医療・福祉

診療情報管理士

しんりょうじょうほうかんりし

病院の診療録や検査記録を点検・保管し、病名や処置を国際疾病分類に沿ってコード化する専門職。診療情報の正確さを守り、医療の質や病院運営の分析にも役立てる。

病院の診療情報管理室で、女性の診療情報管理士が診療記録と電子カルテの内容を照合し、記録の抜けを確認している。
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はじめに

病院には、お医者さんが書いたカルテや検査の記録がたくさんあります。その記録に抜けや間違いがないか調べ、病気や治療の内容を決まった分類に当てはめる仕事です。患者さんの大切な情報を守りながら、病院がよりよい医療を行えるように数字をまとめます。

2050年の見通し

2050年編集部の見立て

2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。

今の年収約529万円平均値・2025年の統計
2050年(物価の上昇を除いて)ほぼ変わらない幅:下がる〜少し上がる
収入
高度なデータ品質管理の担当者は評価されうるが、コーディング自動化が雇用人数や病院の人件費を抑える。医療機関の財政制約から生産性の利益がそのまま賃金には移らず、実質収入は横ばいを中心に考える。
需要
電子カルテの分類・形式点検が自動化されると単純作業の採用は減る一方、診療録の精度監査と研究利用への需要は残る。病院集約が進む地域では担当部門の再編が起きうる。
人による差
人による差が広がる

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今の診療情報管理士の仕事

今
  • 診療録の記載点検退院した患者のカルテ、手術記録、看護記録を照合し、病名や検査結果に欠落があれば担当部署へ確認する。
  • 疾病・処置のコーディング診断名と手術の内容を国際疾病分類などの規則に沿ったコードへ置き換え、分類が正しいか審査する。
  • DPC関連データの精度管理包括評価方式で使う診断群分類の情報と診療内容の対応を確かめ、誤った登録を防ぐ。
  • 診療録の開示と保管管理患者からの記録開示依頼に応じて必要な手続きを進め、保存期間とアクセス権を守る。
  • 診療実績の集計と分析病棟別の在院日数や診断別の件数を集計し、医療の質を検討する会議へ資料を提供する。

2050年、仕事はどう分担される?

2050年編集部の見立て

業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。

AI・ロボットが中心

  • 診断名候補の自動コード付け 確からしさ:高 文章から候補の疾病コードを提案する処理は定型化しやすい。ただし最終的な分類の適切さは別途確かめる必要がある。

AIと協働

  • 記載漏れの抽出と担当医への照会 確からしさ:高 記録の矛盾は機械が大量に検出できるが、臨床上の意味と照会の優先度は医療者との確認が必要になる。
  • 診療データの匿名化と二次利用審査 確からしさ:中 識別につながる情報の検出を自動化しても、研究利用目的と同意・規程への適合は担当者が評価する。

人が中心

  • 患者への診療録開示の判断補助 確からしさ:中 本人確認、第三者の情報、病院の開示手続きに関わるため、機械の提案だけでは進められない。
  • 医療の質の指標の解釈 確からしさ:中 在院日数などの変化には患者の重症度や病床機能が影響し、数値だけで病院の良し悪しは決められない。

2050年の一日

2050年架空の一日

2050年、診療情報管理士の一日(架空)

病院の退院記録が集まる朝、四十代の比奈は診療情報室で「分類未確定」という黄色い表示を見つけた。昨夜退院した患者の記録に、主治医の診断名と検査部門の所見が異なるまま残っている。自動分類装置は二つの病名コードを候補に挙げていたが、どちらかを選ぶ根拠は示していなかった。比奈はカルテの時系列を開き、医師に照会する項目を絞った。

午前の診療が落ち着いたころ、担当医から回答が届く。最初の診断は検査前の仮のもので、退院時には別の病名に修正されていた。だが説明欄には修正した理由が記録されていない。比奈は、病名の決定権が自分にないことを理解している。医師に追記を依頼し、確認済みの診療録だけを確定データに送った。医事課から「今日中に集計したい」と連絡があったが、速さより記録の根拠を優先した。

午後は病院の医療の質を話し合う会議がある。画面には診療科ごとの平均在院日数が並び、一つの診療科だけ短くなっていた。自動分析は改善と表示している。比奈は、その月から入院患者の重症度を数える方法が変わったことに気づいた。分類の基準をそろえて比較し直すと、数字の差は大きく縮んだ。会議では「短くなったから良い」と急いで判断しないよう、変化の理由を説明した。

夕方、患者から過去の診療録を見たいという申請が届いた。比奈は本人確認と院内の開示手順を確かめ、受付へ必要な書類を返した。診療情報は数字でも、誰かの体と生活の記録でもある。机を片づけながら、明日の点検に使う確認項目を一つ追加した。

収入

平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。

今の年収

今統計

約529万円(年収・平均値)

調査
令和7年賃金構造基本統計調査(job tag掲載の年収)
調査年
2025年
対象
job tag「診療情報管理士」に対応づけられた医療事務員(調剤薬局を除く)等の職業分類の雇用労働者
税・賞与
税・社会保険料を引く前、賞与を含む
  • job tagの2025年全国年収528.7万円を円に換算した値で、診療情報管理士だけの平均ではない。
  • 医療事務員を含む広い職業分類の統計であり、専門資格を持つ人だけの年収ではない。
  • 医療機関の規模・勤務先・職務範囲によって報酬に差が出る。
  • 独立事業者の所得や患者の診療情報を扱う業務以外の副業収入は含まない。

収入を動かすもの

2050年編集部の見立て

AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。

  • 電子カルテと疾病分類の自動化下がる方向

    病名の候補を機械がつけるようになると、入力だけの作業は減ります。

    大人向けの詳しい説明

    医師の自由記載から分類候補を出す技術は事務工程を省力化する一方、誤分類の監査を必要とする。

  • 診療録の精度と説明責任上がる方向

    診療の記録が正しいかを確かめる役割は、病院の信頼につながります。

    大人向けの詳しい説明

    記録の開示、診療報酬、医療の質の分析ではコードの根拠と履歴管理が不可欠になる。

  • 病院経営と地域の医療需要どちらにも動きうる

    病院が統合されたり患者さんの数が変わったりすると、働く場所も変わります。

    大人向けの詳しい説明

    医療提供体制の集約と高齢化は地域によって異なり、採用数と担当範囲を左右する。

  • 患者情報の二次利用と保護上がる方向

    研究に記録を使うときは、名前が分からないように守る仕事が必要です。

    大人向けの詳しい説明

    匿名加工やアクセス管理の実務が増えれば、ITと医療を理解する人材の評価が変わる。

2050年の3つのシナリオ

2050年編集部の見立て

未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。

  1. 診療データの標準化が進む

    条件病院間で記録形式の共通化が進み、専門家が正確な分類や匿名化の監査を担う。

    起きそうなこと単純入力は減るが、データ品質の責任を担う人の専門性に対価がつく可能性がある。

  2. 自動コード付けが広く普及する

    条件病名分類と定型チェックが一体化され、例外だけ人が処理する。

    起きそうなこと病歴係の人数が減り、残る人は監査や他部署への照会に比重を移す。

  3. 病院ごとの設備格差が残る

    条件小規模病院では旧システムが残り、入力・点検の二重作業が続く。

    起きそうなこと職務需要は一定残るが、効率改善と賃金上昇は病院によって異なる。

働き方と暮らし

2050年編集部の見立て

人手は足りる? 余る?

診療情報の精度は、病院の診療報酬、医療の質の評価、研究利用に関わる。高齢の患者が増えて診療記録が複雑になる地域では、分類・監査・開示対応の専門知識は引き続き求められる。

一方、病名のコード付けや形式チェックが自動化されれば、紙や電子の記録を手入力する人員は減りうる。地域の病院再編もあるため、職種全体の需要は緩やかに減る可能性を中心に置き、精度管理を担う専門担当の需要とは区別する。

働き方

主な職場は病院の診療情報管理部門や医事課で、診療録を扱う端末、疾病分類表、診療情報システムを使用する。電子記録の管理が中心でも、医師や看護師に直接照会する時間がある。

日勤が中心の勤務先が多いが、診療実績の提出や監査の前には集計が集中することがある。病院の規模で分業の幅が異なり、小規模な病院では受付・診療報酬請求などを兼ねる場合もある。

この仕事に近づくには

今

進路と資格

  1. 高校で生物・情報・国語の基礎を学ぶカルテの病名や医学用語を理解し、長い記録を正確に読み取る力を身につける。
  2. 指定の学校または日本病院会の通信教育で学ぶ日本病院会の指定する大学・専門学校等の課程、または通信教育で、診療情報管理や疾病分類を学ぶ。
  3. 診療情報管理士認定試験に合格し実務を磨く日本病院会の認定試験に合格して資格を得る。国家資格ではなく民間の認定資格で、医療現場で記録監査と集計を学ぶ。

今から伸ばしたい力

  • 国際疾病分類の規則を調べて診断名を正しくコード化する力
  • 医師の記載と検査記録を時系列で照合する注意力
  • 診療データの分母や集計条件を確かめる統計の基礎
  • 個人の診療情報を適切に扱う守秘意識
  • 医療者に不明点を簡潔に照会する文章力

出典と前提

最終確認日
2026年11月2日

出典

予測の前提

  • 病院の診療録は2050年も診療報酬と医療の質の評価に利用される。
  • 記録の自動分類が進んでも医療者への確認と開示手続きの責任は残る。
  • 地域ごとに病院の統合速度と診療情報システムへの投資余力は異なる。

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ラベルの意味や予測の限界は「予測の読み方」で説明しています。