医療・福祉

鍼灸師

しんきゅうし

はり師ときゅう師の免許を持ち、体の状態を確かめて、細い鍼による刺激や、もぐさの熱を利用した灸の施術を行う仕事。鍼灸院を開業するほか、病院やスポーツ分野などで働き、施術の適応と安全に配慮する。

鍼灸院で、女性の鍼灸師が腕の模型を示し、男性の相談者に施術する場所や流れを穏やかに説明している。
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はじめに

体の痛みやこりなどに悩む人に、細いはりや温かいお灸を使って施術する仕事です。まず困っていることや体調を聞き、刺激する場所や方法を考えます。はりとお灸は別々の国家資格で、両方を取得する人が多いです。施術だけに頼らず病院での診察が必要なときには、医師への受診を勧めることも大切です。

2050年の見通し

2050年編集部の見立て

2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。

今の年収約454万円平均値・2025年の統計
2050年(物価の上昇を除いて)ほぼ変わらない幅:下がる〜少し上がる
収入
高齢者やスポーツ分野の利用は支えになり得るが、自由診療では地域の競争と家計の支出、保険療養費では対象条件が収入を制約する。施術所の生産性が向上しても利益が賃金へ均等に配分されるとは限らず、実質横ばいを中心に見る。
需要
鍼灸の利用は続くと見られる一方、保険適用には医師の同意が必要で、効能や患者の希望によって施術を選ばない場合もある。人口減少の地域差と競争を踏まえ、職業全体の需要はほぼ横ばいとした。
人による差
人による差が広がる

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今の鍼灸師の仕事

今
  • 症状の聞き取りと適応の確認痛む場所だけでなく、発症時期、通院歴、服薬、出血しやすさなどを確認して施術の適否を判断する。
  • 経穴の触診と施術計画体の状態や希望を踏まえて経穴(ツボ)を触れて確かめ、刺激する部位・強さ・回数を決める。
  • 衛生管理を伴う鍼施術施術部位を消毒し、滅菌済みの使い捨て鍼などを用いて適切に刺激し、安全に処理する。
  • 台座灸などによる温熱刺激もぐさを使った灸で皮膚への熱刺激を加え、熱さを確かめながらやけどを防ぐよう調節する。
  • 医師の同意書と療養費申請の確認保険の療養費を扱う場合は対象疾患や医師の事前同意を確認し、施術記録と申請書を作成する。

2050年、仕事はどう分担される?

2050年編集部の見立て

業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。

AI・ロボットが中心

  • 予約情報・症状経過の整理 確からしさ:高 来院時の聞き取りと過去の施術履歴を時系列に整理する作業は自動化に向くが、情報の欠落を確認する必要がある。
  • 施術記録と保険申請書の草案 確からしさ:中 定型項目の転記や同意期限の照合は機械が支援できるが、療養費を請求できる条件は施術者が確認する。

AIと協働

  • 刺激箇所や強さの候補の提示 確からしさ:低 既存の記録から候補を示すことはできても、個人差と治療効果の評価の難しさから、機械の提案をそのまま採用することはできない。

人が中心

  • 鍼・灸の安全な施術 確からしさ:中 皮膚状態や本人の反応を確かめて熱や刺激を微調整する身体的作業であり、衛生管理と安全判断が伴う。
  • 施術を控えて医療機関を勧める判断 確からしさ:高 新しい症状や全身状態の変化を聞き、鍼灸だけで対応せず診察を勧めることは本人の安全に直接関係する。

2050年の一日

2050年架空の一日

2050年、鍼灸師の一日(架空)

昼過ぎ、商店街の小さな鍼灸院に、長く通っている七十代の女性が訪れた。四十代の鍼灸師・千紗は、今日はいつもより歩く速度が遅いことに気づいた。予約画面には『肩が重い』とあったが、千紗はすぐに施術台へ案内せず、最近の体調を尋ねた。女性は昨日から食欲がなく、少しふらつくと言う。

千紗は体温や脈拍の確認を促し、いつもの肩のこりと違う様子に耳を傾けた。記録端末は過去の来院記録と比べて『刺激を弱める』と提案した。だが、刺激を弱めれば安全というわけではない。千紗はこの日の鍼施術を見送り、家族に連絡して、かかりつけの医療機関へ相談してもらうことにした。女性は残念そうだったが、『次に来るときには、肩の話をゆっくりしましょう』と千紗が伝えると、少し笑った。

その後、予定していた別の利用者が来た。足の冷えを気にする人で、事前に病院で診察を受けている。千紗は肌の状態と熱さの感じ方を確かめ、皮膚から距離を取れる台座灸を選んだ。もぐさが温まる間も、熱すぎないか何度か声をかける。施術の記録は音声から端末が下書きを作るが、本人が述べた感覚と千紗が観察した事実は分けて入力した。

店を閉めるころ、千紗は午前に使った鍼の廃棄容器を点検し、施術室の備品を整えた。今日、最も大切だったのは施術をした場面ではなく、施術をしないと決めた場面かもしれない。次の予約を確認すると、千紗は利用者が無理なく相談できる時間を少し長めに取った。

収入

平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。

今の年収

今統計

約454万円(年収・平均値)

調査
令和7年賃金構造基本統計調査(job tag掲載の年収)
調査年
2025年
対象
job tag『はり師・きゅう師』に対応づけられた『その他の保健医療従事者』などの雇用労働者で、鍼灸師だけの集計ではない。
税・賞与
税・社会保険料を引く前、賞与を含む
  • job tag『はり師・きゅう師』の2025年全国年収454.2万円を円換算した。
  • 柔道整復師などと同じ広い職業分類の統計値が表示されるため、はり師・きゅう師に限った平均年収ではない。
  • 個人で開業する鍼灸院の売上や、家賃・鍼などの経費を引いた事業所得を含む数値ではない。
  • 勤務先、自由診療の価格、来院者数、地域、経験によって収入のばらつきが大きい。

収入を動かすもの

2050年編集部の見立て

AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。

  • 慢性症状やスポーツ分野での利用上がる方向

    長く続く痛みなどで相談したい人が、施術を選ぶことがあります。

    大人向けの詳しい説明

    job tagはスポーツ分野での利用と、さまざまな症状への効果の研究が進むことを挙げる。ただし研究中の効果をすべて確立した治療とみなさない。

  • 医師の同意が必要な保険療養費下がる方向

    健康保険を使うには、先にお医者さんの同意が必要な場合があります。

    大人向けの詳しい説明

    はり・きゅう療養費の支給には所定の対象疾患と保険医の同意書が必要で、利用者全員が保険適用になるわけではない。

  • 施術所ごとの料金と利用者の確保どちらにも動きうる

    保険が使えない施術の料金は、お店によって違います。

    大人向けの詳しい説明

    自由診療の価格設定や立地、固定客の数が経営を左右する。事務作業の自動化でも施術に触れる時間がなくなるわけではない。

  • 鍼の感染対策と灸の熱傷対策どちらにも動きうる

    はりを清潔に使い、熱すぎないか確かめる安全な手順が大切です。

    大人向けの詳しい説明

    鍼の衛生管理、灸の熱刺激の調整、症状によって施術を控える判断が必要であり、実装が進むAI支援だけでは代替しにくい。

2050年の3つのシナリオ

2050年編集部の見立て

未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。

  1. 地域で補完的な施術への需要が増える

    条件慢性的な痛みなどの相談が増え、医療機関との適切な役割分担と安全情報の共有が進む。

    起きそうなこと信頼される施術所は利用者を確保しやすくなるが、効果が全員に同じように認められるとは限らない。

  2. 予約・記録と同意書管理が省力化する

    条件施術記録、同意書の期限確認、受領委任の請求処理をソフトが支援する。

    起きそうなこと事務負担は減る一方で、技術導入の費用と利用料金があり、利益や賃金は施術所ごとに分かれる。

  3. 保険の対象条件と自由診療の競争が厳しくなる

    条件療養費が厳格に審査され、自費施術では地域の競争と家計の節約志向が強まる。

    起きそうなこと利用者の選別が進み、固定客を得られない施術所の実質収入は下がりやすくなる。

働き方と暮らし

2050年編集部の見立て

人手は足りる? 余る?

2024年末の就業者数は、はり師が約13万7千人、きゅう師が約13万5千人と厚生労働省の統計をもとにjob tagが紹介している。両方の免許を持つ人も多く、人数を足して職業従事者数とすることはできない。慢性症状の相談やスポーツ分野での利用が続けば、一定の施術需要は見込まれる。

ただし、すべての症状に同じ効果があるわけではなく、施術の適応や医療機関との役割分担が重要になる。自由診療の料金は家計や地域の競争に影響され、保険療養費には医師の同意と対象範囲の制約がある。人口減少と高齢化の影響も一様ではないため、全国の需要は横ばい程度を中心に想定する。

働き方

はり・きゅう治療院で働き、経験を積んでから独立開業する人がいる。病院・医院、スポーツ関係の職場、養成学校などで働く道もある。患者の訴えを聞いて経穴を選び、鍼の衛生管理や灸の熱さを確認しながら施術する。鍼の施術と灸の施術は、それぞれ免許を必要とする。

予約の多い夕方や週末に診療する施術所もある。開業者は施術のほかに予約、清掃、衛生材料の管理、会計、療養費の請求を行う。保険の療養費を扱う場合は医師の事前同意が必要で、受領委任を扱う施術管理者には実務経験と研修の要件がある。

この仕事に近づくには

今

進路と資格

  1. 認定された養成施設などで3年以上学ぶ専門学校、大学、短期大学などで解剖学、生理学、東洋医学概論、鍼灸の実技を3年以上学び、国家試験の受験資格を得る。視覚障害者向けの別の教育課程もある。
  2. はり師・きゅう師の国家試験を受けるはり師ときゅう師は法律上別々の国家資格であり、両方の施術を行う場合はそれぞれの試験に合格して免許を受ける。
  3. 鍼灸院で経験を積み施術管理も学ぶ医療機関への紹介が必要なケースや衛生管理を経験する。療養費の受領委任を扱う施術管理者には、国家資格に加えて所定の実務経験と研修が求められる。

今から伸ばしたい力

  • 鍼施術の適応と医師の診察を優先する症状を見極める問診力
  • 骨や筋肉、神経など人体の構造に関する知識
  • 経穴を触れて探し刺激の強さを調整する技術
  • 使い捨て鍼の衛生処理と灸の熱傷予防の手順
  • 保険療養費の医師同意と自由診療の違いを説明する力

出典と前提

最終確認日
2026年10月30日

出典

予測の前提

  • 鍼灸は既存の医療を置き換えるものではなく、本人が希望する場合の補完的な施術の一つとして選ばれる。
  • 施術記録の効率化が進む一方、安全に施術する法的責任は国家資格者に残る。
  • 2026年現在の保険療養費制度のように、医師の事前同意と対象範囲を区別する仕組みが続く。

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ラベルの意味や予測の限界は「予測の読み方」で説明しています。