建設・設備 想像の仕事
月面基地エンジニア
げつめんきちえんじにあ
月の南極付近で、地中の氷から水や燃料を取り出す装置、居住モジュール、与圧ローバーを組み立て、細かい砂や寒暖差と戦いながら保守する仕事になるかもしれない。
はじめに
月の南のはしっこには、こおった水があるかもしれないと考えられています。この仕事は、月にある基地で、氷をほり出して飲み水やロケットの燃料に変える機械や、人が住む部屋、中で服をぬいで乗れる大きな車を組み立てたり、こわれないように直したりする仕事です。
今ある芽
研究や構想の段階で、実現には大きな条件があるものです。月面に人が長く滞在した例はまだなく、今は探査機や着陸機で月の水や地面を調べている段階だ。月へ人や荷物を運ぶ手段は限られ、費用もとても大きい。月の水が資源として使えるとわかり、定期的な輸送が実現すれば、基地を建てて保守する技術者が交代で働く職場が生まれる可能性がある。
- 日本の与圧ローバーで月面探査へ日本が月面を走る与圧ローバーを提供・運用し、日本人宇宙飛行士が月面に降りる機会を得る取り決めが日米で結ばれた。月面で乗り物を動かし続ける整備の仕事が必要になりそうだ。出典:盛山大臣がネルソンNASA長官と「与圧ローバによる月面探査の実施取決め」に署名 日本人宇宙飛行士に2回の月面着陸の機会(文部科学省)
- 月の南極の水を調べる探査機JAXAとインド宇宙研究機関が、月の南極の水を資源として使えるかを調べる探査機を開発している。水が使えるとわかれば、それを掘って変える設備の建設が次の段階になりそうだ。出典:月極域探査機(LUPEX)(JAXA)
- 民間による月への輸送日本の企業ispaceが、月へ荷物を運ぶ事業を目指して月面着陸に挑み続けている。輸送が商売として回り始めると、基地の資材や交換部品が届くようになるかもしれない。出典:HAKUTO-Rが月着陸に再挑戦 今回はローバーも搭載(Forbes JAPAN)
2050年、どんな仕事をしている?
- 氷採掘・水抽出装置の保守掘り出した土から氷を溶かして水を取り出す装置の、ヒーターやフィルターの詰まりを点検し、部品を交換する。
- 居住モジュールの気密点検人が暮らす区画の壁やつなぎ目から空気が漏れていないか、圧力の変化と検査機器で確かめる。
- 与圧ローバーの整備月面を走る車の車輪や電池、空調を点検し、遠出の前に走れる距離と予備の酸素を確認する。
- 月の砂(レゴリス)対策細かく角ばった砂が機械の継ぎ目や宇宙服に入りこまないよう、覆いや除去の道具を工夫して取りつける。
- 地球の技術チームとの修理計画通信で故障の映像とデータを送り、地球の設計者と相談して、手元の部品でできる直し方を決める。
2050年の一日
2050年、月面基地エンジニアの一日(架空)
ポンプの低いうなりが、いつもより半音高い。居住区の寝台で目を覚ました浩介は、その音で目覚ましより先に起き上がった。月の南極近くにある基地に来て二か月目。三十代の機械技術者で、担当は氷から水を取り出す抽出装置だ。端末を見ると、夜のあいだにフィルターの前後で圧力の差が広がっていた。
朝食の前に、地球の管制室と通話をつないだ。声が届くまで一秒あまり遅れる会話にも、もう慣れた。設計担当の技術者は、詰まりの原因は砂だろうと見ていた。浩介は午前中、宇宙服を着て外に出ることを決め、同僚の航と二人で手順を読み合わせた。外での作業は必ず二人一組、合図の言葉もあらかじめ決めておく。
外は、地平線すれすれの太陽が長い影をつくっていた。装置の覆いを開けると、思ったとおり細かい灰色の砂がフィルターの縁にこびりついていた。この砂は粒が角ばっていて、継ぎ目に入りこむとなかなか取れない。浩介は持ってきた静電気で砂を払う道具を当て、予備のフィルターと取り替えた。気になったのは、覆いのすき間だ。写真を何枚も撮り、帰りに航と寸法を測った。
午後は居住区の作業台で、覆いにつけるゴムの縁を三次元プリンターで試作した。地球から部品が届くのは次の輸送船、四か月先になる。手元の材料でしのぐしかない。夜、浩介は試作品の写真と測った寸法を地球の設計チームに送り、明日の朝までに意見をもらう約束をした。ポンプの音は、もとの低さに戻っていた。
この仕事に近づくには
今からできること
- 中学理科(物理・化学・地学)と数学を土台にする。工作やものの修理、キャンプなど不便な場所での生活体験も、工夫する力につながる。
- 高校物理と化学を中心に学ぶ。工業高校や高専で機械・電気・建築を学び、実際に手を動かして作る経験を積む道もある。
- 大学航空宇宙工学、機械工学、建築学、資源工学などから得意分野を選ぶ。南極観測や離島での設備工事のように、厳しい環境で働く経験が生きると考えられる。
今から伸ばしたい力
- 機械や電気の仕組みを分解して理解する力
- 限られた道具と部品で直し方を工夫する力
- 手順を守り、仲間と確認し合う慎重さ
- 閉じた空間で長く暮らすための体力と気持ちの整え方
- 遠くの専門家に状況を正確に伝える説明力
近い「今の仕事」
この仕事に近いのは、今ある次の仕事です。今の年収や進路は、それぞれのページで見られます。
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ものづくり・研究 航空宇宙エンジニア 飛行機や人工衛星、ロケットの機体・装置を設計し、地上試験で性能と安全性を確かめる技術者。構造、推進、熱、通信、制御などの専門に分かれ、解析結果と試験データを照らして開発を進める。
2050年の収入ほぼ変わらない -
建設・設備 施工管理技士 建築や土木の工事現場で、工程・費用・品質・安全を管理する技術者。施工図を確かめ、職人や資材の手配を調整し、検査記録を残しながら建物や施設を設計どおりに完成させる。
2050年の収入少し上がる -
ものづくり・研究 宇宙飛行士 宇宙船や有人宇宙施設に乗り、科学実験、機器の点検・修理、船内システムの運用を担う専門職。地上では長期間の訓練や実験手順の確認、各国の管制チームとの連携を重ね、宇宙での任務を準備する。
2050年の収入ほぼ変わらない
出典と前提
出典
- 盛山大臣がネルソンNASA長官と「与圧ローバによる月面探査の実施取決め」に署名 日本人宇宙飛行士に2回の月面着陸の機会(文部科学省)、2026年11月4日取得
- 月極域探査機(LUPEX)(JAXA)、2026年11月4日取得
- HAKUTO-Rが月着陸に再挑戦 今回はローバーも搭載(Forbes JAPAN)、2026年11月4日取得
この仕事が広がる前提
- 月の南極の氷が、取り出して使える量と質で存在するとわかる。
- 月への人と物の輸送が定期的に行われ、費用が今より大きく下がる。
- 月面での長期滞在に必要な放射線対策や健康管理の方法が確立する。