起業家
きぎょうか
社会や暮らしの困りごとを解決する商品・サービスを考え、会社や個人事業を立ち上げて運営する仕事。顧客を探し、資金を集め、仕入れや採用、売上と支払いの管理まで自分で決め、事業を続ける責任を負う。

はじめに
「こんなものがあったら便利だな」というアイデアを、お店や会社の仕事に変える人です。買ってくれる人を探したり、材料を仕入れたり、一緒に働く人にお給料を払ったりします。売れたお金が全部もうけになるわけではありません。うまくいかないときは、やり方を変えるか、続けるかも自分で考えます。
2050年の見通し
2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。
- 収入
- AIで試作費を下げても新規参入による価格競争と資金調達コストが利益を圧迫する。事業所得は売上、設備投資、創業者が受け取る報酬によって大きく分かれるため中心は横ばい、幅は広く置く。
- 需要
- 高齢化や地域の供給不足が新しい事業機会になる一方、人口減少で市場が縮む場所もある。起業の手間が減ることだけで継続できる事業者数の増加は保証されない。
- 人による差
- 人による差が広がる
今の起業家の仕事
- 顧客の困りごとの聞き取り利用者を訪問し、どの場面で時間や費用がかかるのかを聞き、商品化する課題を選ぶ。
- 試作品と価格の検証小規模な試験販売で購入率と原価を確かめ、売れる価格と利益が残る価格の差を調べる。
- 資金繰り表の作成売掛金の入金日、仕入代金、家賃、給与、税金の支払日を並べ、現金が不足する月を見つける。
- 仕入先・販売先との契約納期、返品、支払い条件、品質責任を書面で取り決め、事業の損失を抑える。
- 人員採用と業務設計注文処理や顧客対応の担当を決め、採用する人数と給与を売上計画に合わせて調整する。
2050年、仕事はどう分担される?
業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。
AI・ロボットが中心
- 請求書照合と資金繰り警告 確からしさ:中 入出金データの照合は自動化しやすいが、現金不足を解消する借入や発注変更は契約上の判断が要る。
AIと協働
- 市場調査の集計と需要仮説の作成 確からしさ:高 大量の顧客意見をAIが分類しても、回答者に偏りがないか、実際に買ってくれるかを創業者が確かめる必要がある。
- 試作品の仕様決定と販売テスト 確からしさ:中 設計候補を高速に比較できても、利用者の手触りや購入行動、保守費を確かめる試験は残る。
人が中心
- 金融機関との融資条件交渉 確からしさ:中 返済計画の計算は補助できるが、保証や事業継続の責任を引き受けるのは人間の当事者だ。
- 新市場への進出・撤退判断 確からしさ:中 収益予測は機械が支援しても、雇用や取引先への影響を背負って事業を変える判断は創業者が行う。
2050年の一日
2050年、起業家の一日(架空)
午後二時、地域の自転車整備店を回っていた三十代の航平は、売れ残った交換部品の箱をひとつずつ開けていた。彼の会社は、複数の店に眠る規格の合う部品を集め、修理したい人と必要な店へ届ける小さな仲介サービスだ。端末にはAIが作った在庫地図が映る。しかし、ねじの摩耗や保管状態は写真だけでは判定しにくい。航平は整備士に質問し、危険な部品を再販売しない基準を確認した。
午後三時半、修理店から「明日の納品では間に合わない」という連絡が入る。自動配送網は動いているが、この部品は現物を確かめてから出したい。航平は配送を急がせるより、近くの別の店から同規格の在庫を回す案を選んだ。注文を逃す損失と、品質不良で信用を失う損失を並べ、取引先には理由を自分の言葉で説明する。
夕方、経理画面が来月の資金不足を知らせた。売上は増えているのに、買い手からの入金は翌々月、部品を引き取る代金は来週だ。航平は数字を見て「黒字なら現金もあるはず」という思い込みを捨て、仕入量を抑えることにした。融資を増やす前に、修理店と支払日を相談し、スタッフの給与を守る順番を決める。
夜、事業を始めた理由を尋ねる若い技術者との面談が終わる。航平が見せたのは華やかな成功予測ではなく、返品の記録と修理できずに捨てられた部品の写真だった。機械は次の売れ筋を提案できる。それでも、誰の不便を減らし、どのリスクを自分が引き受けるのかは、明日も彼が決める。
収入
平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。
今の年収
約635万円(年収・公的な資料から計算した目安)
- job tag「起業、創業」には職業別の全国年収データがないため、国税庁の事業所得者の平均所得を対象限定の参考値とした。
- 申告所得税標本調査は税額のある申告納税者の調査で、赤字・無収入・納税額ゼロの創業者を含む全創業者の平均ではない。
- 既に長く営業している個人事業者も含み、新規創業者の初年度収入や会社社長の役員報酬を示さない。
- 売上から経費を引いた所得の統計であり、法人利益・配当・株式売却益・納税後手取りとは区別する。
収入を動かすもの
AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。
-
少額での試作・開業上がる方向
道具が安くなれば、小さく商売を始めやすくなります。
大人向けの詳しい説明
AIや小型設備で試作品と販売窓口を用意する費用が下がる場合がある。ただし低参入障壁は競争者も増やす。
-
創業時の資金繰り下がる方向
売れていても、材料費やお給料を先に払うお金が足りなくなることがあります。
大人向けの詳しい説明
売掛金の入金遅れ、保証、借入金利、在庫保有が資金不足を生む。会計上の利益と現金残高の違いが大きい。
-
地方の需要と担い手不足どちらにも動きうる
お客さんが減る地域でも、新しい助け合いの仕事が見つかることがあります。
大人向けの詳しい説明
人口減少は商圏を縮める一方、交通、住まい、保守の供給不足から起業機会が生じる地域もある。
-
販売網と顧客データの集中どちらにも動きうる
大きなネットのお店に頼ると便利ですが、手数料が変わると困ることもあります。
大人向けの詳しい説明
プラットフォーム経由の集客は初期費用を減らす一方、手数料や利用規約の変更が創業者の利益率を左右する。
2050年の3つのシナリオ
未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。
-
地域の課題解決で継続受注
条件修理、介護周辺、地域物流などで、顧客が継続料金を払う小規模事業が定着する。
起きそうなこと創業者の現金収入が安定しやすくなるが、設備の更新や人件費で利益がすべて残るわけではない。
-
新規参入と自動化で価格競争
条件試作・出店が安価になり、似た商品を売る事業者が増えて価格が下がる。
起きそうなこと開業は容易になる一方、固定費や広告費を回収できず、十分な報酬を取れない事業者が増える可能性がある。
-
資金調達と需要の地域差が拡大
条件人口が減る地域では買い手と融資が減るが、需要の集まる都市や輸出市場で成長する事業もある。
起きそうなこと成功と撤退の差が広がり、同じ起業家でも暮らしに使える所得は大きく異なる。
働き方と暮らし
人手は足りる? 余る?
新たな事業を起こす人への需要は、社会の問題と既存企業の供給力で変わる。高齢化に伴う修理、移動、地域の生活支援では、事業として解決できる隙間が生まれ得る。反対に、顧客が少ない地域では新しい店や会社の採算が厳しくなる。
AIで開業手続きや商品開発の試行は速くなっても、顧客が購入するとは限らない。開業数の増加と、創業後に収入を得て長く続けられる人数の増加は別だ。需要の見通しは小幅増を中心とするが、廃業・事業転換も同時に起こる。
働き方
個人事業主、株式会社の代表、共同創業者など働き方は多様だ。自宅や共同オフィスから始める人もいれば、工房・店舗・工場を構える人もいる。経営者は雇用契約で定められた勤務時間とは違い、資金調達や取引先への連絡を自分で組み立てる。
創業時は販売だけでなく、請求・採用・苦情対応・納税まで一人で担当することもある。従業員を雇うなら賃金支払いや労働条件を守る責任が加わる。休み方を選べる自由と、売上がない月の所得保障がない不安は表裏一体だ。
この仕事に近づくには
進路と資格
- 学校で学ぶ・現場を見る高校の商業・情報科目、大学や専門学校の経営・会計、あるいは実際の店舗で、原価計算と顧客対応の基礎を学ぶ。起業自体に必須の学位はない。
- 小さく試す・計画を立てる対象顧客への聞き取り、試作品の販売、月次資金繰り表づくりを経験し、必要に応じて日本政策金融公庫などの創業相談や資金調達の制度を調べる。
- 法的な手続きと継続運営個人事業なら税務署への開業届、会社なら定款作成・設立登記など事業形態に応じた手続きを行い、飲食業など業種別の許可も別に確認する。
今から伸ばしたい力
- 顧客の話から支払ってでも解決したい問題を見つける力
- 原価と粗利益、売掛金と手元資金を区別する会計力
- 小規模な試験販売を設計し撤退条件を決める力
- 仕入先と販売先の契約・納期・返品条件を交渉する力
- 雇用者や顧客に損失と改善方針を誠実に説明する力
関連する職業
-
専門・ビジネス 経営コンサルタント 企業の経営者や従業員から話を聞き、売上・原価・在庫・人員配置などのデータと現場の様子を調べ、利益を出せる事業の仕組みを提案し、実行まで支援する仕事。戦略の資料を作るだけでなく、現場に改善が根づいたか確認する。
2050年の収入ほぼ変わらない -
専門・ビジネス 中小企業診断士 中小企業の財務諸表、売上、製造工程、取引条件などを調べ、経営課題を見つけて改善策の実行を支える専門家。資金繰りや価格設定、事業承継などについて経営者に助言する。
2050年の収入ほぼ変わらない -
専門・ビジネス 経理 会社のお金の出入りを記帳し、請求書・領収書を照らし合わせ、月次・年次の決算資料を作る。取引の内容と会計記録が一致するか確かめ、会社のお金の状態を分かる形にする仕事だ。
2050年の収入少し下がる
出典と前提
出典
- 起業、創業 - 職業詳細(厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag))、2026年10月31日取得 創業者の業務、資金繰り、進路、職業別年収データがない点の確認
- 令和6年分 申告所得税標本調査 調査結果の概要 第22表(平均所得金額)(国税庁)、2026年10月31日取得 事業所得者の申告納税者に限定された2024年平均所得6,354千円の参考値
予測の前提
- 2050年も個人や小規模会社が創業して商品を販売できる法制度と市場が存続する。
- AIの試作能力が上がっても、資金調達・顧客獲得・返済の制約は企業ごとに異なる。
- 人口減少と生活サービスの不足は地域で違い、全地域で起業需要が同じ方向には動かない。
このページの更新
- 初稿を公開
ラベルの意味や予測の限界は「予測の読み方」で説明しています。