IT・デジタル

組込みエンジニア

くみこみえんじにあ

家電、産業機械、自動車などの内部にある小型コンピュータを動かすソフトウェアを設計・開発する仕事。センサーやモーターを制御し、実物の装置で反応時間、発熱、安全性を確かめ、製品を安定して動かす。

男性の組込みエンジニアが、卓上の開発用基板につながる機器を確かめながら、ノートパソコンで制御プログラムの動作を検証している。
ほかの職業とくらべる

はじめに

洗濯機や自動車、工場の機械の中には、小さなコンピュータが入っています。組込みエンジニアは、そのコンピュータに『温度が上がったら止める』『決まった速さで回す』などの動きを教える仕事です。机でプログラムを作るだけでなく、本物の機械を動かして、安全に動くか何度も試します。

2050年の見通し

2050年編集部の見立て

2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。

今の年収約579万円平均値・2025年の統計
2050年(物価の上昇を除いて)少し上がる幅:少し下がる〜上がる
収入
量産現場で安全を担保できる技術者は希少になり得るが、定型コードの自動生成と海外製モジュールの普及は開発単価を抑える。企業の設備投資と責任範囲による差を考え、2026年と比べ実質で小幅増を中心とした。
需要
job tagが挙げる制御プログラム、実機試験、安全性の確認は多様な機器に必要になる。一方、標準化と自動化で実装人数が減る可能性があり、需要増は緩やかと見る。
人による差
人による差が広がる

ほかの職業の見通しを見る

今の組込みエンジニアの仕事

今
  • マイコンの制御仕様設計温度センサーからの信号を受けてモーターや弁をいつ動かすか、反応する条件と時間を仕様書に決める。
  • C言語などによる制御プログラム実装メモリーや計算速度が限られたマイコンに合わせ、センサー読み取りと機器の動作を制御するコードを書く。
  • 基板上の通信・波形の解析オシロスコープやロジックアナライザーを使って、基板上の通信のタイミングや電圧の乱れを調べる。
  • 実機での異常系・耐久試験電源を急に切る、信号が途切れる、高温になるなどの条件で装置を動かし、予期せぬ動作がないか確かめる。
  • 規格・安全設計のレビュー回路担当者や品質担当者と、過熱防止、誤動作時の停止、通信の保護などを点検し、設計を修正する。

2050年、仕事はどう分担される?

2050年編集部の見立て

業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。

AI・ロボットが中心

  • 制御コードの定型部分の作成 確からしさ:高 センサーの読取りや通信処理などの一般的なコードは、既存の仕様と部品資料から自動生成しやすい。ただし実機への適合は別の検証が要る。

AIと協働

  • シミュレーターでの故障条件の探索 確からしさ:中 AIが数多くの異常条件を作り出して試せても、現物の熱や電気的な雑音を完全には再現できず、人が試験を選ぶ。
  • センサー通信の波形を用いた原因特定 確からしさ:中 測定波形の異常箇所は機械が候補を示せるが、配線や電源装置と結びつけて再現試験をするには現場の知識が要る。

人が中心

  • 人が触れる装置の安全停止条件の決定 確からしさ:高 わずかな制御遅れが機械の動きに影響する。用途ごとの安全基準を確認し、許容するリスクを責任を持って決める必要がある。
  • 量産品の実機検証と発売判定 確からしさ:中 部品の個体差や経年劣化を含めた確認は物理的な設備が必要で、検査記録を根拠に出荷を認める判断が残る。

2050年の一日

2050年架空の一日

2050年、組込みエンジニアの一日(架空)

工場の試験室に運び込まれた小さな制御基板が、朝の机に三枚並んでいる。食品工場の冷却装置に組み込む新しい部品だ。三十代の翔太は、温度センサーが『正常』と表示しているのに、装置が時々早く止まるという報告を読んだ。試験用の装置は安全な温度に設定されており、製品を流さずに原因を探せる。

設計支援AIは、以前の故障記録をもとに「センサーを交換」と提案した。だが翔太は、交換前に発生条件を知りたかった。冷却用のモーターを起動する瞬間だけ、センサーとマイコンの通信が一拍抜けている。オシロスコープで信号を映すと、回転を速めた直後に細かな電気の乱れが出た。翔太は回路担当者を呼び、配線を変えて同じ試験を繰り返した。

配線を替えると乱れは小さくなったが、完全には消えない。翔太は、一度だけ届かなかった値で装置を停止させる今のプログラムを見直した。ただし停止を遅らせすぎれば、温度が本当に上がったときに危険になる。安全担当者と机を囲み、連続する読み取り結果と別系統の温度検出を組み合わせた停止条件を考えた。AIに候補を比較させても、最後の条件は試験記録をもとに人が決めた。

夕方、改良した基板は電源を入れ直しても安定して動いた。翔太は合格と書く前に、まだ行っていない高温での長時間試験を一覧に残した。画面の中で動くプログラムが、現実のモーターを動かす。その間にある小さなずれを見つけるのが、自分の仕事だとあらためて思った。

収入

平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。

今の年収

今統計

約579万円(年収・平均値)

調査
令和7年賃金構造基本統計調査(job tag掲載の年収)
調査年
2025年
対象
job tag『システムエンジニア(組込み、IoT)』に対応するソフトウェア開発技術者(組込・制御系)等の職業分類の雇用労働者
税・賞与
税・社会保険料を引く前、賞与を含む
  • job tag掲載の全国年収578.5万円を円に換算した値であり、2025年の賃金構造基本統計調査を加工した数字である。
  • 組込みエンジニアだけを個別調査した年収ではなく、対応する広い職業分類の平均に基づく。
  • 車載、家電、工場設備など、担当分野と安全性への責任、勤務先、経験によって給与は大きく変わる。
  • 独立した請負業者の事業所得や、製品の販売による会社の利益を示す値ではない。

収入を動かすもの

2050年編集部の見立て

AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。

  • 生産設備と製品の自動制御の増加上がる方向

    工場や乗り物の中で自動で動く部分が増えるほど、動き方を考える技術者が必要になります。

    大人向けの詳しい説明

    ロボットや機器の制御には機械・電気・ソフトの接点があり、設計後の実物検証も必要になる。

  • 定型のマイコン開発の自動化下がる方向

    決まった動きを作るプログラムは、機械が手伝えるようになります。

    大人向けの詳しい説明

    既知の部品を使うコードの生成や検査は省力化し、同じ実装作業の受注単価を下げる可能性がある。

  • 製品安全・信頼性の責任上がる方向

    本物の機械は、プログラムが間違うと危ないので、何度も確かめる仕事が残ります。

    大人向けの詳しい説明

    IPAが紹介するSTAMP/STPAのように複雑な制御系全体を評価する発想が重要になり、実機・回路・規格を理解した人材の価値を支える。

  • 部品と設備投資の海外依存どちらにも動きうる

    機械を作る会社が国内で開発するか、海外の部品を使うかで仕事の数は変わります。

    大人向けの詳しい説明

    高度な制御モジュールを輸入する場合は国内の設計工程が減る一方、接続試験や国内向けの安全対応は残る。

2050年の3つのシナリオ

2050年編集部の見立て

未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。

  1. 安全性と現物検証の専門家が不足する

    条件自動制御を使う機械が増え、量産試験や故障時の安全設計が人に求められ続ける。

    起きそうなこと実機と規格に精通した技術者の交渉力が上がり、実質収入が伸びる可能性がある。

  2. コード作成が高度に共通化する

    条件一般的な制御コードの自動生成と検証が標準化し、開発会社同士の価格競争が強まる。

    起きそうなこと単純な実装工程の単価は下がり、製品全体の安全設計に進めた人との所得差が広がる。

  3. 国内の機器開発と設備投資が伸び悩む

    条件工場の更新投資が抑えられ、海外製の制御部品や完成モジュールへの依存が進む。

    起きそうなこと国内での新規設計案件が限られ、現場保守を中心に需要は残っても収入は停滞し得る。

働き方と暮らし

2050年編集部の見立て

人手は足りる? 余る?

家電、車両、産業機械などの制御には、装置の内側で動くソフトウェアが必要だ。job tagは組込み・IoT技術者の仕事として、マイコンのプログラムだけでなく、センサーや装置を含む設計と安全性・耐障害性の確認を挙げている。機器同士がつながり制御が複雑になるほど、実際の回路とソフトを一緒に検証する技術者への需要は残りやすい。

ただし、機器の標準化や海外製の完成モジュール、生成AIによるコード自動作成で、国内の開発人数が単純に増えるとは限らない。量産製品の安全試験や機器ごとの調整を担える人は求められるが、定型的な実装は縮小し得る。中心の見立ては需要小幅増とし、国内製造業の投資次第で幅がある。

働き方

勤務先は機械メーカー、自動車部品メーカー、制御機器メーカー、組込みソフトの開発会社など。プログラムを書く時間は事務所や自宅で作業できる場合もあるが、基板の測定、実機の試験、製造ラインでの不具合調査には研究室や工場へ行く必要がある。

試作品の完成前や量産直前には、回路担当者、製造部門、品質保証担当者と試験が集中しやすい。2050年も遠隔のシミュレーターは進歩するだろうが、熱や雑音、部品のばらつきを確かめる作業があり、完全な在宅勤務にはなりにくい。

この仕事に近づくには

今

進路と資格

  1. 高校で数学・物理と簡単な電子工作に親しむ小型コンピュータに温度センサーやLEDをつなぎ、信号によって動作を変える実験をしておくと仕事をイメージしやすい。
  2. 高専5年、大学4年、専門学校などで情報・電気電子を学ぶ入職に必須の国家資格はない。C言語、電子回路、リアルタイム制御、通信、ソフトウェアテストを学び、実機を使った卒業制作などで経験を積む。
  3. 開発現場で経験を積み、試験で体系的な知識を補う基本情報技術者試験やエンベデッドシステムスペシャリスト試験は知識確認の選択肢で、取得しなければ就けない資格ではない。入社後に実機試験、設計、量産対応を経験する。

今から伸ばしたい力

  • C言語などでマイコンの限られたメモリーと処理時間を意識して書く力
  • 回路図とセンサーの信号を照らし合わせる電気・電子の基礎
  • オシロスコープの波形から通信の乱れを追う観察力
  • 過熱や電源断を想定して安全側に動く条件を設計する力
  • 英語の半導体データシートから条件と制約を読み取る力

出典と前提

最終確認日
2026年10月30日

出典

予測の前提

  • 2050年も多くの機械に小型コンピュータとセンサーが組み込まれている。
  • コード作成の自動化が進んでも物理的な実機検査と安全上の責任は残る。
  • 国内の設備投資と製造拠点の変化によって設計案件の数は大きく揺れる。

このページの更新

  • 初稿を公開

ラベルの意味や予測の限界は「予測の読み方」で説明しています。