公認心理師
こうにんしんりし
病院、学校、企業、福祉施設などで、心の悩みを抱える人の心理状態を見立て、面接や助言で支える国家資格の専門職。家族や教員への助言、心の健康教育も担う。

はじめに
気持ちが落ちこんだり、学校や仕事に行くのがつらくなったりした人の話をじっくり聞き、どうしたら少し楽になれるかを一緒に考える仕事です。病院や学校、会社など、いろいろな場所で働きます。聞いた話はひみつとして守り、必要なときは医師や先生とも力を合わせます。
2050年の見通し
2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。
- 収入
- 職場のメンタルヘルス対策の義務化や心理支援の広がりは、常勤の職を増やす方向に働く。一方で、病院の報酬は診療報酬、学校の相談は自治体の予算で決まり、資格者も毎年増えるため、需要の増加が実質賃金の上昇に直結するとは言いにくく、中心は横ばいと見立てる。
- 需要
- ストレスチェックの対象が2028年4月から全事業場に広がり、教育・福祉・司法の各分野でも心理支援の場が増えてきた。軽い相談の一部はアプリやオンラインサービスが受け持つ可能性があるが、危機対応や多職種連携を担う心理師の必要性は今より高まると考える。
- 人による差
- 人による差が広がる
今の公認心理師の仕事
- 心理面接(カウンセリング)相談者の話を聴き、悩みを整理して対処の工夫を一緒に考える。認知行動療法など、相談内容に合った方法を選んで面接を重ねる。
- 心理検査とアセスメント(見立て)知能検査や性格検査、質問紙などを実施・解釈し、面接での様子と合わせて困りごとの背景や支援の方向を見立てる。
- 家族・教員・上司へのコンサルテーション本人を支える周りの人に、接し方や学校・職場の環境の調整について助言する。本人の了解を得た範囲で情報を共有する。
- 主治医・多職種との連携と面接記録の管理主治医がいる場合はその指示を受け、看護師、精神保健福祉士、産業医などと方針を共有する。面接記録を作り、外にもれないよう管理する。
- 心の健康教育とストレス対策研修学校での授業や職場の研修、ストレスチェック後の相談体制づくりなど、心の不調を予防するための教育や情報提供を行う。
2050年、仕事はどう分担される?
業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。
AI・ロボットが中心
- 面接の録音から記録の下書きを作る 確からしさ:中 音声の文字起こしと要約の技術は医療の記録で使われ始めており、下書きづくりは自動化しやすい。ただし録音してよいかの同意確認と、何を記録に残さないかの判断は心理師が担う。
- 質問紙検査の採点と結果の整理 確からしさ:高 質問紙の採点や得点の換算は今もソフトウェアで行われることが多い。結果をどう解釈し、本人にどう伝えるかは面接の様子と合わせて人が考える。
AIと協働
- 危機の見極めと緊急時の連携 確からしさ:中 言葉の変化や受診歴から注意を促す仕組みは広がる可能性がある。だが秘密保持より安全を優先して家族や医療機関に連絡するかの判断は、本人との話し合いを含めて心理師が責任を持つ。
- セルフケアアプリの選択と経過の見守り 確からしさ:中 認知行動療法を土台にしたアプリやオンライン教材は増えている。どの人に合うかを選び、経過を確かめ、人による面接へ切り替える時期を決める役割が心理師に生まれると見立てる。
人が中心
- 面接での関係づくりと心理的な介入 確からしさ:高 支援の効果は相談者との信頼関係に大きく左右される。沈黙や表情の変化をくみ取り、その場で問いかけを変える対話は、道具に任せにくい中心の仕事である。
2050年の一日
2050年、公認心理師の一日(架空)
ブラインド越しの光が、床に細い縞をつくっている。防音の壁に囲まれた小さな部屋には、低いテーブルと二脚のいす、ティッシュの箱だけ。物流会社の本社にある相談室で、公認心理師の真帆は昼休み明けの面談に備えていた。
端末には、午前の面談記録の下書きが届いている。話した言葉を文字にして要点をまとめる道具で、使うのは相談者が同意したときだけだ。午前の相談者は「記録は要点だけにしてほしい」と言っていた。真帆は家族の病気にふれた部分を消し、約束した範囲に書き直す。会社に伝わるのは、本人が了承した勤務上の配慮だけだ。
午後1時、画面の向こうに地方の倉庫で働く20代の男性が現れた。夜勤明けで、声がかすれている。要約の道具を使ってよいか尋ねると、彼は少し迷って首を横に振った。真帆は記録機能を切り、手元のノートに短く書きとめる。眠れない日が続き、休みの日も布団から出られない、と彼が口にしたのは、面談の終わり近くだった。
秘密を守ることと、体と心を守ること。真帆は彼に、産業医と一緒に支えたいこと、その理由をていねいに伝えた。長い沈黙のあと、彼は「それなら」とうなずいた。真帆はその日のうちに産業医と時間を合わせ、上司には夜勤を外す必要があることだけを伝える段取りを組む。夕方、部屋の明かりを落とす前に、真帆は彼の次の面談の予約をもう一度確かめた。
収入
平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。
今の年収
約454万円(年収・平均値)
- job tag「カウンセラー(医療福祉分野)」の全国年収454.2万円を採用した。公認心理師はこの職業の別名として掲載されている。
- 心理職は非常勤で働く人が多く、病院、スクールカウンセラー、企業の相談室などを時給・日給で掛け持ちする場合は、一つの勤務先の年収では実際の収入を表しにくい。
- 児童相談所の児童心理司や少年鑑別所の法務技官(心理)など、行政機関で公務員として働く心理職は、この統計の主な対象ではない。
- 開業してカウンセリングを行う人の事業所得は含まない。
- job tagの求人賃金(月額)は調査の対象と方法が異なるため、この年収と単純に比べられない。
収入を動かすもの
AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。
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診療報酬と自治体の予算どちらにも動きうる
病院や学校が心理師にいくら払えるかは、国や自治体の決まりで変わります。
大人向けの詳しい説明
病院の心理支援は診療報酬で評価される項目が限られ、スクールカウンセラーの時給や勤務日数は自治体の予算で決まる。相談の必要性が高くても、価格を自由に上げられる仕組みではない。
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職場のメンタルヘルス対策の広がり上がる方向
会社で働く人の心の健康を守る決まりが広がり、相談の場が増えるかもしれません。
大人向けの詳しい説明
2025年の労働安全衛生法の改正で、ストレスチェックは2028年4月から従業員50人未満の事業場でも義務になる。所定の研修を修めた公認心理師は実施者になれるため、企業や外部の相談機関での仕事が増える可能性がある。
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資格を持つ人の増え方どちらにも動きうる
資格を持つ人が増えると、仕事を選びやすくなる一方、給料は上がりにくくなることもあります。
大人向けの詳しい説明
国家試験は2018年に始まり、毎年合格者が加わっている。担い手が増えれば地域の不足は和らぐが、求人に対して応募が多い職場では待遇改善の圧力が弱まる。
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デジタル相談と記録の自動化どちらにも動きうる
アプリやオンラインで相談しやすくなり、心理師の役割も変わっていきます。
大人向けの詳しい説明
オンライン面接や記録支援で一人が対応できる件数は増え得るが、その分が収入増につながるか、相談料の値下がりになるかは、報酬の決まり方と雇用形態による。
2050年の3つのシナリオ
未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。
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心理支援が制度の中で評価される
条件診療報酬や学校・職場のメンタルヘルス対策の中で、公認心理師が関わることへの報酬や配置の基準が広がり、常勤で雇う職場が増える。
起きそうなこと非常勤の掛け持ちから常勤への移行が進めば、実質の年収が上向く可能性がある。財源をどこまで確保できるかが条件になる。
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非常勤の掛け持ちが中心のまま
条件相談の需要は増えるが、スクールカウンセラーのように時給制で年度ごとに任用される働き方が多いまま続く。
起きそうなこと仕事の量があっても年収は伸びにくく、勤務日数の増減で収入が不安定になりやすい。
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アプリやオンライン相談と分担する
条件軽い悩みはセルフケアアプリや低価格のオンライン相談が受け持ち、心理師は重い事例、危機対応、ほかの相談員への助言に集中する。
起きそうなこと高い専門性を持つ人は評価されやすい一方、一般的な相談の単価は下がり得るため、心理師どうしの収入差が広がる可能性がある。
働き方と暮らし
人手は足りる? 余る?
公認心理師は2017年に施行された公認心理師法にもとづく国家資格で、保健医療、福祉、教育、司法・犯罪、産業・労働の各分野で働く。不登校やいじめへの対応、児童虐待への支援、休職者の職場復帰、高齢者や家族の支援など、相談の場は分野をまたいで広がってきた。職場では2028年4月からストレスチェックがすべての事業場で義務になり、相談体制を外部に求める中小企業も増えると考えられる。
編集部の見立てでは、軽い悩みへの情報提供やセルフケアの一部はアプリやオンラインサービスが担うようになる一方、危機の見極め、複雑な家庭や職場の事情をふまえた支援、関係機関との連携には心理師が必要とされ続ける。ただし相談の必要性がそのまま常勤の求人になるとは限らず、どれだけの職が生まれるかは診療報酬や自治体・企業の予算に左右される。
働き方
働く場所は、精神科病院や心療内科のクリニック、小中学校・高校のスクールカウンセラー、大学の学生相談室、児童相談所や精神保健福祉センター、企業の相談室や外部の相談機関、刑務所や少年鑑別所などさまざまだ。病院や企業の相談室は平日の日中勤務が多いが、働く人の相談に合わせて夕方や土曜日に面接を行う職場もある。
常勤の求人は限られ、週に数日ずつ複数の職場を掛け持ちする人も多い。面接は一回50分前後で、その前後に記録を書き、検査の結果をまとめ、関係者と打ち合わせる。重い話を聴き続ける仕事のため、経験を積んだ心理師から指導(スーパービジョン)を受け、自分の心身の疲れを整えることも仕事の一部になっている。オンライン面接の広がりで、地方に住みながら都市部の相談を受ける働き方も出てきた。
この仕事に近づくには
進路と資格
- 大学で心理学の指定科目を学ぶ(4年)公認心理師法で定められた科目(実習を含む)を置く大学の心理学部・学科などで学び、卒業する。
- 大学院(2年)か、認定施設での実務経験大学院で必要な科目と実習を修めて修了するか、国が認めた施設で2年以上の実務経験を積むと、国家試験の受験資格を得る。実務経験の受け入れ施設は少なく、大学院へ進む人が多い。
- 公認心理師試験に合格して登録する国家試験に合格し、登録を受けると公認心理師を名乗れる。資格のない人はこの名称を使えない。指定大学院の修了で受験できる民間資格の臨床心理士をあわせて持つ人も多い。
今から伸ばしたい力
- 相手を評価せずに話を聴き続け、言葉の裏にある気持ちをくみ取る力
- 心理学の理論や統計を学び、検査の結果を正しく読み取る力
- 秘密を守る範囲と、命や安全のために伝えるべき場面を見分ける判断力
- 医師、教員、上司など立場の違う人に、専門用語を使わずに伝える力
- 自分の疲れに気づき、指導を受けながら学び続ける力
関連する職業
出典と前提
出典
- カウンセラー(医療福祉分野)|職業詳細(job tag)(厚生労働省)、2026年10月30日取得 仕事内容、就業場所、なり方、非常勤の多さ、2025年の全国年収を参照
- 公認心理師法(平成二十七年法律第六十八号)(衆議院(制定法律))、2026年10月30日取得 業務の定義(第2条)、受験資格(第7条)、秘密保持義務(第41条)、主治医の指示と連携(第42条)、名称の使用制限(第44条)を参照
- 公認心理師(厚生労働省)、2026年10月30日取得 資格制度の概要、受験資格の取得方法、指定試験機関を参照
- ストレスチェック(厚生労働省 徳島労働局)、2026年10月30日取得 従業員50人未満の事業場へのストレスチェック義務化(2028年4月1日施行)を参照
予測の前提
- 2050年も公認心理師は国家資格として続き、秘密保持と主治医との連携の義務が保たれる。
- セルフケアアプリやオンライン相談は広がるが、危機対応や複雑な事例は人が担う。
- 心理職の収入は、診療報酬、自治体と企業の予算、常勤と非常勤の比率に大きく左右される。
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