で体が動きにくくなった人の、立つ・歩くなど基本的な動作の回復を支える仕事。体の働きを評価し、医師の指示のもとで運動療法や物理療法を行う。

リハビリテーション室で、男性の理学療法士が、高齢の女性の腕を支えながら肩を動かす練習を手伝っている。二人は腕の動きを確かめている。
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はじめに

理学療法士は、病気やけがで体が動かしにくくなった人が、また立ったり歩いたりできるように手伝う仕事です。どこが動きにくいのかを調べて、その人に合った運動を考え、いっしょに練習します。病院だけでなく、お年よりの家をたずねて、家の中で安全に暮らせるように助けることもあります。

2050年の見通し

2050年編集部の見立て

2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。

今の年収約444万円平均値・2025年の統計
2050年(物価の上昇を除いて)少し下がる幅:下がる〜少し上がる
収入
報酬は診療報酬・介護報酬で公的に決まり、2024年度改定では賃上げに充てる評価が設けられたものの、単価を大きく引き上げる仕組みではない。厚生労働省の推計では2040年頃に供給数が需要数の約1.5倍になるとされ、担い手の多さが賃金交渉力を弱めやすいため、やや下がる方向を中心に置いた。地域や在宅での役割が報酬で評価されれば、横ばいから小幅の改善もあり得る。
需要
骨折や脳卒中後の回復、転倒の予防、退院後の在宅生活を支えるリハビリの必要は、2050年も高齢者の多さから大きいと見る。人口減少と病床の再編で病院内の需要は地域ごとに変わるが、訪問や介護予防の場で伸びると考えた。
人による差
人による差が広がる

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今の理学療法士の仕事

今
  • 関節の動く範囲や筋力の評価角度計で関節の曲がり具合を測り、筋力やバランス、歩き方を観察して、動きにくさの原因を探る。
  • 運動療法の計画と実施評価をもとに目標を決め、筋力トレーニングや関節を動かす運動、ストレッチを組み合わせて一緒に行う。
  • 起き上がり・立ち上がり・歩行の練習平行棒や杖、歩行器を使い、転ばないよう体を支えながら、ベッドからの起き上がりや歩く練習をする。
  • 温熱・電気刺激などの物理療法ホットパックで温めたり、電気の刺激を与えたりして、痛みを和らげ筋肉の働きを助ける。
  • 住まいの環境と福祉用具の助言退院後の家を想定し、手すりの位置や段差の解消、車いすや杖の選び方、家族の介助の方法を伝える。

2050年、仕事はどう分担される?

2050年編集部の見立て

業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。

AI・ロボットが中心

  • 歩行の映像・センサーデータの解析 確からしさ:中 今も動作解析の装置は一部の病院や研究で使われ、カメラの映像から関節の角度を推定する技術も進んでいる。歩幅や速さの数値化と前回との比較は自動化しやすいが、痛みや疲れとの関係の解釈は理学療法士が担う。
  • リハビリ計画書と実施記録の下書き 確からしさ:高 現在もリハビリテーション実施計画書や毎回の記録の作成に時間がかかっている。測定値や会話から下書きを作る作業は自動化に向き、内容の確認と署名は理学療法士が行うと見立てる。

AIと協働

  • 歩行支援ロボットを使った訓練の設定 確からしさ:中 体に着けて動きを助ける機器や、体重を支えながら歩ける装置はすでにリハビリで使われている。機器が動きを補っても、どの段階でどれだけ助けを減らすかは本人の回復を見て人が決める。

人が中心

  • 転倒しそうな体を支える歩行練習の介助 確からしさ:高 ふらついた瞬間に手を添え、声をかけて姿勢を立て直す介助は、相手の体と気持ちの両方に合わせる仕事である。安全の責任も伴うため、人が担う部分は大きく残ると考える。
  • 自宅の段差や動線の評価と家族への介助指導 確からしさ:中 家の造りや家族の暮らし方は一軒ごとに違い、図面だけでは危ない場所が分からない。実際に家で本人が動く様子を見て、手すりや家具の配置、介助の方法を一緒に決める必要がある。

2050年の一日

2050年架空の一日

2050年、理学療法士の一日(架空)

玄関の上がりかまちは、膝の高さほどある。山あいの町に建つ古い木造の家で、土間の柱には手すりが一本、去年の冬に取り付けられたまま少し傾いていた。午前9時、理学療法士の陽介は靴を脱ぎながら、その手すりのねじを指で確かめた。

訪問リハビリの事業所を出たのは8時過ぎだ。自動運転の小型車が谷沿いの道を走るあいだ、陽介は端末で利用者の記録を読み返した。84歳の静江さんは、二か月前に畑で転んで太ももの付け根を骨折し、手術を受けて退院してきた。廊下に置いた見守りセンサーが、夜中にトイレへ向かうときの歩数と歩く速さを記録している。グラフでは、先週より歩幅が少し広がっていた。

数字はよくなっているが、本人の表情は晴れない。「この段が怖くてね。孫が来ても、玄関まで迎えに出られんのよ」。陽介は段差の前に立ち、静江さんの腰の横に手を添えた。手すりを握る位置、先に上げる足、体重を前に移すタイミング。三回目で膝が小さく震えたので、そこで椅子に座って休んでもらう。センサーには表れない怖さを、何回目に、どんな姿勢で感じるのかを確かめるのが、今日の目的だった。

練習のあと、陽介は同居する息子と相談し、段差の手前に踏み台を置いて高さを半分に分ける案を出した。手すりの付け直しは、写真と寸法を地元の大工に送って頼む。報告書の下書きは帰りの車内で自動で仕上がるが、「孫を玄関で迎えたい」という目標の一行は、陽介が自分で書き足した。次の家までは、峠を一つ越えて二十分かかる。

収入

平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。

今の年収

今統計

約444万円(年収・平均値)

調査
令和7年賃金構造基本統計調査(job tag掲載の年収)
調査年
2025年
対象
job tag「理学療法士(PT)」に対応する賃金構造基本統計調査の雇用労働者。統計の職種区分は作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士とまとめた区分に対応しており、理学療法士だけを切り分けた値ではない。
税・賞与
税・社会保険料控除前、賞与・時間外手当等を含む年収
  • job tag理学療法士(PT)の全国掲載値443.6万円。平均値であり、個々人の給与や手取り額を示すものではない。
  • job tagに示される平均年齢は36.2歳と若い。養成校の卒業者が増えて若い世代の割合が高いことが、平均の年収にも影響していると考えられる。
  • 病院(医療保険)、介護老人保健施設や訪問リハビリ(介護保険)など、働く場所によって収入の元になる報酬制度が異なり、給与の水準や手当にも差がある。
  • 賃金構造基本統計調査は一定規模以上の事業所が対象で、小規模な事業所で働く人や、保険外の運動指導などで独立して働く人の収入は含まれない。
  • job tagの求人賃金(月額)と賃金構造基本統計調査の年収は、対象と算定方法が異なるため単純比較できない。

収入を動かすもの

2050年編集部の見立て

AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。

  • 診療報酬・介護報酬の単価どちらにも動きうる

    リハビリの値段は国が決めています。だから、たくさん働いても給料が大きく増えるとは限りません。

    大人向けの詳しい説明

    病院のリハビリは20分を1単位として報酬が決まる仕組みで、訪問や施設のリハビリは介護報酬で決まる。2024年度の診療報酬改定では理学療法士を含む医療関係職種の賃上げに充てる評価が設けられたが、単価は改定ごとに国が決めるため、収入の伸びには上限がかかりやすい。

  • 養成校の卒業者数と需給下がる方向

    理学療法士になる人はとても増えていて、仕事を探す人も多くなっています。

    大人向けの詳しい説明

    厚生労働省の需給分科会(2019年)は、理学療法士・作業療法士の供給数がすでに需要数を上回り、2040年頃には約1.5倍になるとの推計を示した。担い手の多さは、賃金交渉での立場を弱めやすい。

  • 高齢化と在宅・介護予防上がる方向

    お年よりが増えると、家で元気に動けるように手伝う仕事が求められます。

    大人向けの詳しい説明

    骨折や脳卒中のあとの回復、転倒の予防、退院後の自宅での生活を支えるリハビリの必要は続く。病院の中より、訪問や通所、地域での介護予防に仕事の場が移る可能性がある。

  • 動作解析とリハビリ機器どちらにも動きうる

    歩き方を測る機械や、歩くのを助けるロボットが使われ始めています。

    大人向けの詳しい説明

    映像やセンサーによる評価、歩行支援機器は、記録や評価の手間を減らし、遠くの利用者の経過確認も可能にし得る。生産性の向上が賃金に回るか、必要な人数の削減や設備費に回るかで影響は分かれる。

2050年の3つのシナリオ

2050年編集部の見立て

未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。

  1. 地域と在宅に役割が広がる

    条件訪問リハビリや介護予防、住まいの改修の助言が、介護報酬や自治体の事業で評価される。病院を出たあとの生活を支える仕事が増える。

    起きそうなこと病院以外の働き口が広がり、訪問や地域の活動を担える人は収入が支えられる可能性がある。一人で判断する場面が増え、経験の差が待遇に表れやすくなる。

  2. 担い手が多く、求人が落ち着く

    条件養成校の卒業者が多い状態が続き、病院や施設の採用が絞られる。報酬の単価も大きくは上がらない。

    起きそうなこと実質の賃金は下がる方向に働きやすい。専門分野の資格や、管理・教育の役割を持つ人との差が広がり得る。

  3. 機器と組んで担当できる人数が増える

    条件遠隔での経過確認や歩行支援機器を使った訓練が制度で認められ、一人の理学療法士が見られる利用者が増える。

    起きそうなこと一人あたりの生産性が上がり、その分が賃金に回れば収入が上がる余地がある。一方で、必要な人数そのものは少なくて済むようになるかもしれない。

働き方と暮らし

2050年編集部の見立て

人手は足りる? 余る?

job tagによると、理学療法士の就業者数は約20万人(2020年国勢調査)。高齢者の増加で、骨折や脳卒中のあとのリハビリ、転倒を防ぐ介護予防、自宅を訪ねる訪問リハビリの必要は続いている。一方、厚生労働省の理学療法士・作業療法士需給分科会は2019年、供給数はすでに需要数を上回っており、2040年頃には供給数が需要数の約1.5倍になるという推計を示した。

編集部の見立てでは、2050年も高齢者の人口は多く、体の働きを保つ支援の必要は大きい。ただし病院の病床が再編されれば、仕事の中心は病院の中から、地域や自宅での生活を支える場へ移ると考える。卒業者の多い状態が続けば病院の求人は落ち着き、訪問や介護予防、職場やスポーツでの体づくりなど新しい場で役割を広げられるかが分かれ目になる。推計は前提で変わるため、2050年の必要人数が決まっているわけではない。

働き方

理学療法士は、病院や診療所のリハビリ室、回復期リハビリテーション病棟、介護老人保健施設、通所リハビリ(デイケア)、訪問看護ステーションなどで働く。病院では日中の勤務が中心だが、回復期の病棟では土日もリハビリを行うため、交代で休日に出勤することがある。病院のリハビリは20分を1単位として数えるため、一日に何単位を担当するかが仕事量の目安になる。

患者の体を支えたり持ち上げたりするため、腰への負担があり体力も必要だ。訪問リハビリでは車で一軒ずつ回り、家の中で一人で判断する場面が多い。保険を使う理学療法は医師の指示のもとで行うため、独立して開業する人は少なく、保険外の運動指導や介護予防の事業を起こす人もいる。プロスポーツのチームや企業で、けがの予防や体づくりに関わる道もある。

この仕事に近づくには

今

進路と資格

  1. 理学療法士の養成校(3年以上)高校卒業後、国が定めた基準を満たす大学(4年)、短期大学(3年)、専門学校(3〜4年)などで、解剖学や運動学などの基礎と、病院や施設での臨床実習を学ぶ。
  2. 理学療法士国家試験養成校を修了して受験資格を得て、年1回の国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受ける。作業療法士の資格がある人は、養成校で2年以上学べば受験資格が得られる。
  3. 就職後の学び病院や介護施設、訪問リハビリで経験を積む。日本理学療法士協会の認定理学療法士・専門理学療法士などの制度で、脳卒中、運動器、スポーツなどの分野を深める道がある。

今から伸ばしたい力

  • 骨・筋肉・神経のしくみを理解する力
  • 歩き方や姿勢を観察して、動きにくさの原因を推理する力
  • 転倒を防ぎながら相手の体を支える技術と体力
  • 痛みや不安を聞き取り、続けられる練習に組み立てる力
  • 医師・看護師・ケアマネジャー・家族と目標をすり合わせる力

出典と前提

最終確認日
2026年10月30日

出典

予測の前提

  • 2050年も保険を使う理学療法は、公的な報酬制度と医師の指示のもとで行われる。
  • 高齢者の人口は多い状態が続き、病院から地域・在宅へとリハビリの場が移っていく。
  • 動作の測定や記録は機器による自動化が進むが、体を支える介助と目標の決定は人が担う。

このページの更新

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ラベルの意味や予測の限界は「予測の読み方」で説明しています。