はじめに
体の具合が悪いとき、話を聞き、検査をして、どんな治療が必要か考える人です。病気を治すだけでなく、病気にならないよう助言することもあります。患者さんとしっかり話し、ほかの医療スタッフと力を合わせることが大切です。
2050年の見通し
2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。
- 収入
- 診療報酬は公的制度で決まり、医師不足があっても価格や賃金に自動的には反映されない。厚生労働省の推計では、全国の医師の需要と供給は2029年ごろに均衡し、その後は供給が上回る見通しとされる。2024年からの時間外労働の上限規制で残業や当直による収入も増えにくく、医療財政の制約もあるため、物価を除いた収入はやや下がる方向を中心に見る。ただし地域や診療科によって不足が続く場合は、待遇が良くなる余地もある。
- 需要
- 高齢化で在宅医療や複数の病気を抱える人の診療は増える。一方、厚生労働省の推計では全国の医師数は2029年ごろに需要に追いつき、その後は供給が上回る見通しとされる。全体では横ばいを中心とし、地域や診療科による偏りは別の課題として残る。
今の医師の仕事
- 問診・診察症状、生活歴、既往歴を聞き、診察して必要な情報を集める。
- 検査の選択と判断血液・画像などの検査を指示し、結果を総合して診断する。
- 治療計画と実施薬物治療、処置、手術等を選び、説明と同意を踏まえて実施する。
- 急変時の対応患者の状態変化を把握し、緊急時に治療と連携を指揮する。
- 多職種連携看護師、薬剤師などと役割分担し、退院・療養支援を行う。
- 記録・研究・継続学習診療録を書き、新しい知見を学び、診療の質を改善する。
2050年、仕事はどう分担される?
業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。
AI・ロボットが中心
- 定型的な診療録の下書き 確からしさ:高 音声認識と文書作成支援は現在も可能であり、医師の確認を前提に定型記録の負担が軽くなると考える。
AIと協働
- 画像・検査結果の見落とし確認 確からしさ:中 検査を読むためのソフトウェアが広がっても、病歴や現場の状況に照らした判断が必要である。
- 治療候補の比較と副作用確認 確からしさ:高 診療ガイドラインや研究情報の検索をAIが助けても、患者ごとの事情と禁忌を医師が評価する必要がある。
- 医療の質と安全の監査 確からしさ:中 手順逸脱や薬剤相互作用の検知をAIが補助できても、説明責任と制度に沿った判断が残る。
人が中心
- 複雑な病気の診断と説明 確からしさ:中 複数の病気や本人の希望が重なるケースでは、不確実性を説明して方針を合意する役割が残ると見立てる。
- 救急処置と急変対応 確からしさ:中 救急時は身体診察と即時対応が必要で、現場の設備や人員の制約もある。
- 地域の訪問診療と連携 確からしさ:中 高齢化と地域差への対応では、患者宅の条件を見て多職種・家族と協力する仕事が続くと考える。
2050年の一日
2050年、医師の一日
午前8時。医師の遥は地域の総合病院で朝の申し送りを聞く。夜間に入院した患者の検査結果は、病院のシステムが一覧にまとめていた。AIは注意すべき薬の組み合わせを示しているが、遥は患者の腎臓の働きや昨晩の様子を自分で確認する。数字だけでは体調の変化を見落とすことがあるからだ。
午前9時。外来で高齢の男性に会う。検査では深刻な異常が見つからなかったものの、本人は最近、階段を上るのがつらいと言う。画面には追加検査の候補が並ぶ。遥は『普段はどこまで歩けますか』と聞き直し、生活の変化から検査の優先順位を決めた。結果が出るまでの不安についても話し合う。
正午前。別の患者の退院会議に参加する。看護師は自宅での薬の管理を心配し、支援員は一人暮らしの環境を説明する。AIが作った退院計画には、近所の移動手段までは反映されていなかった。遥は訪問支援の予定を調整し、患者本人に確認する。
午後2時。救急室から呼び出しが入る。呼吸の苦しい患者が来たという。監視機器は状態の悪化を早く知らせるが、治療方法を決めるには実際の呼吸音や患者の反応を確かめる必要がある。チームで役割を分担し、処置の前後で何度も状態を見直した。
午後5時半。診療録の下書きはほぼ自動でまとまっている。遥は『本人は治療に納得している』という一文を削った。患者はまだ迷っていると話していたからだ。今日の仕事を終え、明日の診察の準備をする。便利な道具が増えた今も、患者と向き合う時間を作ることが遥の大事な仕事になっている。
収入
平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。
今の年収
約1,512万円(年収・平均値)
- 年収1,512.3万円はjob tagの「内科医」ページが示す職業分類「医師」に対応する2025年統計。内科医に限らない分類集計である。
- 開業医や独立して診療所を経営する医師の事業所得は含まれない。
- 主に民営事業所に雇用された勤務医の給与であり、公的医療機関の勤務医をすべて代表する値ではない。
- 医師の診療科、地域、経験年数、勤務時間で収入に大きな違いがある。
収入を動かすもの
AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。
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診療報酬制度どちらにも動きうる
医療の値段は自由に決められない。
大人向けの詳しい説明
公的医療保険の診療報酬改定が病院経営と人件費原資を左右する。患者数が増えても勤務医の実質賃金が自動的に増えるとは限らない。
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地域・診療科の人材偏在どちらにも動きうる
病院や地域で必要な医師の数は違う。
大人向けの詳しい説明
医師需給分科会は全国需給を条件付きで推計しており、偏在や診療科間の差は別の課題である。
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医師の働き方改革どちらにも動きうる
働く時間を短くする制度が始まった。
大人向けの詳しい説明
2024年4月から時間外・休日労働の上限規制が適用された。勤務時間の減少で手当が変わる可能性と、待遇改善の必要性が同時にある。
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AIと医療チームの活用どちらにも動きうる
道具が便利でも給料が同じとは限らない。
大人向けの詳しい説明
AIによる記録や情報整理の省力化、他職種への業務移管の成果を医師の賃金にどう配分するかは制度と経営に依存する。
2050年の3つのシナリオ
未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。
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人材不足と待遇改善
条件特定地域・診療科で医師確保の困難が続き、診療報酬や病院経営にも持続可能な対応が進む。
起きそうなこと不足する分野で待遇が改善する余地がある。ただし医療機関の収入は制度に左右される。
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技術活用と収入横ばい
条件診療支援AIが記録・検査作業の一部を省力化する一方、診療報酬と働き方規制の制約が続く。
起きそうなこと労働負荷は軽くなっても、実質給与が同じ割合で上がるとは限らない。
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財政制約と地域偏在
条件人口構成変化で医療ニーズが変わり、診療報酬の抑制や病院の統合が進む。
起きそうなこと一部の分野・地域では雇用や労働条件が厳しくなる場合がある。
働き方と暮らし
人手は足りる? 余る?
高齢化は慢性疾患や複数の病気を抱える人への診療、在宅医療などの必要性を支える。一方、人口減少や健康状態の変化、診療科別・地域別の偏りで、必要な医師数は単純には増えない。厚生労働省の医師需給分科会には、一定の前提で2040年頃の全国供給が需要を上回る可能性を示した過去の推計がある。ただしこれは2050年の確定予測ではない。AI支援と他職種への業務移管、2024年からの時間外労働規制、医療提供体制の再編で、必要人数や勤務形態が変わり得る。救急・地方・特定診療科では、全国の平均と異なる不足が残る可能性がある。
働き方
大学医学部を卒業して国家試験に合格し、臨床研修を受ける長い学習過程がある。病院勤務、研究、産業医、診療所勤務、開業など道は多様だが、勤務地や診療科によって休日・夜間の対応は異なる。2024年4月から勤務医の時間外労働に上限が設けられ、勤務時間を把握する制度が強化された。患者の命を預かる責任は大きく、判断の不確実性や家族への説明も伴う。AIが検査結果の整理を助けても、患者本人の意向と安全への配慮が要る。独立開業は診療だけでなく人員・設備・経営を管理する仕事になる。
この仕事に近づくには
進路と資格
- 高校までの基礎理科・数学・国語などを学び、医学部入学を目指す。
- 大学の医学課程原則6年間、医学と臨床技能を学び、必要な課程を修了する。
- 医師国家試験国家試験に合格して医師免許を取得する。
- 初期臨床研修医師として診療に従事するには原則2年以上の臨床研修を受ける。
- 専門研修・継続教育選ぶ分野に応じて専門性を深め、医療制度や新しい知識を学び続ける。
今から伸ばしたい力
- 理科と数学を使って体の仕組みを理解する
- 分からないことを調べ、根拠を確かめる
- 相手の話をよく聞き分かりやすく説明する
- 仲間と協力して役割を分担する
- 失敗や危険を想定して確認する
- AIの提案をうのみにせず検証する
出典と前提
出典
- 内科医 - 職業詳細(医師の職業分類に対応する統計)(厚生労働省)、2026年10月29日取得 職業分類「医師」の年収と仕事内容を参照
- よくあるお問い合わせ(統計データの対象)(厚生労働省)、2026年10月29日取得 事実・制度・統計を参照
- 職業紹介ページの統計データに関する留意事項(厚生労働省)、2026年10月29日取得 事実・制度・統計を参照
- 医師の働き方改革を考える(厚生労働省)、2026年10月29日取得 事実・制度・統計を参照
- 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会 第3次中間取りまとめ(厚生労働省)、2026年10月29日取得 過去の条件付き推計として参照
- 医師確保対策に関する意見書(全国知事会 社会保障常任委員会、2021年3月4日)(全国知事会)、2026年10月29日取得 厚生労働省の医師需給推計(2029年ごろ均衡、以降は供給過剰)の記述を参照
予測の前提
- 医療保険と診療報酬を中心とする価格規制が2050年も何らかの形で続く。
- AIは診療補助に普及しても、医療安全と本人同意に人の責任が必要となる。
- 医師の地域・診療科偏在は全国総数とは別に考える。
このページの更新
- 初稿を公開
- 2050年の収入の見立てを「ほぼ変わらない」から「少し下がる」に変更(医師需給の推計と時間外労働規制を反映、編集部)
ラベルの意味や予測の限界は「予測の読み方」で説明しています。
