ものづくり・研究

宇宙飛行士

うちゅうひこうし

宇宙船や有人宇宙施設に乗り、科学実験、機器の点検・修理、船内システムの運用を担う専門職。地上では長期間の訓練や実験手順の確認、各国の管制チームとの連携を重ね、宇宙での任務を準備する。

訓練室で、女性の宇宙飛行士が操作レバーを握り、画面のロボットアームを見ながら物をつかむ手順を練習している。
ほかの職業とくらべる

はじめに

宇宙へ行って、実験や機械の点検をする仕事です。地球では分かりにくい体の変化や物の動きも調べます。宇宙では水や空気が限られているので、仲間と約束した手順を守ることが大切です。地上で訓練を重ね、外国の人たちとも協力して、一つの任務をやりとげます。

2050年の見通し

2050年編集部の見立て

2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。

今の年収約949万円参考値:公的な資料から計算した目安
2050年(物価の上昇を除いて)ほぼ変わらない幅:下がる〜上がる
収入
宇宙飛行士は少数の機関に雇われる職業で、希少性だけでは実質賃金を推計できない。国際計画の予算、宇宙機関の給与制度、民間有人活動の雇用条件によって収入は大きく変わる。
需要
有人施設の長期運用や月周辺での活動が実現すれば選抜需要は増えるが、2021年度のJAXA募集は若干名に限られた。ロボット実験の拡大や国際計画の延期も想定され、中心見通しは横ばいとする。
人による差
人による差は今と同じくらい

ほかの職業の見通しを見る

今の宇宙飛行士の仕事

今
  • 宇宙実験の試料交換と記録微小重力の実験装置で試料を扱い、地上の研究者と手順や観察結果を共有する。
  • 生命維持装置の点検船内の空気、水、温度などを保つ装置の表示を確認し、定められた保守作業を行う。
  • 補給船と宇宙機の運用物資の受け入れに備えて手順を確認し、管制室の指示に合わせて機器を操作する。
  • 船外活動・ロボットアームの訓練施設の保守を想定し、船外活動の安全手順やロボットアームの操作を繰り返し練習する。
  • 体力維持と健康データの記録微小重力による筋力や骨への影響を抑えるため運動し、地上の医療チームと健康状態を共有する。

2050年、仕事はどう分担される?

2050年編集部の見立て

業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。

AI・ロボットが中心

  • 船内機器の定型監視 確からしさ:中 多数の計器から異常の兆候を探す処理は自動化しやすいが、故障した計器の値が正しいかは別の方法で検証する必要がある。

AIと協働

  • 無人機による船外点検 確からしさ:中 小型ロボットが外壁や太陽電池を撮影できても、修理する順序と有人作業の安全性は管制側と確かめなければならない。
  • 微小重力の実験操作 確からしさ:中 自動実験装置で多数の測定をできるが、試料の取り扱いが変わる場面では乗員の手先の操作と研究者の判断が必要になる。

人が中心

  • 宇宙船の緊急手順の実施 確からしさ:中 安全装置と自動誘導は進歩しても、限られた通信・時間の中で乗員が確認して行動する役割は残ると考えられる。
  • 国際クルーと地上管制の共同判断 確からしさ:高 国や担当分野の異なるチームが任務の変更を理解して合意することには、現場の状況を説明できる人の責任が伴う。

2050年の一日

2050年架空の一日

2050年、宇宙飛行士の一日(架空)

地球の青い縁が窓の向こうに見えたとき、40代の宇宙飛行士・茜は足を床の固定具に留めた。ここは2050年に運用されていると想定した有人実験施設だ。今朝の担当は、水を再利用する装置の点検。茜は画面に並ぶ温度と圧力の記録を読み、地上の管制室と声を合わせて弁の位置を確かめる。水の循環は乗員の生活に関わる。小さな表示の変化でも、勝手な操作はしない。

次は植物の根の成長を調べる実験だ。浮かんでしまう透明な試料容器を固定し、予定した順番で写真を撮る。画像解析装置は成長の差を示したが、茜は容器の内側に水滴が付いているのを見つけた。そのままでは葉の形を正しく測れない。地上の研究者へ映像を送り、撮り直す角度と時刻を相談する。宇宙で同じ試料を簡単に取り替えることはできない。

昼食のあとには、翌週の補給船を迎えるための手順確認がある。別の国のクルーと役割を分け、連結部の表示を模擬装置で確かめた。地上ではロボットが外壁を点検してくれているが、故障が見つかった場合に誰がどの作業を引き受けるかは先に決めておく。訓練で繰り返してきた言葉の短さが、ここでは安心につながる。

就寝前、茜は運動装置で体を動かし、今日の実験記録に一行を書き足す。『画像の差は結露の影響を再確認』。地球から遠い場所でも、発見を急いで決めつけないことが大切だ。窓の外には夜の海岸線が光っている。自分が地上の研究者たちの仕事の続きを預かっているのだと、茜は感じた。

収入

平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。

今の年収

今参考値

約949万円(年収・公的な資料から計算した目安)

資料
2025年度 役職員の報酬・給与等について(職種別支給状況、p.6)
対象
JAXAの常勤職員1465人全体(事務・技術、研究、教育などを含む)。宇宙飛行士の平均給与ではない。
税・賞与
税・社会保険料を引く前。賞与を含む公表年間給与額。時間外手当は公表額の集計方法に従う
計算方法
宇宙飛行士だけの公表平均年収がないため、所属先の一例であるJAXAが公表した2025年度常勤職員全体(1465人)の平均年間給与9,494千円を、近接する組織の参考値として円に換算した。
  • JAXA『2025年度役職員の報酬・給与等』の常勤職員全体における平均年間給与総額9,494千円(949.4万円)を参考にした。宇宙飛行士個人・宇宙飛行士群の平均ではない。
  • 事務・技術職、研究職など多数の職種を含み、宇宙飛行士の選抜、訓練期間、実際の宇宙滞在に伴う給与の差は読み取れない。
  • 公表資料の人数1465人と平均年齢46.5歳は、宇宙飛行士の人数や平均年齢を表さない。
  • 日本と海外の宇宙機関では雇用契約が異なり、この参考値を全世界の宇宙飛行士へ当てはめることはできない。

収入を動かすもの

2050年編集部の見立て

AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。

  • 国際有人計画の予算どちらにも動きうる

    宇宙へ人を送る計画が続くかどうかで、仕事の数が変わります。

    大人向けの詳しい説明

    宇宙飛行士は科学・技術面で価値があっても少人数採用の専門職であり、公的予算と国際協定が需要を強く左右する。

  • 船内機器と無人ロボットの自動化下がる方向

    ロボットが宇宙の機械を点検できれば、人が行く必要のある作業は減ります。

    大人向けの詳しい説明

    地上遠隔操作と自動装置が多くの実験・点検を代替すれば、船外作業に必要な乗員数は抑えられる。

  • 有人施設での共同実験上がる方向

    人が操作しないと難しい実験が増えると、宇宙飛行士の役割も増えます。

    大人向けの詳しい説明

    試料交換や微小重力下の手作業を必要とする実験への投資が進めば、搭乗員の専門性が評価される。

  • 医療適性と長期訓練どちらにも動きうる

    宇宙で暮らすための健康管理と訓練には長い時間が必要です。

    大人向けの詳しい説明

    選抜・身体検査・国際訓練は人材供給を制限する一方、少数の人が高給与を得る保証にはならない。

2050年の3つのシナリオ

2050年編集部の見立て

未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。

  1. 有人探査の拠点が増える

    条件長期にわたる国際協力と予算が維持され、地球周回軌道以外の有人活動も継続する。

    起きそうなこと訓練と宇宙実験を担う候補者の採用枠が増える可能性はあるが、任務の数は限られる。

  2. 無人探査が中心になる

    条件ロボットや自動実験装置が高度化し、科学実験の多くを有人滞在なしで実施する。

    起きそうなこと宇宙へ行く人の人数は抑えられ、地上の運用・研究に配置される割合が大きくなる。

  3. 国際計画の延期・縮小

    条件打ち上げ費用や安全審査、参加国の財政事情で有人計画が延期される。

    起きそうなこと選抜頻度が下がり、勤務先によって昇進・給与体系や任務の継続性が異なる。

働き方と暮らし

2050年編集部の見立て

人手は足りる? 余る?

JAXAは2021年度の募集で国際宇宙ステーションと将来の月周辺活動を視野に入れ、宇宙飛行士候補者を若干名募集した。有人活動を続けるなら、実験操作、生命維持装置の運用、国際クルーとの連携を担う人は必要になる。

一方、宇宙飛行士は工場の技術者のように大量採用される職業ではない。自動実験や遠隔ロボットが進めば搭乗数が増えない可能性もある。2050年にどの基地や宇宙船が運用されるかは未確定で、需要の予測幅を広く取る。

働き方

宇宙での活動より、地上での訓練、研究者との打ち合わせ、実験準備、健康管理に費やす期間が長い。候補者は国内外で施設の操作や宇宙機のシステムを学び、選ばれた任務に向けて長期間準備する。

宇宙滞在中は国際クルーで役割を分担し、地上管制室との交信に合わせて勤務する。実験や保守の予定、運動、睡眠を厳密に管理する。雇用契約は宇宙機関や任務によって異なり、日本の募集条件を将来の全活動に当てはめることはできない。

この仕事に近づくには

今

進路と資格

  1. 学校で基礎を身に付ける理科、数学、英語を学び、医療、工学、研究、操縦など興味のある分野を深める。宇宙飛行士のためだけに特定の学部へ進む必要があるとは限らない。
  2. 職業経験と募集条件を確認するJAXAの2021年度募集では2022年3月末時点で3年以上の実務経験(修士号は1年、博士号は3年とみなす)が必要だった。国籍・身体条件なども当時の募集要項で定められたため、次回の実際の条件を確認する。
  3. 候補者選抜と国際訓練募集があれば審査や医学検査、英語などの選抜を受け、採用後は宇宙機器や実験手順、国際的な協働の訓練を受ける。宇宙飛行士専用の国家資格が一般に交付される仕組みではない。

今から伸ばしたい力

  • 無重力に近い環境を想定して機器の操作手順を順序どおり実行する力
  • 生命維持装置や電気・通信の仕組みを理解し、異常な計器表示を見極める力
  • 異なる言語の仲間と短く正確に連絡を取り、確認事項を伝える力
  • 限られた資材と時間の中で、実験の観察結果を誇張せず記録する力
  • 長い訓練に取り組める体力と、集団生活で相手を尊重する力

出典と前提

最終確認日
2026年11月1日

出典

予測の前提

  • 2050年にも地球周回など何らかの有人宇宙活動が続く条件付きシナリオであり、特定の施設の完成は確定していない。
  • 無人ロボットと自動実験の能力は高まるが、有人活動の必要性を完全には決められないと仮定する。
  • 宇宙飛行士の採用規模と賃金制度は国際協力、国の予算、契約形態によって変わると仮定する。

このページの更新

  • 初稿を公開

ラベルの意味や予測の限界は「予測の読み方」で説明しています。