医療・福祉

獣医師

じゅういし

動物の病気やけがを診察し、検査・治療・予防を行う専門職。ペットの診療のほか、牛や豚などの家畜の健康管理、食品の安全や家畜の感染症対策などにも携わる。獣医師免許が必要となる。

動物病院の診察室で、50代の男性獣医師が、診察台の犬に聴診器を当てている。横では飼い主の子どもが、犬に寄り添って診察を見守っている。
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はじめに

犬や猫だけでなく、牛や馬などの病気を調べて治療する仕事です。動物は人のように言葉で痛みを伝えられないため、体の様子をよく見て、飼い主や農家の人と相談します。動物から人へ広がる病気を防いだり、食べ物の安全を守ったりする獣医師もいます。

2050年の見通し

2050年編集部の見立て

2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。

今の年収約681万円平均値・2025年の統計
2050年(物価の上昇を除いて)ほぼ変わらない幅:下がる〜上がる
収入
農林水産省は産業動物・公務員分野の獣医師確保を課題としており、専門性の高い人材には待遇改善の余地がある。一方、開業医の経営費や公務員給与制度、ペットと家畜の地域需要が異なるため、職種全体の実質収入は横ばいを中心に見る。
需要
農林水産省の獣医療提供体制整備基本方針は、産業動物獣医師の確保と家畜防疫の体制強化を重視している。動物の診療や感染症対策の需要は続くと見るが、飼養頭数、人口、診療技術で分野別に増減するため幅を広くした。

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今の獣医師の仕事

今
  • 問診・診察飼い主や農家から様子を聞き、動物の身体を調べる。
  • 検査と診断血液、画像などの検査を選び、結果と症状から診断を組み立てる。
  • 治療・処置投薬、手術、けがの処置などを行い経過を追う。
  • 予防と健康管理ワクチン、寄生虫対策、飼育環境や衛生について助言する。
  • 家畜衛生・公衆衛生農場の感染症対策、食品衛生、伝染病発生時の防疫に関わる。
  • 記録と連携診療記録を残し、愛玩動物看護師や行政、検査機関と協力する。

2050年、仕事はどう分担される?

2050年編集部の見立て

業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。

AI・ロボットが中心

  • 検査画像の整理と候補提示 確からしさ:中 獣医療でも画像や記録など情報処理の支援は進み得るが、動物種ごとのデータ差が大きい。
  • 診療記録と予約の整理 確からしさ:高 書類作成や予約・検査値整理は定型化しやすく、診療以外の負担を軽くできる。

AIと協働

  • 問診と診察計画 確からしさ:高 動物の症状は飼い主の話と身体所見を総合して確かめる必要があり、AIの候補を人が検証する。
  • 農場での感染症監視 確からしさ:中 農林水産省は情報通信技術による診療体制や防疫の整備を課題としており、現場の確認と組み合わせる可能性がある。

人が中心

  • 手術や緊急処置 確からしさ:中 動物の状態に応じて体に触れる処置は変わり、安全と責任の観点から専門家の介入が求められる。
  • 飼い主や農家との説明と合意 確からしさ:高 治療の費用、苦痛、飼育方針についての相談は相手の事情を理解し納得を得る仕事である。
  • 家畜伝染病発生時の判断と連携 確からしさ:中 防疫は行政上の責任と現場の連携が必要で、状況に応じた判断が欠かせない。

2050年の一日

2050年架空の一日

2050年、獣医師の一日

午前8時。獣医師の蒼は、郊外の家畜診療所で朝の連絡を確認した。昨夜から食欲が落ちた牛がいるという。体温などの記録は農場の端末から届いていて、異常の可能性を知らせる表示も出ていた。けれど同じ数字でも原因はいくつもある。蒼は道具をそろえ、若い同僚と農場へ向かった。

午前9時半。農家の人に話を聞き、牛の歩き方や呼吸を観察する。端末が考えられる病気を並べるが、蒼は飼料や周囲の牛の状態も確かめた。検査結果はその場で一部が届く。それでも治療の判断には実際の体の様子が欠かせなかった。

昼前、農場の担当者と病気が広がらないための手順を相談する。人の動線を変えると仕事の手間が増えるため、現場の事情を聞いたうえで無理のない方法を考えた。説明資料のたたき台は機械が作ったが、相手が誤解しそうな表現は直した。

午後1時半。診療所に戻ると、別の農場から子牛の診察依頼が届いた。移動時間を考え、今日中に行けるか同僚と確認する。診療記録は声で入力できるようになり、書類に向かう時間は減った。それでも訪問先の距離や天候までは変えられない。

午後4時。農場で子牛の状態を確かめ、必要な処置をした。機器は過去の似た症例を示してくれたが、目の前の動物の様子を優先した。帰る前に、農家の人が翌朝どの変化を確認すればよいか説明する。

夕方。診療所で他の獣医師と今日の検査を見直した。地域には専門の獣医師が少なく、休日の当番も交代で担っている。蒼は明日の訪問先を確認し、机の上に残した手書きのメモを片づけた。技術が進んでも、命を預かり、現場の人と一緒に決める仕事の重みは変わらないと感じた。

収入

平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。

今の年収

今統計

約681万円(年収・平均値)

調査
令和7年賃金構造基本統計調査(job tag掲載の加工値)
調査年
2025年
対象
job tag「獣医師」に対応する賃金構造基本統計調査の雇用労働者。開業獣医師の事業所得や公務員獣医師の給与全体を代表するものではない。
税・賞与
税・社会保険料控除前。賞与等を含む雇用者の年収。
  • 全国平均年収680.5万円はjob tag掲載の2025年統計であり、開業動物病院の売上・経費控除後所得は含まれない。
  • ペット診療、産業動物診療、公務員の家畜防疫・食品衛生では仕事内容と給与制度が異なる。
  • 公務員獣医師は公的な給与体系を用いる。job tagの賃金統計を公務員獣医師の平均年収として用いない。
  • 求人賃金(月額)と統計上の平均年収は母集団と集計方法が異なる。

収入を動かすもの

2050年編集部の見立て

AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。

  • 産業動物・公務員分野の人材確保上がる方向

    家畜や地域を守る専門家が必要とされる。

    大人向けの詳しい説明

    農林水産省の獣医療体制整備基本方針は産業動物獣医師の定着支援や防疫対応の人材確保を重視している。地域差が大きい。

  • 診療費と給与制度どちらにも動きうる

    病院と公務員ではお給料の決まり方が違う。

    大人向けの詳しい説明

    ペット診療の価格設定、農場向け診療制度、地方公務員の給与体系は異なり、動物の数だけで収入が決まるわけではない。

  • ペットの健康管理と家畜衛生どちらにも動きうる

    動物を診る仕事にもいろいろある。

    大人向けの詳しい説明

    愛玩動物の飼育動向や畜産の構造、感染症対策の必要性が仕事量を左右する。全国一律に増えるとはいえない。

  • AI・検査設備の導入どちらにも動きうる

    診断の手助けができても獣医師の仕事全部ではない。

    大人向けの詳しい説明

    画像判定や記録作成が効率化しても、検査、説明、現場の防疫判断は残る可能性がある。費用負担と利益配分も重要。

2050年の3つのシナリオ

2050年編集部の見立て

未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。

  1. 地域の獣医療が評価される

    条件地方の産業動物診療と公務員獣医師の確保策が進み、専門技能や勤務負担を待遇に反映できる。

    起きそうなこと人材不足の強い地域では収入改善の可能性があるが、公務員の給与は制度や財政に制約される。

  2. 技術補助と仕事の再編

    条件診断支援や記録の省力化が進み、診療や防疫の体制が整う。

    起きそうなこと業務が効率化しても、設備投資やサービス価格に反映されれば賃金への効果は限定的になる。

  3. 経営と地域差が厳しくなる

    条件人口や飼養頭数が変化し、地方で診療先が離れ、移動・設備費が増える。

    起きそうなこと獣医師の需要が残っても診療所の収益と実質収入は圧迫され得る。

働き方と暮らし

2050年編集部の見立て

人手は足りる? 余る?

獣医師の仕事は犬猫などの小動物診療だけではない。家畜の病気予防、公務員としての家畜伝染病対策、食品衛生など、社会の安全に関わる仕事もある。農林水産省の獣医療提供体制の整備方針では、産業動物や公務員分野の人材確保を重要な課題としている。これは全国の獣医師が一律に不足するという意味ではない。

2050年には人口やペットの飼育動向、畜産の生産体制、感染症リスクが変わる可能性がある。診断支援や記録の省力化によって、一人で扱える仕事が増える面もある。地域と専門分野で違いが大きいため、全国の総需要は横ばいから増加を中心に見つつ、大きな減少の可能性も幅に残す。

働き方

大学の獣医学科で学び国家試験に合格し、免許を受ける必要がある。働き方は、ペットの動物病院、農場への往診、行政での家畜防疫や食品衛生、研究など多様である。ペット診療では休日の救急対応があり、産業動物の診療では移動や大型動物への対応が必要になる。

個人で動物病院を開く場合は、診療収入から家賃・薬剤・機器・人件費などを支払う。売上と手取りは異なる。公務員の場合は給与が制度に従って決まる。AIが補助をしても、飼い主や農家との相談、診療の責任、病気のまん延を防ぐ仕事が重要と考えられる。

この仕事に近づくには

今

進路と資格

  1. 中学・高校で理科を学ぶ生物・化学・数学・英語を中心に学び、動物や環境について関心を広げる。
  2. 獣医学系の大学へ進む獣医学の課程は6年制。動物の身体、疾病、公衆衛生、実習を学ぶ。
  3. 獣医師国家試験国が行う試験を受け、合格後に獣医師免許を取得する。
  4. 進む分野を選ぶ小動物診療、産業動物診療、公務員、食品衛生、研究などから仕事を選ぶ。
  5. 専門性を深める診療経験を積み、検査・手術・家畜防疫など必要な知識と技能を更新する。

今から伸ばしたい力

  • 動物の体と病気を学ぶ力
  • 症状と検査結果を総合して考える力
  • 飼い主や農家へわかりやすく説明する力
  • 動物の扱いと安全を守る力
  • 感染症と食品衛生について学ぶ力
  • AIの検査補助を確かめる力

出典と前提

最終確認日
2026年10月29日

出典

予測の前提

  • 2050年にも伴侶動物と産業動物の獣医療が必要である。
  • 診療支援AIの能力向上と地域ごとの設備普及には時間差がある。
  • 公務員給与・診療料金・開業費用などの制度は変化し得る。
  • 家畜感染症への対応は専門職と行政の協力が必要である。

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