IT・デジタル

情報セキュリティエンジニア

じょうほうせきゅりてぃえんじにあ

企業や役所のコンピュータとネットワークを、不正アクセスやウイルス、情報漏えいから守る仕事。システムの弱点を調べて対策を立て、攻撃が起きたときは原因を調べて被害を食い止める。

オフィスで、女性の情報セキュリティエンジニアが、モニターに表示されたネットワークの接続図を指しながら、横に座る同僚と状態を確認している。
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はじめに

会社や役所のコンピュータを、悪い人の侵入やウイルスから守る仕事です。わざと攻撃するように調べて弱いところを見つけたり、ふだんと違う動きがないか見張ったりします。何か起きたときは急いで原因を探し、どうすれば被害を広げずにすむかを考えます。

2050年の見通し

2050年編集部の見立て

2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。

今の年収約610万円平均値・2025年の統計
2050年(物価の上昇を除いて)少し上がる幅:少し下がる〜上がる
収入
守る対象と手口が広がり、法制度や取引条件で対策が欠かせない費用になれば、経験者の交渉力は高まる。ただし現在も賃金は一般的なIT職と大きく変わらず、自動化で一次対応の担い手が減る面や、対策費をかけにくい組織の多さもあるため、小幅な上昇を中心にした。
需要
ネットワークにつながる仕組みと委託先を狙う攻撃が増え、守る対象は中小企業にも広がる。監視の自動化で一次対応の人数は減り得るが、判断とルールづくりの需要が上回ると見てやや増えるを中心にした。
人による差
人による差が広がる

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今の情報セキュリティエンジニアの仕事

今
  • 脆弱性診断(擬似攻撃による弱点の調査)依頼を受けたWebサイトやシステムに、自動の検査道具と手作業で攻撃を試し、侵入できる弱点を報告書にまとめる。
  • ログとアラートの監視SOC(セキュリティ監視センター)などで、通信や操作の記録を見張り、警告が出たら本物の攻撃かを確かめる。
  • インシデント対応ウイルス感染や不正アクセスが起きたとき、感染した端末をネットワークから切り離し、侵入の経路と被害の範囲を調べる。
  • 標的型メール訓練と社員教育取引先などを装った訓練用のメールを送り、開いてしまう人の傾向を調べて、見分け方を社員に伝える。
  • アクセス権限と認証の設計誰がどのデータに触れてよいかを決め、多要素認証や通信の暗号化など、侵入されにくい仕組みを設計する。

2050年、仕事はどう分担される?

2050年編集部の見立て

業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。

AI・ロボットが中心

  • アラートの一次切り分け 確からしさ:高 大量の警告を過去の事例と照らして誤検知を除き、危険度順に並べる作業は自動化しやすく、既に監視の道具に組み込まれ始めている。
  • 自動の脆弱性検査と修正候補の提示 確からしさ:中 既知の弱点の検出は機械に向くが、修正がほかの機能を壊さないかの確認や、適用する時期の判断は残る。

AIと協働

  • 手動による侵入テスト 確からしさ:中 道具が候補を挙げても、業務の流れの穴を組み合わせて突くような攻撃者の発想で試す部分は、人の経験に頼る面が大きい。

人が中心

  • システムを止めるかの判断と報告 確からしさ:高 通信を遮断すれば業務や取引先にも影響が出る。被害と影響を比べて決め、経営層や関係先に説明する責任は人が負う。
  • 委託先やAI利用を含めた対策ルールづくり 確からしさ:中 取引先を経由した攻撃やAIの利用をめぐるリスクは、組織ごとの事情や契約に合わせて線を引く必要があり、人の調整が欠かせない。

2050年の一日

2050年架空の一日

2050年、情報セキュリティエンジニアの一日(架空)

午前4時50分、枕元の端末が短く三度震えた。監視の道具が「優先度・高」をつけた知らせだ。地方の部品メーカーで情報セキュリティを担当する美咲は、布団を出て自宅の作業机に向かった。

画面には二つの出来事が並んでいた。昨夜十一時、取引先の部品商社を名乗るメールが経理の社員に届き、「振込先の変更について」という添付ファイルが開かれていた。そしてその三十分後から、経理の端末が普段は使わない海外のサーバーへ、少しずつデータを送り始めている。道具は過去の事例と照らして、乗っ取りの疑いが強いと判定し、「経理部の通信を遮断」を提案していた。

美咲はすぐには実行しなかった。今日は月末で、経理部は朝から取引先への支払いを処理する。全体を止めれば、その仕事も止まる。送信先を調べると、メールの送信元アドレスは商社のものと一文字違いで、送られたデータはまだ少ない。美咲は、乗っ取られたとみられる一台だけをネットワークから切り離し、経理部のほかの端末は監視を強めて動かし続けると決めた。午前5時40分、当番の上司に電話で判断の理由を伝え、了承を得た。

始業前、本物の商社の担当者に別の電話番号で連絡し、偽のメールが出回っていると知らせた。経理の社員には、責める言葉ではなく、何が起きたかを順に説明する。夕方、美咲は記録をまとめ、道具が見落とした「一文字違い」を、次の判定の手がかりとして登録した。

収入

平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。

今の年収

今統計

約610万円(年収・平均値)

調査
令和7年賃金構造基本統計調査(厚生労働省job tag掲載の加工値)
調査年
2025年
対象
job tag「セキュリティエキスパート(脆弱性診断)」に対応づけられた職業分類の雇用労働者。独立事業者の事業所得は含まない。
税・賞与
税・社会保険料控除前、賞与等を含む年収
  • job tag「セキュリティエキスパート(脆弱性診断)」の2025年全国年収609.8万円を円に換算した。情報処理・通信技術者を含む職業分類の統計で、セキュリティの仕事だけを集計した値ではない。
  • job tagでは、脆弱性診断の担当者の賃金や労働時間は一般的なIT企業の会社員と大きく変わらないとされている。
  • 診断を専門に行う会社は東京に集中しており、地域や勤務先(診断会社、監視サービス会社、一般企業の情報システム部門など)で差がある。
  • フリーランスや請負で診断に参加する人の事業所得、脆弱性を見つけて報告した人に支払われる報奨金(バグバウンティ)は含まない。

収入を動かすもの

2050年編集部の見立て

AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。

  • 社会のデジタル依存と攻撃の広がり上がる方向

    お店や病院、工場までコンピュータでつながるほど、守らなければならない場所が増えます。

    大人向けの詳しい説明

    IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」ではランサム攻撃、委託先を狙った攻撃に続き、AIの利用をめぐるリスクが新たに上位に入った。守る対象と手口が広がり、専門人材の需要を支える。

  • 監視・診断の自動化どちらにも動きうる

    見張りや決まった検査は機械が得意になり、人は難しい判断に集中するようになります。

    大人向けの詳しい説明

    一次対応の作業は省人化し得るが、自動判定の誤りを見抜き判断する役割の価値は残る。担い手の構成が変わり、報酬の差が開きやすい。

  • 法制度と取引先からの要求上がる方向

    国の決まりや取引のルールで守りを固めることが求められると、専門の人が必要になります。

    大人向けの詳しい説明

    重要インフラの防護や取引先管理を求める制度・契約が強まるほど、対策は任意の費用から欠かせない費用に変わり、交渉力が高まる。

  • 対策費をかけにくい組織の多さ下がる方向

    被害が起きるまで大切さが見えにくく、お金をかけない会社もあります。

    大人向けの詳しい説明

    セキュリティは売上を生まない費用と見られやすく、中小企業では担当者が他業務と兼任することも多い。予算の制約が報酬の上昇を抑える。

2050年の3つのシナリオ

2050年編集部の見立て

未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。

  1. 法律と取引条件で対策が必須になる

    条件重要インフラだけでなく、取引先や委託先にも一定の対策や報告が求められ、発注の条件として定着する。

    起きそうなこと中小企業を含めて担当者や外部の専門家への需要が広がり、経験者の報酬は上向く可能性がある。

  2. 監視の自動化で一次対応の担い手が減る

    条件警告の切り分けや既知の弱点の検査を道具が担い、監視センターの交代勤務の人数が減る。

    起きそうなこと高度な分析や判断を担う人は評価される一方、経験の浅い人が入る入口が狭まり、職場内の差が広がる。

  3. 攻撃側も自動化し追いかけ合いが続く

    条件AIを使った攻撃が増え、守る側も道具を更新し続けなければならない状態が続く。

    起きそうなこと対応できる人の不足が続けば報酬は保たれやすいが、深夜対応や緊張の多い働き方の負担が大きくなる。

働き方と暮らし

2050年編集部の見立て

人手は足りる? 余る?

工場の設備、病院の電子カルテ、自治体の窓口まで、ネットワークにつながる仕組みは増え続けている。job tagでも、サイバー攻撃の増加を背景に仕事と就業者が増えていると紹介されている。取引先を経由した攻撃が上位の脅威とされるように、大企業だけでなく、つながる中小企業も守る対象になってきた。

一方で、警告の切り分けや既知の弱点の検査は自動化が進み、監視センターで一次対応にあたる人数は減る可能性がある。必要とされる中心は、道具の判定を確かめ、業務を止めるかを決め、組織のルールをつくる人へ移っていくだろう。全体としてはやや増える方向を中心に考える。

働き方

働く場所は、脆弱性診断を専門に行う会社、企業の通信を代わりに見張る監視サービス会社、一般企業や自治体の情報システム部門などに分かれる。診断の仕事は2〜3人のチームで、数日から1か月ほどかけて一つのシステムを調べることが多い。正社員が多いが、フリーランスや請負で加わる人もいる。

監視センターは24時間動いているため、交代制の夜勤がある職場もある。攻撃や感染が起きると、時間帯を問わず呼び出されて対応にあたることがある。攻撃の手口や技術の情報は英語で出ることが多く、新しい弱点が公表されるたびに調べる。休日に勉強会や競技形式の大会に参加して腕を磨く人も多い。

この仕事に近づくには

今

進路と資格

  1. 高専・大学・専門学校で情報を学ぶ決まった入職ルートはなく、情報系の学科でネットワーク、OS、プログラミングを学ぶ人が多い。文系の出身者や、システム開発・運用の経験者が転職してくる例もある。
  2. 情報処理技術者試験から情報処理安全確保支援士へ基本情報技術者試験などで基礎を固め、国家試験の情報処理安全確保支援士試験に合格して登録すると「登録セキスペ」を名乗れる。登録後は毎年の講習受講が義務で、3年ごとに更新する。
  3. セキュリティ・キャンプや現場で経験を積むIPAなどが行うセキュリティ・キャンプには、13〜22歳の全国大会や15歳以下のジュニアがある。就職後は自動検査の担当から始め、手動の診断を任されるまで3〜5年ほどかかるとされる。

今から伸ばしたい力

  • ネットワークとOSが動く仕組みの理解
  • 大量の記録から普段と違う動きを見つける力
  • 英語の技術情報や警告を読み解く力
  • 攻撃の方法を知っても悪用しない倫理観
  • 技術を知らない人に危険と対策を説明する力

出典と前提

最終確認日
2026年10月30日

出典

予測の前提

  • 2050年も企業や行政の業務はネットワークにつながった仕組みに大きく依存する。
  • 攻撃と防御の双方で自動化が進み、どちらか一方だけが有利になる状態は長く続かない。
  • システムを止めるかどうかなど影響の大きい判断には、人の責任が求められ続ける。

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ラベルの意味や予測の限界は「予測の読み方」で説明しています。