人口が減ると、仕事はどう変わる?

地方の町の通りを、高齢の人や働く世代の大人、子どもが行き交っている。小さな建物が並ぶ明るい通りで、世代の異なる人々が日常を過ごしている。

大人になるころ、日本で働く人は今より少なくなっているのでしょうか。もし働く人が減ったら、仕事を選びやすくなるのでしょうか。それとも、今より忙しくなるのでしょうか。

今わかっていること

日本では、すでに人口の減少が続いています。総務省の「人口推計」(2025年10月1日現在の確定値、内閣府『令和8年版高齢社会白書』掲載)によると、日本の総人口は約1億2,322万人でした。15〜64歳の人口は約7,353万人、65歳以上は約3,622万人です。

15〜64歳は、統計で「生産年齢人口」と呼ばれる年齢の区切りです。ただし、この年齢の人が全員働いているわけではありません。学生や仕事をしていない人もいます。反対に、65歳を過ぎても働いている人はいます。「働く世代の人口」と「実際に働いている人数」は違う数字です。

人口が減る理由は一つではありません。生まれる子どもの数、亡くなる人の数、海外から日本へ来る人と日本から海外へ出る人の動きが重なって、人口が変化します。また、同じ日本でも、若者が集まる地域と人口減少が進む地域では状況が異なります。

働く人が足りないと、店の営業時間が短くなったり、配送に時間がかかったり、必要な工事をすぐに頼めなくなったりする可能性があります。一方、人が減れば、学校や新築住宅などを利用する人も減るかもしれません。すべての業界で仕事が同じように増えるわけではないのです。

2050年に向けた見通し

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」では、2050年の総人口は約1億469万人、15〜64歳の人口は約5,540万人と推計されています。65歳以上の人口は約3,888万人という見通しです。これは、2020年の国勢調査を出発点にした「出生中位・死亡中位」の推計です。

年総人口15〜64歳人口65歳以上人口
2020年(推計の出発点)約1億2,615万人約7,509万人約3,603万人
2050年(推計)約1億469万人約5,540万人約3,888万人

この表の2020年の値も、同研究所の将来推計で使われた基準値です。先ほどの総務省の2025年の実績値とは、時点も資料も違います。

将来推計は、未来を言い当てた数字ではありません。これまでの動きをもとに、出生(子どもが生まれること)、死亡、国際人口移動(外国との間の人の出入り)について仮定を置き、その条件なら人口がどう動くかを計算したものです。出生率が想定より変わったり、長生きする人が増えたり、海外から来る人の数が変わったりすれば、結果も変わります。

大切なのは、2050年の働く世代が今より小さくなるという方向だけでなく、どこで、何をする人が必要になるかです。例えば厚生労働省は、第9期介護保険事業計画に基づき、2040年度に必要となる介護職員を約272万人と推計しています。これは各地域が見込む介護サービスの量をもとに集めた数字であり、2050年の確定人数ではありません。

見方が分かれていること

人手不足は、働く人にとって有利なのか

一つの見方は、人材が足りなければ会社が採用を増やし、賃金や働きやすさを改善するというものです。経験や資格を持つ人が、勤務先や働き方を選びやすくなる可能性があります。

別の見方もあります。会社や利用者がサービスの値上げを受け入れられなければ、売上を増やすことが難しい場合があります。介護のように公的な制度が価格に関わる分野もあります。人手不足がそのまま給料の増加につながるとは限りません。忙しさだけが増える心配もあります。

働く人を増やすか、少ない人数でできるようにするか

女性や高齢者を含め、働きたい人が働きやすい環境を整える考え方があります。海外から来て働く人の受け入れを広げる考え方もあります。多様な経験を持つ人が働ける一方、言葉や生活面の支援、労働条件の整備も必要です。

もう一つは、機械やAIを使って、同じ仕事を少ない人数でも進められるようにする考え方です。注文の受付や記録作成などを効率化できるかもしれません。ただし、道具を導入する費用がかかり、安全確認や人との相談などは残ります。

どれか一つだけが答えというわけではありません。地域や仕事によって、組み合わせが変わりそうです。

仕事への影響

介護・医療の仕事では、利用者の体調を知り、相談し、家族や地域と連絡する役割が重要になります。記録の入力や見守りの一部を機械が支えることは考えられますが、安心できる説明や急な変化への対応も欠かせません。医師の仕事も、検査結果を読むだけではありません。

運輸・物流の仕事では、荷物を運ぶだけでなく、配達する順番を調整したり、積み下ろしの負担を減らしたりする工夫が求められます。国土交通省は物流の人手と輸送能力の課題に対し、業務の効率化や取引の見直しを進めています。人が減っても、暮らしを支える物流が不要になるわけではありません。

建設・設備の仕事では、古い建物を直し、設備を点検し、安全を確かめる仕事が続く可能性があります。電気工事士なら、図面の確認や書類づくりはAIが手伝っても、現場によって違う配線を確かめる業務は重要です。一方、人口減少によって新築する建物の数や場所は変わるかもしれません。

教育や地域サービスの仕事も変化します。子どもが減る地域では、学校の規模や通学の仕組みを考え直す必要が出るでしょう。教師には、一人ひとりに合わせた学習支援や、家庭・地域との協力が求められるかもしれません。

同じ職業でも、書類作成、移動、接客、判断、安全確認など、複数の業務があります。人口減少や技術の進歩で変わるのは、職業の名前よりも、一日の仕事の中身なのかもしれません。

働く場所による違いもあります。大都市では人が集まっても、住まいや通勤にお金と時間がかかることがあります。人口の少ない地域では、身近なサービスを少人数で支える工夫が必要になるでしょう。どちらにも、地域の暮らしをよくする仕事があります。

これから職業を考えるときは、仕事を必要とする人がどれくらいいるかに加え、必要な技能、働く人の数、サービスの値段の決まり方を見てみてください。予測の読み方では、実際の統計と未来の見立てを区別する方法を紹介しています。

考えてみよう

  • あなたの住む地域で、働く人が減ったら困りそうな仕事は何ですか。逆に、利用する人が減りそうなサービスはありますか。
  • 機械に任せたい作業と、人にしてほしい作業を一つずつ挙げるなら、何でしょうか。
  • 将来仕事を選ぶとき、給料のほかに、働く時間や地域への役立ち方をどう考えたいですか。

出典