電気工事士
でんきこうじし
住宅やビル、工場などで電線を配線し、照明やコンセント、分電盤などの電気設備を取り付ける仕事。図面を読み、設備の点検や修理も行う。感電や火災を防ぐため、資格に応じた作業と慎重な安全確認が求められる。

はじめに
家の電灯やコンセント、学校の電気設備が安全に使えるのは、電気工事士の仕事があるからです。図面を見て電線をつなぎ、道具で設備を取り付け、最後に検査をします。未来はAIが作業の計画を手伝うかもしれません。でも、建物ごとに違う場所で安全を確かめる力は、これからも大切になりそうです。
2050年の見通し
2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。
- 収入
- 建設工事の人件費の目安となる国の「公共工事設計労務単価」は上がり続けており、東京都の電工の単価は2025年度で13年連続の上昇です。技能者の高齢化と担い手不足から、電気設備を扱える技能の価値は保たれやすいと考えます。ただし、工事代金への価格転嫁や、会社から働く人への配分しだいで伸び方は変わり、日本の実質賃金が長く伸び悩んできたことも踏まえて、物価を除いた収入は少し上がる方向を中心に幅を持たせました。
- 需要
- 古い建物や電気設備の更新・点検に加え、太陽光発電や蓄電池、電気自動車の充電設備など、電気を使う設備を工事する仕事は増える方向です。国土交通省も建設業の高齢化と担い手不足を課題としています。人口減少で新築工事が減ることや施工の省力化もあるため、大きく増えるとまでは言えず、増える方向を中心にしました。
今の電気工事士の仕事
- 現地調査・見積もり建物の状況を見て必要な設備・資材・作業量を確認し、見積書や仕様書を作る。
- 図面確認・施工準備図面を読み、工事の順番、安全対策、工具や材料を決める。
- 配線・配管工事建物内に電線や通信設備用の配管を通し、必要な場所へ電気を届ける。
- 設備・器具の取り付け分電盤、照明、コンセントなどを決められた位置へ設置する。
- 試験・点検・記録測定器で回路や設備を検査し、不具合を直して試験成績書や完成図を作成する。
- 現場の調整・指導他の工事と作業順を調整し、チームの安全や新人の作業を確認する。
2050年、仕事はどう分担される?
業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。
AI・ロボットが中心
- 図面の照合と資材数量の下書き 確からしさ:中 現在も図面・仕様書から資材や作業を決める仕事がある。図面がデジタル化されれば、AIが照合や数量計算を支援しやすい。
- 定型的な検査記録と報告書の作成 確からしさ:中 現在は試験結果をもとに試験成績書を作る。測定値の取り込みと帳票生成は自動化しやすいが、測定行為と確認は別に必要となる。
AIと協働
- 現場ごとの施工計画と危険予測 確からしさ:高 現場での作業には法令順守と安全管理が必要で、建物ごとに条件が異なる。AIの警告を使いながら有資格者が判断する形を想定する。
- 省エネ・分散電源設備の更新工事 確からしさ:中 電気設備は省エネルギーや管理の自動化に対応して高度化している。AIで構成を検討し、現地条件を確認して施工する仕事を想定する。
人が中心
- 既設建物の配線交換・機器の設置 確からしさ:中 配線・器具取付は現場の物理作業であり、古い建物では状態が一様でない。ロボットが支援しても人の手作業が残る可能性がある。
- 測定結果の確認・通電前の安全判断 確からしさ:高 施工の欠陥は感電や火災につながり、資格制度も設けられている。記録の自動化が進んでも最終確認の責任が重要になると見立てる。
- 施主や他職種との調整・説明 確からしさ:高 電気工事は建築工程に合わせてチームで行われる。停電時間や工事範囲の合意など、人との調整が欠かせない。
2050年の一日
2050年、電気工事士の一日
午前7時半。電気工事士の美咲は、今日の仕事が入った古い集合住宅へ向かう。築年数の長い建物で、配電盤と一部の配線を更新する予定だ。出発前、会社のシステムに図面と過去の点検記録を読み込ませると、AIが必要な材料と注意点の一覧を作ってくれた。ただし、昔の改修で図面にない配線が増えているかもしれない。持っていく工具は自分で確認した。
午前9時。管理人と停電の時間をすり合わせ、住民にもう一度作業内容を伝える。先輩と電源を切り、決められた手順で安全を確認する。壁の中から、記録にない古いケーブルが見つかった。端末は似た設備の事例を表示したが、美咲はその案をすぐには採用しない。ケーブルの行き先を測定して確かめ、責任者と相談して作業手順を変更した。
昼休み、端末に午後の段取りが届く。近隣の現場で部品の納品が遅れ、応援の相談が入っていた。今日はこの建物の復電が優先だと判断して断る。予定の変更を説明する文面はAIに作ってもらい、相手に失礼がないか読み直した。
午後は新しい分電盤を取り付ける。狭い場所で体をひねりながら配線を整える作業は、思ったより時間がかかった。作業記録用カメラが取り付け位置を確認するが、最後は美咲が一本ずつ目で見て触れない範囲を守りながら点検する。測定器の数字は自動で報告書に入る。それでも数字に違和感があり、もう一度測ると接続の不具合が見つかった。
午後5時。予定より少し遅れて復電した。管理人がほっとした顔を見せる。帰り道、端末は明日の材料の候補を並べている。美咲は手袋を外し、指先に残る疲れを感じた。便利な道具は増えたけれど、電気が安全に使えることを確かめる仕事は、今日も現場で続いている。
収入
平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。
今の年収
約628万円(年収・平均値)
- job tagの全国年収628.1万円を円に換算。表示時点の掲載値であり、収入の保証ではない。
- 職業分類に対応する統計であり、電気工事士という職業のみを厳密に抽出した値ではない。
- 個人事業主・一人親方など、雇用されず独立して働く人の事業所得は含まれない。
- 平均値は経験年数・地域・雇用形態による違いを表さず、求人賃金(月額)とも定義が異なる。
収入を動かすもの
AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。
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設備更新の需要上がる方向
古い建物の電気を直す仕事が多いと、仕事の機会が増える。
大人向けの詳しい説明
建物の老朽化、更新投資、耐災害性向上の需要は追い風になり得る。ただし地域の人口減少や建設投資の変動に左右され、必ずしも個人の賃金上昇と一致しない。
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資格と難しい現場への対応力上がる方向
危険を見つけて安全に直せる人は、頼りにされやすい。
大人向けの詳しい説明
法令が定める資格範囲に加え、保守・改修・複雑な設備の実務経験が評価される可能性がある。資格だけで高収入が決まるわけではなく、担当職務や地域も重要。
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AI・自動化の普及どちらにも動きうる
計画を早く作れても、お給料が増えるとは限らない。
大人向けの詳しい説明
見積もりや報告書の省力化は生産性を高め得るが、価格の引き下げに転じる場合もある。技能者が付加価値の高い業務へ移れるか、企業が利益を配分するかで結果が変わる。
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人材不足と労働条件どちらにも動きうる
働く人が少ないと必要とされるけれど、忙しすぎることもある。
大人向けの詳しい説明
建設技能者の高齢化は供給制約につながり得る。一方、長時間労働や安全対策不足は就業継続を難しくするため、待遇改善と育成の進み具合が収入・暮らしの両面を左右する。
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材料費・取引価格下がる方向
材料が高くなっても、工事代に上乗せできないと大変。
大人向けの詳しい説明
電線・器具・車両・保険などのコストが上がると、適切な価格転嫁ができない事業者の利益は縮む。とくに独立事業者は売上と手取りを分けて考える必要がある。
2050年の3つのシナリオ
未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。
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技能が評価される
条件老朽設備の更新需要が続き、資格と現場技能を持つ人が不足する。発注者が適正な工賃を払い、賃金や契約単価に反映される。
起きそうなこと経験ある施工者や安全管理者の交渉力が高まる可能性がある。ただし需要があっても価格転嫁できなければ収入増にはつながらない。
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省力化と安定
条件AIによる図面確認・記録作成や施工支援が普及し、工事量と人材供給が比較的釣り合う。資格制度と安全責任は維持される。
起きそうなこと事務負担が減る一方、得られた効率の利益を企業・発注者・働く人がどう分けるかで収入が変わる。担当できる設備の幅が働き方に影響する。
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価格競争が厳しくなる
条件新築需要が弱まり、標準化された工事では業者間の競争が強まる。材料費や移動費が高く、工賃に転嫁しにくい。
起きそうなこと単純な定型工事ほど利益が圧迫される可能性がある。改修や特殊設備、顧客対応などの技能を広げる重要性が増す。
働き方と暮らし
人手は足りる? 余る?
国土交通省は建設業の高齢化と若い担い手の少なさを課題としており、電気工事士も人材確保が重要な職種と考えられる。一方で、建設業全体の需給は時期や地域で異なり、電気工事士だけの2050年の人数や不足率を断定できる資料は確認できていない。
編集部の見立てでは、古い建物の配線更新、電力を使う設備の改修、災害対策などに仕事が残る可能性がある。設計補助や記録作成が省力化されても、既設建物の条件確認、施工、検査、安全管理の全てを一様に自動化することは難しいだろう。ただし、人口減少による新築需要の変化、工法の標準化、施工ロボットの進歩によって必要な人数は変わり得る。人手不足だから必ず稼げる、という意味ではない。
働き方
電気工事士は工事会社などに雇われて複数人で働く道も、経験を積んで独立する道もある。現場は住宅、工場、商業施設などで異なり、建物の新築だけでなく改修や点検の仕事もある。地域によって建設需要、移動距離、受注単価が違う。
脚立や狭い場所での作業、重い道具の運搬などがあり、体力と安全管理が必要になる。工期や停電時間に合わせて早朝・休日に働く場合もある。AIが書類作成や段取りを支援すれば負担が軽くなる可能性はあるが、現場の移動や安全確認は引き続き大切だ。第二種と第一種では扱える工事の範囲が違い、実務経験と資格が選べる仕事を広げる。一人親方の場合は仕事の獲得や経費、保険も自分で考える必要がある。
この仕事に近づくには
進路と資格
- 学校で基礎を身につける普通科・工業高校などから目指せる。理科・数学・ものづくり・安全の基礎が役立つ。
- 学び方と入職先を選ぶ工業高校、職業訓練校、専門学校、高専、大学、企業内訓練など複数の道がある。就職後に学んで資格取得する道もある。
- 第二種電気工事士一般用電気工作物等(住宅や小規模店舗など)の電気工事を行うための資格。試験合格だけでなく免状交付が必要。
- 実務経験を積む現場で図面、施工、点検、安全確認を学ぶ。資格に応じてできる作業と責任の範囲を守る。
- 第一種電気工事士一般用電気工作物等に加え、原則として最大電力500kW未満の自家用需要設備などの工事を担当できる。免状交付には所定の実務経験等の条件があるため最新制度を確認する。
- 仕事の幅を広げる施工管理、設備保守、電気主任技術者などの関連分野や、独立開業へ進む道もある。必要な資格・登録はそれぞれ異なる。
今から伸ばしたい力
- 電気の基礎(回路、電圧、電流、測定)を学ぶ力
- 図面や説明書を正確に読み取る力
- 工具を安全に使い、手順を守る力
- 現場の異変に気づき、確認して判断する力
- 仲間やお客さんと分かりやすく話す力
- デジタル図面やAIの提案を検証する力
出典と前提
出典
- 電気工事士 - 職業詳細(職業情報提供サイト job tag)(厚生労働省)、2026年10月29日取得 仕事内容・統計を加工して使用
- 電気工事士(経済産業省)、2026年10月29日取得 資格と工事範囲の説明を参照
- 建設業の人材確保・育成に向けた取組(令和9年度概算要求)(国土交通省・厚生労働省)、2026年10月29日取得 建設技能者の年齢構成と人材確保の課題を参照
- 令和7年版 国土交通白書 担い手側の供給量に関する将来推計と需給ギャップ(国土交通省)、2026年10月29日取得 建設技能労働者の将来推計の方向性を参照
- 公共工事設計労務単価(令和7年度)の解説(マネーフォワード クラウド)、2026年10月29日取得 令和7年度の労務単価の引き上げ(全職種平均6.0%、東京都の電工は13年連続上昇)を参照
予測の前提
- 2050年も住宅・施設に電気設備があり、設置と更新の需要が続く。
- 法令による電気工事の資格・安全管理の仕組みは変化しても、一定の責任ある確認が求められる。
- AIによる文書処理や計画支援は進むが、現場の物理作業の自動化速度は場所ごとに異なる。
- 人口や建設投資、材料価格、政策などの変化で仕事量と収入は上下する。
このページの更新
- 初稿を公開
- 2050年の収入・需要の見通しを追加し、仕事の説明を今の仕事に限った内容に修正
- 2050年の収入・需要の見立てを「ほぼ変わらない/横ばい」から「少し上がる/増える」に変更(労務単価の上昇と電化需要を反映、編集部)
ラベルの意味や予測の限界は「予測の読み方」で説明しています。