トリマー
とりまー
犬や猫の被毛を洗い、乾かし、カットして、爪・耳などの手入れを行う仕事だ。犬種や毛質、皮膚の様子に応じてハサミやバリカンを使い分け、飼い主の希望と動物の負担を考えながら仕上げる。

はじめに
犬や猫の毛を洗ったり、きれいに切ったりする仕事です。毛がからまっていないか、皮ふが赤くなっていないかを見て、シャンプーや道具を選びます。動物は「痛い」「こわい」と言葉で伝えられないので、動きや表情をよく見ます。おしゃれな形にするだけでなく、毎日を気持ちよく過ごせるように手入れをします。
2050年の見通し
2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。
- 収入
- 安全な保定と細かなカットの技能は残るが、家庭でのセルフケアや店舗間の価格競争、設備・人件費が実質収入を押し下げうる。専門的ケアに料金がつけば上振れする。
- 需要
- 被毛管理を必要とする犬の施術需要は残る一方、人口・飼育世帯と来店頻度の減少が新規予約を抑える可能性がある。
- 人による差
- 人による差が広がる
今のトリマーの仕事
- カウンセリングと皮膚・被毛の確認飼い主にカットの希望、持病、触れられるのを嫌がる部位を聞き、皮膚の赤みや毛玉を確認する。
- ブラッシングと毛玉の処理スリッカーブラシやコームで毛のもつれを取り、引っ張りすぎて皮膚を傷つけないよう作業する。
- シャンプー・ブロー毛質と皮膚の状態に合わせた洗浄剤を使い、すすぎ残しとドライヤーの熱に注意して乾かす。
- 犬種に応じたカットシザー、クリッパーなどを使い分け、足裏の毛、顔周り、体の長さを希望と生活のしやすさに合わせて整える。
- 爪切り・耳の清掃と道具の衛生管理爪の血管や耳の状態に注意して手入れをし、作業ごとに刃やブラシ、台を清掃・消毒する。
2050年、仕事はどう分担される?
業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。
AI・ロボットが中心
- 犬種・毛質に合わせたカット案の画像作成 確からしさ:高 飼い主の希望と過去の写真から複数の見本を出す作業は自動化しやすい。ただし被毛の絡みや皮膚の状態により実施できない形もある。
- 予約と道具の消毒履歴管理 確からしさ:高 来店間隔と使用道具の記録は電子化が進み、洗浄・消毒の抜けを知らせる仕組みを作れる。
AIと協働
- シャンプーと乾燥の温度調整 確からしさ:中 水温や風量は設備が助けるが、動物が不安がっているときには人が姿勢や音を調整して中断を判断する。
人が中心
- 顔周り・足先の細かなカット 確からしさ:中 犬が予告なく頭や足を動かすため、刃を皮膚から離す瞬間的な判断と体への負担を減らす保定が重要になる。
- 不調の発見と飼い主への説明 確からしさ:高 皮膚の異変に気づいても診断は獣医師の仕事であり、トリマーは気づいた事実を伝えて受診を促す役割を担う。
2050年の一日
2050年、トリマーの一日(架空)
三つ目の予約票を見たとき、トリマーの彩香は少し顔を上げた。40代になった今も、初めて預かる犬の名前の横には必ず小さな余白を残す。飼い主は「耳の近くを触ると嫌がるんです」と伝えた。彩香は無理に台へ乗せず、滑りにくいマットの上で呼吸と足取りを見た。今日は形を整えることより、安心して帰ってもらうことを先に決めた。
シャンプー前、皮膚の赤みを見つける。店の記録端末が以前の写真を示しても、診断はできない。彩香は飼い主へ状態を説明し、刺激の強い洗浄剤を避け、必要なら動物病院に相談するよう伝えた。毛を乾かす風の温度を下げると、犬はゆっくり目を閉じる。自動乾燥装置は便利だが、耳の周りだけは彩香の手で風向きを変えた。
午後には長毛の犬が来る。毛玉を一気に引っ張らず、スリッカーブラシでほぐし、刃の熱を確かめながらクリッパーを使う。自動生成された仕上がり見本には丸い足先が描かれていた。しかし足裏の毛が伸びて滑りやすいことに気づき、飼い主の了解を得て長さを変える。爪を切るときは血管の位置に注意し、犬が体を引いたら手を止めた。
閉店後、彩香は刃とブラシを洗浄・消毒し、作業台を拭く。予約管理の画面には次回の推奨時期が表示されるが、飼い主に渡す記録には「今日は耳に触れられるのを嫌がった」と自分の言葉で書いた。写真のように仕上げるだけなら機械にもできるかもしれない。目の前の犬が何を嫌がり、どこまでなら安心できるか。その小さな変化を見つけるのが彩香の仕事だ。
収入
平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。
今の年収
約403万円(年収・平均値)
- job tag『トリマー』の2025年全国年収402.7万円を円に換算した。トリマーだけの実測平均とは限らない。
- 同ページの2025年度求人賃金は月額21.5万円であり、年収平均とは調査対象・意味が異なる。求人給与と混同しない。
- パートなどの短時間勤務や、サロン経営者の売上・経費を含む所得は一律にこの値で表せない。
- 勤務先、地域、犬種や大きさ、作業時間と施術料金、独立開業の費用により収入差が大きい。
収入を動かすもの
AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。
-
ペットの長寿化と負担の少ない施術上がる方向
年をとった犬も安心して手入れを受けられる技術が大切になります。
大人向けの詳しい説明
高齢個体の姿勢保持や短時間での処置など、専門性のあるサービスは価格で評価される余地がある。ただし高齢ペットの増加そのものは職業別賃金の上昇を保証しない。
-
自宅用のシャンプー・乾燥設備下がる方向
家で毛を洗いやすくなると、お店に行く回数が変わるかもしれません。
大人向けの詳しい説明
セルフケア機器が普及すれば、洗浄だけのメニューは価格競争にさらされる可能性がある。
-
動物取扱業の登録と衛生管理どちらにも動きうる
動物を安全にあずかる店には、守らなければならない決まりがあります。
大人向けの詳しい説明
営利の保管業には第一種動物取扱業の登録と動物取扱責任者の選任が必要で、適切な施設や従業員の確保に費用がかかる。
-
ペット飼育世帯の数と地域差どちらにも動きうる
犬を飼う家が多い地域と少ない地域で、お店の仕事は違います。
大人向けの詳しい説明
施術対象の個体数に加えて家計の支出余力やサロン密度が需要を左右する。将来の飼育数は確定していない。
2050年の3つのシナリオ
未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。
-
高齢ペットの負担を抑える専門ケアが評価される
条件飼い主が安全性と動物福祉を重視し、短時間の部分ケアなどを適正価格で利用する。
起きそうなこと動物の負担を見ながら施術できる経験者の報酬が維持・上昇する可能性がある。
-
自宅向けグルーミング機器が普及する
条件洗浄・乾燥・簡単な毛の処理を家庭で行いやすくなり、来店間隔が長くなる。
起きそうなこと定型メニュー中心の店では来店件数が減り、カット技術と健康面への配慮を売る店との差が広がる。
-
施術費と人件費の競争が強くなる
条件飼育世帯が減る地域で店舗の固定費が高止まりし、顧客が価格の安い店舗へ移る。
起きそうなこと需要が残ってもスタッフの年間実質収入は減少する可能性がある。
働き方と暮らし
人手は足りる? 余る?
ペットの毛を清潔に保ち、犬種に合うカットをする役割は残る。とくに毛玉ができやすい犬や、体力の落ちた動物の負担を抑えるケアは、家庭用機器では代替しにくい場面がある。
一方で、人口減少と飼育費の負担がペットを飼う世帯数に影響し、機械や自宅でできる手入れが増える可能性もある。都市部には需要が集まっても競合店が多く、地方では顧客が遠くなりうる。人手需要は小幅減を中心とし、地域と専門分野で幅を持たせる。
働き方
トリミングサロン、ペットショップ、動物病院に併設された施設、ペットホテルなどで働く。予約に合わせて動物を預かり、立ち仕事で洗浄・乾燥・カットを続ける。土日や休日に来店が集中する店もあり、犬の体調や大きさによって一件の所要時間が変わる。
独立開業には設備の洗浄・消毒、安全な保定、施設の管理が欠かせない。営利目的で動物を預かる事業には、第一種動物取扱業の『保管』の登録や動物取扱責任者の選任といった事業者の義務がある。個々のスタッフ全員に同じ国家資格が必須という意味ではない。
この仕事に近づくには
進路と資格
- 高校で生物と動物の行動を学ぶ入職に必須の学歴や国家資格はない。動物の体の仕組み、衛生、接し方を学んでおくと養成課程に進みやすい。
- トリマー養成コースの専門学校等で実技を学ぶ犬種別のグルーミング、シャンプー、カット、解剖学、公衆衛生と消毒法を学ぶ。養成コースの修業年限は学校によって異なる。
- サロンで経験を重ね民間資格や専門技術を磨くトリマーの民間資格を発行する団体は複数あるが、個々の従業員に共通の必須国家免許はない。開業時は動物取扱業の登録・責任者要件を別途確認する。
今から伸ばしたい力
- 被毛の構造と犬種の違いを理解してシザーとクリッパーの角度を調整する技術
- 皮膚の赤み、毛玉、体調の変化に気づき獣医師の診察につなぐ観察力
- 犬が動いた瞬間に刃を離し、安全に保定して施術を止める判断力
- シャンプー・乾燥・爪切り・耳掃除で刺激と衛生リスクを抑える知識
- 飼い主の希望と現実にできるカットの違いを写真や言葉で説明する力
関連する職業
-
生活サービス ドッグトレーナー 家庭で暮らす犬や使役犬に、合図に応じて動くことや人との暮らしに必要な行動を教える仕事だ。訓練所で犬を預かるほか、家庭を訪問して飼い主の接し方も指導し、犬の性格と状態に応じて練習方法を調整する。
2050年の収入少し下がる -
医療・福祉 動物看護師 動物病院で犬や猫などの診療を支え、入院中の動物の世話や飼い主へのケア指導を行う。国家資格「愛玩動物看護師」を持つ人は、獣医師の指示の下で採血や投薬などの診療補助も担う。
2050年の収入ほぼ変わらない -
医療・福祉 獣医師 動物の病気やけがを診察し、検査・治療・予防を行う専門職。ペットの診療のほか、牛や豚などの家畜の健康管理、食品の安全や家畜の感染症対策などにも携わる。獣医師免許が必要となる。
2050年の収入ほぼ変わらない
出典と前提
出典
- トリマー|職業詳細(job tag)(厚生労働省)、2026年10月31日取得 業務・器具・資格経路・2025年全国年収402.7万円・求人賃金
- 動物取扱業者の方へ|動物取扱業者の規制(環境省)、2026年10月31日取得 営利の保管業の登録・動物取扱責任者の選任義務
予測の前提
- 2050年も犬種や個体に応じた安全な施術が必要で、あらゆるカットを完全無人にする設備が全国へ普及するとは限らない。
- ペット飼育世帯の将来の増減や美容サービスへ支出する金額は未確定で、地域差が大きい。
- 動物取扱業の登録や衛生基準は将来改正される可能性があり、2026年の制度のまま固定しない。
このページの更新
- 初稿を公開
ラベルの意味や予測の限界は「予測の読み方」で説明しています。