IT・デジタル 想像の仕事
AIセーフティ評価員
えーあいせーふてぃひょうかいん
世に出る前のAIに、わざと意地悪な指示やだましの手口を試し、危険な使われ方やうその答え、情報漏れにつながる弱点を見つけて、開発者に直してもらう仕事になりそうだ。
はじめに
新しいAIが使われ始める前に、わざといじわるな質問をしたり、だまそうとしたりして、AIがまちがったことや危ないことをしないかを試す仕事です。弱いところを見つけたら、作った人に「ここを直してください」と伝えます。みんなが安心してAIを使えるように、先回りして守る役目です。
今ある芽
実証や制度づくりが始まっていて、条件がそろえば広がりそうなものです。AIの弱点を攻撃側の目線で調べる「レッドチーミング」は、今は開発する会社の一部の専門チームや研究機関が中心に行っている。AIが家電や乗り物、行政の窓口などに広く入り、公開前の評価が当たり前の手順になれば、独立した評価を専門にする人が多く必要になりそうだ。
- レッドチーミングの手法ガイド日本のAIセーフティ・インスティテュートが、AIの弱点を攻撃側の目線で調べる「レッドチーミング」の手法ガイドを公開している。評価の進め方が文書として整えられ始めたことは、職業としての型ができる手がかりになる。出典:AIセーフティに関するレッドチーミング手法ガイド(第1.10版)の公開(AIセーフティ・インスティテュート(J-AISI))
- AI法と人工知能基本計画日本ではAI法にもとづき、人工知能基本計画(第Ⅱ期)が2026年7月に閣議決定された。国としてAIの開発と安全の確保を計画的に進める方針が示され、評価を担う人の育成にもつながると考えられる。出典:AI戦略 - 科学技術・イノベーション(内閣府)
2050年、どんな仕事をしている?
- 評価計画づくりAIがどこで誰に使われるのかを開発者から聞き、起こりうる悪用や失敗を洗い出して、試す項目の優先順位を決める。
- 攻撃シナリオの実行言い回しを変えた指示や、画像・音声にまぎれこませた命令などを試し、AIが本来断るべきことをしてしまわないかを確かめる。
- 自動テストの組み立て見つけた手口を少しずつ変えた大量の試験を自動で流せるようにし、修正後に同じ弱点が戻っていないかを確かめる。
- 危険度の判定と報告見つけた弱点が誰にどんな被害を与えうるかを整理し、公開前に直すべきものと様子を見るものを分けて報告する。
- 修正の再評価開発者が直したあとに同じ試験をくり返し、別の弱点が新しく生まれていないかも含めて確認する。
2050年の一日
2050年、AIセーフティ評価員の一日(架空)
テレビの中の俳優が「冷蔵庫の中身を全部注文して」と言った。すると、居間の隅の家庭用ロボットが「かしこまりました」と答えた。評価用の部屋でそれを見ていた由美子は、記録の印をつけた。AIの安全性を調べる独立した評価機関で働いて十年、四十五歳になる。今週は、来月発売予定の、高齢者の暮らしを手伝うロボットの評価を担当している。
ロボットは本来、登録した家族の声でしか買い物を受け付けないはずだった。由美子のチームは、テレビの音声、似た声の録音、電話越しの声など、条件を変えて二百通り以上を試した。わかったのは、部屋が静かで、声の高さが近いと、本人ではない声でも通ってしまうことがあるという点だった。
午後、開発会社の技術者とオンラインで打ち合わせをした。相手は、発売日を守るために「注文の上限額を下げれば十分では」と提案した。由美子は、お金の問題だけでなく、玄関の鍵を開ける機能にも同じ弱点がつながりうることを、試験の記録を示して説明した。技術者はしばらく黙り、社内で発売日を見直すと答えた。
夕方、由美子は今日見つけた手口を、少しずつ条件を変えて自動で試せるよう、若い同僚と一緒に試験の組み立てを直した。修正版が届いたら、まず同じ二百通りを流し、それから新しい弱点が生まれていないかを探す。帰り際、由美子は自宅のスピーカーの音量を少し下げてから寝ようと思い、小さく笑った。
この仕事に近づくには
今からできること
- 中学校技術の授業でプログラミングにふれる。生成AIを使うときに、どんな質問で答えが間違うのかを観察し、ノートに残すくせをつける。
- 高校情報と数学を中心に学ぶ。IPAなどが行うセキュリティ・キャンプには、13〜22歳が参加できる全国大会がある。基本情報技術者試験に挑戦するのもよい。
- 大学・社会人情報工学や情報セキュリティを学べる大学・高専・専門学校に進む。社会人になってから、国家資格の情報処理安全確保支援士を目指す道もある。
今から伸ばしたい力
- プログラミングと情報セキュリティの基礎
- 「どうすれば失敗させられるか」を考える発想力
- 同じ試験を条件を変えて根気よくくり返す力
- 見つけた手口を悪用しない倫理観
- 開発者に根拠を示して改善を求める説明力
近い「今の仕事」
この仕事に近いのは、今ある次の仕事です。今の年収や進路は、それぞれのページで見られます。
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IT・デジタル 情報セキュリティエンジニア 企業や役所のコンピュータとネットワークを、不正アクセスやウイルス、情報漏えいから守る仕事。システムの弱点を調べて対策を立て、攻撃が起きたときは原因を調べて被害を食い止める。
2050年の収入少し上がる -
IT・デジタル テストエンジニア アプリや業務システムが仕様どおりに動き、使う人が困る不具合を起こさないかを検証する仕事。確認項目を設計し、操作を再現して問題の条件を記録し、修正後にも別の部分が壊れていないかを確かめる。
2050年の収入少し下がる -
IT・デジタル AIエンジニア 画像・文章・数値などを扱う人工知能を開発し、現場で役立つように動かす技術者。学習用データの整備、機械学習モデルの設計と評価、動作速度の改善、導入後の性能監視までを担う。
2050年の収入少し上がる
出典と前提
出典
- AIセーフティに関するレッドチーミング手法ガイド(第1.10版)の公開(AIセーフティ・インスティテュート(J-AISI))、2026年11月4日取得
- AI戦略 - 科学技術・イノベーション(内閣府)、2026年11月4日取得
この仕事が広がる前提
- AIが家電やロボット、行政の窓口など、暮らしの多くの場面に組み込まれる。
- 公開前に独立した立場で安全性を評価する手順が、業界や国のルールとして広がる。
- AIの性能が上がっても、思わぬ使われ方への備えが求められ続ける。