ものづくり・研究

溶接工

ようせつこう

アークやガスなどの熱で金属を溶かしてつなぎ、建物の鉄骨、車両、配管、タンクなどを製作する技能職。材料の位置合わせ、電流やワイヤ送給の調整、溶接後の形状と強度の検査まで行う。

作業台で、女性の溶接工が溶接前の金属板をクランプで固定し、継ぎ目の位置とトーチの状態を点検している。
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はじめに

鉄と鉄などの金属を熱で溶かして、しっかりつなぐ仕事です。大きな建物の骨組みから船の部品まで、つなぎ目の強さが大切なものをつくります。材料の厚さや形によって熱のかけ方を変え、つなぎ目を検査します。機械が溶接する工場でも、段取りや仕上がりの確認が欠かせません。

2050年の見通し

2050年編集部の見立て

2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。

今の年収約455万円平均値・2025年の統計
2050年(物価の上昇を除いて)少し上がる幅:少し下がる〜上がる
収入
現物合わせや設備補修の熟練工が不足すれば賃金交渉力を持ちうるが、受注単価が上がらない下請けでは賃上げが難しい。量産溶接の自動化は単純作業の人数を減らし、収入差を広げる可能性がある。
需要
溶接ロボットの導入が定型作業を減らす一方、国内のインフラや製造設備の維持、技能者の高齢化が手作業の補修需要を支える。
人による差
人による差が広がる

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今の溶接工の仕事

今
  • 開先加工と部材の仮付け接合面の角度やすき間を整え、図面どおりの位置に金属部材を固定して小さな仮の溶接でずれを防ぐ。
  • 溶接電流とワイヤ送給の設定材質・板厚・姿勢に合わせて電流、電圧、ワイヤの送り速度や保護ガスを調節する。
  • アーク溶接での本接合遮光面などを着用し、溶接トーチを安定して動かして溶融池の形を見ながら金属をつなぐ。
  • 溶接ロボットの段取り調整部材を治具に固定してロボットの経路を確認し、試し溶接でトーチの角度や条件を補正する。
  • ビードの外観検査と補修接合部の溶接ビードを目視や測定器で調べ、必要に応じて非破壊検査の結果を確認し、不良箇所を補修する。

2050年、仕事はどう分担される?

2050年編集部の見立て

業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。

AI・ロボットが中心

  • 同一形状部品の反復溶接 確からしさ:高 治具で位置を固定できる量産品では、ロボットがトーチの位置や速度を繰り返し制御できる。

AIと協働

  • 溶接条件の初期提案 確からしさ:中 材質や板厚に合う電流と速度は過去の施工データから提案できても、現物で試すまで熱による変形は確かめきれない。
  • 溶接中の異常検知 確からしさ:中 電圧や映像の変化から欠陥の兆候を知らせる仕組みは広がるが、母材の汚れや姿勢の影響は現場で確かめる必要がある。

人が中心

  • 複雑な継手の位置合わせ 確からしさ:中 古い設備の補修や一品ものの部材は形がそろわず、固定位置やすき間を現場で測り直す技能が重要になる。
  • 強度を満たす補修方法の決定 確からしさ:高 検査結果を踏まえてどこまで削り直し再接合するかは、部材の用途と施工基準に責任を持つ人が判断する。

2050年の一日

2050年架空の一日

2050年、溶接工の一日(架空)

造船所の作業台に、湾曲したステンレス製の配管が置かれている。43歳の溶接工・紗季は、二つの管をつなぐためのすき間を薄いゲージで確かめた。設計画面には同じ曲がりの部品が並んでいるのに、実物は数ミリだけ位置が合わない。前の工程で生じたゆがみだ。紗季は取り付け用の治具を少しずらし、配管が無理に引っ張られない位置を探す。

午前中に一度だけ仮付けをする。遮光面の内側から細いアークの光を見つめ、溶けた金属が一か所へ偏らないようトーチを運ぶ。周りの溶接ロボットは同じ形の継手を次々に接合しているが、この配管は一品ずつ形が違う。紗季は電流とワイヤの送りを微調整し、熱でさらに曲がらないよう短い区間ごとに作業を進める。

午後、冷えた継ぎ目の表面を清掃し、溶接ビードの幅を測る。検査担当から届いた画像では内部に大きな欠陥は見られなかった。ただし端の一か所に盛り上がりがある。紗季は図面の許容値と照らし、削って整える範囲を赤い線で示す。削りすぎれば厚みが足りなくなる。確認した範囲だけを慎重に仕上げ、検査をもう一度頼む。

夕方、同じ型の部品をつくる次の担当者へ、位置合わせに使った治具の写真と設定を引き継ぐ。機械が同じ作業を正確に繰り返す時代でも、現物が設計と違う理由を読み取る手は必要だ。紗季は金属のつなぎ目を指でなぞり、滑らかさを確かめてから作業台を離れた。

収入

平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。

今の年収

今統計

約455万円(年収・平均値)

調査
令和7年賃金構造基本統計調査(job tag掲載の年収)
調査年
2025年
対象
job tag「溶接工」に対応する金属溶接・溶断工、溶接設備オペレーター等を含む職業分類の一般労働者。手作業の溶接工だけではない。
税・賞与
税・社会保険料を引く前、賞与を含む
  • 2025年job tag「溶接工」の全国年収454.7万円を円換算した。手溶接工と設備オペレーターなどを含む分類の参考値である。
  • 鉄骨、造船、製造ライン、設備補修では技能と賃金の体系が違い、特殊材の施工資格や出張手当の有無でも差が出る。
  • 工場勤務の一般労働者の平均であり、独立請負の売上や諸経費を差し引いた事業所得とは違う。
  • アーク溶接とガス溶接の安全教育・技能講習が必要な作業は区別され、資格を修了すれば必ずこの額になるわけではない。

収入を動かすもの

2050年編集部の見立て

AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。

  • 老朽設備の現場補修上がる方向

    古くなった設備の形に合わせてつなぎ直せる人が必要になります。

    大人向けの詳しい説明

    既設配管や一品ものの補修は、治具で形が決まった量産部品と異なり、現物合わせの技能が評価される。

  • 溶接ロボットと治具の普及どちらにも動きうる

    同じ形の部品を何度もつなぐ仕事は機械が増えます。

    大人向けの詳しい説明

    定型加工の人時を減らす一方、ロボットの教示、ワイヤ条件の補正や品質管理の役割が残る。

  • 溶接ヒュームへの安全対策どちらにも動きうる

    煙を吸いこまないための設備と作業手順が大切になります。

    大人向けの詳しい説明

    局所排気や呼吸用保護具などの安全対策は必要で、設備投資の負担と技能者の健康保護の両面で労働環境を変える。

  • 熟練技能者の引退上がる方向

    経験の長い人が引退すると、難しい溶接を教えられる人が貴重になります。

    大人向けの詳しい説明

    人口減少下で経験者の供給が細れば特殊施工の賃金交渉力を高めうるが、下請け価格と勤務先の収益性に制約される。

2050年の3つのシナリオ

2050年編集部の見立て

未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。

  1. 個別補修の技能を重視

    条件国内で古い船舶や生産設備の補修需要が続き、現物合わせと特殊材料の施工に担い手が不足する。

    起きそうなこと量産ロボットが難しい施工を担当する熟練工の交渉力が増し、実質賃金を押し上げる可能性がある。

  2. 量産工程のロボット化

    条件治具とロボットを組み合わせた同一形状の部材溶接が普及する。

    起きそうなこと反復溶接の人手は減るが、段取り、施工条件の確認、補修の技能が残り、働き方が変わる。

  3. 国内設備投資の停滞

    条件新造設備や建設投資が弱く、安値の下請け受注が続く。

    起きそうなこと専門技能が必要でも価格への転嫁が進まず、地域や勤務先によって収入差が広がる。

働き方と暮らし

2050年編集部の見立て

人手は足りる? 余る?

自動車部品など同じ形を大量につくる溶接では、作業の一部をロボットが担い、人がトーチを握る時間は減りうる。しかし配管補修や一品もの、材料のゆがみが残る接合では現物を合わせる技能が必要になる。新設の量産ラインと保守現場は同じ方向に動かない。

人口減少で熟練工の補充は難しくなる可能性があるが、国内工場・造船・建設の受注が弱ければ人手不足でも求人が増えるとは限らない。地域の産業集積や安全基準、海外への生産移転によって需要は異なり、中心は横ばいから小幅増の間と見立てる。

働き方

鉄骨を扱う工場、船舶の建造・修理、金属製品の製造、設備配管の施工などに勤める。屋内の溶接ブースで作業する場合も、現場へ出張する場合もある。遮光面や保護手袋の使用、換気と溶接ヒュームの管理が欠かせない。

2050年には量産工場でロボットの溶接品質を監督する仕事と、補修のために自ら溶接する仕事の比重が分かれうる。現場工事では工程に合わせて勤務時間が変わり、地元の修理工場と大規模な生産拠点では雇用・請負の形も異なる。

この仕事に近づくには

今

進路と資格

  1. 高校・職業訓練で金属加工を体験する工業高校の機械科、都道府県の職業能力開発校、専門訓練などで製図、材料、溶接の基本を学ぶ道があり、一般的な入職に統一の学歴要件はない。
  2. 担当する方法に必要な安全教育を受けるアーク溶接等の業務にはアーク溶接特別教育、可燃性ガスを使うガス溶接等の業務にはガス溶接技能講習が必要で、作業内容に応じて修了する。
  3. 施工実績と技能を深める工場で板厚や姿勢が異なる溶接を経験し、必要に応じて日本溶接協会の溶接技能者評価試験などへ挑戦する。民間の技能認証と法令上の教育・講習は別のものだ。

今から伸ばしたい力

  • 板厚や材質から、熱をかけるとどの方向へゆがむか予想する立体的な考え方
  • 仮付けの位置と開先のすき間を測り、接合部が図面に合うよう整える技能
  • 電流・電圧・トーチの運び方と溶接ビードの形を結びつけて調整する技能
  • 溶接ヒュームと光・熱の危険を理解し、換気と保護具の使用を習慣にする力
  • 検査結果から補修すべき範囲を読み、削りすぎず必要な強さを確保する力

出典と前提

最終確認日
2026年11月1日

出典

予測の前提

  • 量産品のロボット溶接は普及しても、修理・一品物の施工まで同じ速度では自動化されない。
  • 設備の点検と修理に必要な金属接合は2050年も国内で続くと仮定する。
  • 技能者不足で受注価格が上がっても、その全額が個々の作業者の賃金へ回るとは仮定しない。

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ラベルの意味や予測の限界は「予測の読み方」で説明しています。