食・農

果樹農家

かじゅのうか

農業従事者の仕事の一つです

リンゴ、ナシ、ブドウ、ミカンなどの果樹を育て、花の受粉、摘果、剪定、収穫、選果、出荷まで行う農家。木が実を付ける何年も前から品種や植え方を決め、天候と病害虫に合わせて栽培を管理する。

果樹園で、女性の果樹農家が枝についたリンゴを手で支え、熟し具合を確かめながら丁寧に収穫している。
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はじめに

果物の木を育てて、おいしい実を収穫する農家です。枝を切って日光を当てたり、実が多すぎるときに数を減らしたり、虫や病気から木を守ったりします。植えてすぐに収穫できるわけではないので、数年先の木の成長も考えながら、一年中世話をしています。

2050年の見通し

2050年編集部の見立て

2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。

今の年収約361万円参考値:公的な資料から計算した目安
2050年(物価の上昇を除いて)ほぼ変わらない幅:下がる〜上がる
収入
少ない担い手と高品質品種への需要は販売価格を支える可能性があるが、高温適応、苗木の改植、収穫労働の確保に費用がかかる。農家の利益は売値と経費の差なので、実質所得は横ばいを中心に幅を広く見た。
需要
果実への需要は続くが、国内人口減少が消費量を抑える可能性がある。作業の担い手不足は強まり得るものの、それは消費者の購入需要の増加とは別である。
人による差
人による差が広がる

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今の果樹農家の仕事

今
  • 整枝・剪定で樹形を整える冬に枝の向きと混み具合を見て剪定し、果実に日が当たりやすい木の形を作る。
  • 開花期の受粉と着果確認花の咲く時期に受粉の状態を確認し、果実が実り始める割合を見て作業を調整する。
  • 摘果と袋掛け育てる果実の数を絞り、品種や病害虫の状況に応じて袋を掛けて大きさと品質をそろえる。
  • 病害虫・土壌・水分の管理葉の変色や虫の発生を観察し、土の水分と気象条件に応じて防除・灌水・施肥を行う。
  • 収穫時期の判断と選果・出荷果皮の色、糖度、硬さなどを見て収穫し、大きさと傷で選別して市場や直売先へ送る。

2050年、仕事はどう分担される?

2050年編集部の見立て

業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。

AI・ロボットが中心

  • 園地の気温・水分の常時観測 確からしさ:高 気象計と土壌センサーから数値を集めて異常を知らせる作業は自動化しやすい。
  • 果実の画像選別と等級の候補付け 確からしさ:中 大きさや外観の傷は機械で見つけやすいが、内部品質や新しい病変には確認が必要だ。

AIと協働

  • 摘果・収穫用機械の運用 確からしさ:中 作業ロボットを使える園地は増え得るが、枝が重なった場所や傷つきやすい果実の扱いに人の補助が要る。

人が中心

  • 品種の更新と樹の植え替え 確からしさ:高 数年先の気温と売れ筋を考え、すぐにやり直せない植栽への投資を農家が判断する。
  • 収穫適期と販売先の決定 確からしさ:中 同じ木でも実の成熟に差があり、天候と注文に合わせた収穫・直売の判断が残る。

2050年の一日

2050年架空の一日

2050年、果樹農家の一日(架空)

春の夕方、40代の果樹農家・里奈はナシ園の列を一本ずつ歩いていた。例年なら花がそろう時期なのに、今年は南側の木だけ先に満開になった。畑の気象記録は、暖かい日が続いたあと急に冷えたことを示している。受粉を手伝う人の予定は来週だったが、花は人の都合に合わせて待ってくれない。

里奈は花を観察し、受粉が必要な列に目印を付けた。機械の花画像は開花率を八割と推定したが、つぼみが固い枝も混じる。彼女は指先で花の状態を確かめ、作業員には明日先に回る区画を伝えた。農業用の小型機械で補助できる場所と、枝が込み合って手作業が必要な場所を地図に書き分けていく。

作業を終えるころ、直売所から夏の予約販売について連絡が入った。人気品種の注文は多い。しかしこの冬に植え替えた耐暑性を期待する品種は、十分な実が取れるまで何年もかかる。里奈は今季の収穫予測をそのまま予約数には使わず、花の状態を見て数量の上限を少し低く設定した。約束を守れなければ、来年の客にも影響する。

日が傾き、列の端で小さな花が風に揺れた。里奈は樹皮の色と枝の伸びを記録して園を出る。明日の仕事は受粉、来月は摘果、秋には収穫が待っている。画面で未来の収穫量を予想することはできても、一本の木の変化を見逃さないように歩く時間は、まだ欠かせなかった。

収入

平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。

今の年収

今参考値

約361万円(年収・公的な資料から計算した目安)

資料
令和7年賃金構造基本統計調査(job tag『果樹栽培者』掲載年収の参考使用)
調査年
2025年
対象
job tag『果樹栽培者』に対応づけられた農作物栽培・収穫作業員等の雇用労働者。果樹農家の経営所得ではない
税・賞与
税・社会保険料を引く前、賞与を含む雇用労働者の統計上の額。農業経営の売上・所得とは別
計算方法
果樹栽培の仕事内容が一致するjob tag『果樹栽培者』の2025年全国年収360.8万円を、農家経営者の所得とは区別した参考額に用いた。
  • 360.8万円は果樹園の雇用労働者に対応する広い職業分類の値で、自営の果樹農家の平均事業所得ではない。
  • 自営農家では販売額から苗木、肥料、資材、燃料、人件費、設備償却費等を差し引いた額が所得になる。
  • 樹が成長して収穫できるまで数年かかる場合があり、改植年の資金繰りは賃金統計から分からない。
  • 品種、産地、天候、台風や高温の影響、販路によって収量と販売価格に大きな差がある。

収入を動かすもの

2050年編集部の見立て

AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。

  • 高温による開花・着色の変化下がる方向

    暑さで花の時期や実の色づきが変わると、売れる果物の量が減ることがあります。

    大人向けの詳しい説明

    農林水産省は高温による農業生産への影響を継続的に調査しており、品種と産地ごとの適応費用が収益を左右する。

  • 剪定と摘果の人手不足どちらにも動きうる

    木の世話をする人が少なくなると困りますが、手伝う機械が使える園地も増えます。

    大人向けの詳しい説明

    樹形と斜面条件によって自動化の効果が異なり、労働力不足は賃金上昇と栽培縮小の両方につながり得る。

  • 品種更新と苗木への長期投資どちらにも動きうる

    新しい種類の木に植え替えても、すぐにたくさんの実が取れるとは限りません。

    大人向けの詳しい説明

    改植後の未収益期間と苗木・設備の費用が、将来の収穫量だけでなく資金繰りを左右する。

  • 直売・輸出・市場価格上がる方向

    おいしさを伝えて直接買ってもらえると、作った人の取り分が増えることがあります。

    大人向けの詳しい説明

    産地ブランドや販路の工夫で単価を高められるが、輸送費や販売費を差し引いた利益を比較する必要がある。

2050年の3つのシナリオ

2050年編集部の見立て

未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。

  1. 暑さに強い品種と販路転換が進む

    条件産地が品種を更新し、直売や予約販売を使って安定的な価格を確保できる。

    起きそうなこと機械化と品種更新に費用はかかるが、品質を保てれば所得改善につながる。

  2. 高温と天候の変動が大きくなる

    条件花の時期や着色に高温の影響が続き、園地更新にも時間がかかる。

    起きそうなこと収量と品質が不安定になり、農家によって収入の振れ幅が大きくなる。

  3. 機械化が進む産地と進まない産地に分かれる

    条件園地の形、傾斜、規模によって摘果・収穫ロボットの導入効果が異なる。

    起きそうなこと平坦でまとまった園地では省力化が進むが、小規模園地の経費負担が残る。

働き方と暮らし

2050年編集部の見立て

人手は足りる? 余る?

果物の栽培には花の受粉、摘果、剪定、収穫という季節ごとの作業があり、農林水産省は高温障害などの農業現場への影響を継続的に確認している。人口が減っても、国産果実を求める家庭や加工・贈答の需要がなくなるわけではない。

一方、消費者人口の減少と高温への適応費用は産地ごとに異なる。栽培する人が少なくなると供給は減るが、それだけで農家の所得が増えるとは限らない。農作業をする担い手は不足しやすい一方、消費需要の中心は大きく変わらないと見込む。

働き方

主な仕事場は屋外の果樹園や選果場で、冬は剪定、春は受粉、初夏は摘果、秋には収穫というように季節で仕事が入れ替わる。品種によって繁忙期は異なり、開花や天候に合わせて作業時間が変わる。

自営農家では土地や樹、機械を持ち、販売や資金調達も担う。農業法人で働く場合は雇用契約と給与がある。農業を始めるための一律の国家免許はないが、研修や農地の確保、農薬の適切な使用、販路づくりの準備が必要になる。

この仕事に近づくには

今

進路と資格

  1. 農業高校・農業大学校などで栽培の基礎を学ぶ果樹の生理、土づくり、防除、機械の扱いを学ぶ。農業大学校の課程や年数は都道府県で異なり、進学が必須ではない。
  2. 果樹園・農業法人で季節を通して研修する剪定、受粉、摘果、収穫を年間を通して経験する。就農準備資金などの制度は年度と自治体の要件を確認する。
  3. 土地・樹・販路を整えて就農する農地の取得・借受けや植える品種、収穫できるまでの運転資金、販売先を計画する。自営なら農地に関する手続きも確認する。

今から伸ばしたい力

  • 枝の伸びと日当たりを見て剪定する観察力
  • 花の時期を読み、受粉や摘果の順序を決める力
  • 果実の糖度・硬さ・外観を比べて収穫を判断する力
  • 土壌水分・気温・病害虫の記録を栽培に生かす力
  • 苗木から販売まで数年単位の費用と収入を計画する力

出典と前提

最終確認日
2026年11月1日

出典

予測の前提

  • 2050年にも果実の栽培に樹の成長を待つ時間と季節ごとの手作業が必要である。
  • 高温への適応と改植にかかる費用は産地と品種で異なる。
  • 園地の機械化率と消費市場へのアクセスは地域によって差が残る。

このページの更新

  • 初稿を公開

ラベルの意味や予測の限界は「予測の読み方」で説明しています。