公務・安全 想像の仕事
災害ケースマネージャー
さいがいけーすまねーじゃー
被災した一人ひとりを訪ね、住まい・仕事・健康・お金の困りごとをまとめて聞き取り、弁護士や建築士、福祉の専門家とチームを組んで生活が立て直るまで伴走する仕事になりそうだ。
はじめに
地震や大雨で家や仕事に困った人のところへ通い、話をじっくり聞く仕事です。「家を直すお金が足りない」「病院に行けない」など、困りごとは人によってちがいます。弁護士さんや大工さん、福祉の人などとチームを組み、その人が元の暮らしに近づけるまで、何か月も何年もそばで支えます。
今ある芽
今ある技術や制度から見て、2050年には仕事として広がっている見込みが高いものです。今の被災者支援は、住まいは住宅の窓口、お金は福祉の窓口というように分かれていて、困りごとが重なった人ほど支援から取り残されやすい。国が手引きをつくり、自治体や福祉関係者、NPOへの研修が進められているが、専門の担当者を平時から置く自治体はまだ限られている。地域ごとに担当者を育て、災害の前から体制をつくることが当たり前になれば、独立した専門職として広がる可能性がある。
- 国が実施の手引きを公表内閣府は2023年、自治体が被災者一人ひとりの状況に合わせて支援を組み立てる「災害ケースマネジメント」の手引きをまとめた。やり方の標準ができたことで、担い手を育てる土台が整い始めた。出典:災害ケースマネジメント実施の手引きの公表について(内閣府(防災担当))
- 研修と全国協議会で広げる方針防災白書では、自治体職員や福祉関係者、NPOなどへの研修や、全国協議会での情報共有を通じて取り組みを広げる方針が示されている。専門の人材を育てる動きが、国の計画として進んでいる。出典:令和8年版 防災白書 第1部第1章第2節 2-6 被災者支援の充実に向けた検討(内閣府)
2050年、どんな仕事をしている?
- 被災世帯への訪問聞き取り仮設住宅や壊れた自宅、親せきの家などを訪ね、家族の状況や困りごとを一つずつ聞いて記録する。
- 生活再建プランの作成住まい・仕事・健康・お金の課題を整理し、何から順に手をつけるかを本人と一緒に決める。
- 専門家を集めたケース会議弁護士、建築士、保健師、社会福祉士などに声をかけ、一つの世帯について役割を分けて支援を進める。
- 制度の申請の手伝い支援金や住宅の修理制度、ローンの減免などの申請書類を、本人が出せるように一緒に準備する。
- 平時の担当地域の見守り災害が起きる前から、一人暮らしの高齢者や障害のある人など支援が必要になりそうな世帯を、福祉の担当者と把握しておく。
2050年の一日
2050年、災害ケースマネージャーの一日(架空)
ケース会議は、仮設団地の集会所の長机で始まる。地震から七か月。県の災害ケースマネージャーとして働く颯太は、ノート型の端末に今日の三世帯の記録を並べた。向かいには弁護士、建築士、町の保健師、社会福祉協議会の職員が座っている。最初は、半壊した家に住み続けている七十代の夫婦の件だった。
「屋根は直したいが、年金だけでは足りないと言っている」。颯太が伝えると、建築士は修理費の見積もりを二通りに分けて出し直すと言い、弁護士は住宅ローンの残りについて減免の手続きが使えるか調べると引き受けた。保健師は、夫の血圧の薬が切れかけていることを気にしていた。困りごとが一つの家の中でつながっていることを、全員で確かめ合う。
午後は軽自動車で山あいの集落へ向かった。訪ねたのは、勤めていた食品工場が被災して休業し、仕事を探している四十代の女性だ。前回は口数が少なかったが、今日は台所でお茶を出しながら、中学生の娘が転校先になじめていないことを話してくれた。颯太は職業相談の窓口の予約を一緒に取り、学校のスクールカウンセラーにつなぐ許可をもらった。記録には、本人が言った言葉をそのまま残しておく。
夕方、事務所に戻ると、隣の県の担当者からオンラインで相談が入った。去年の豪雨で支援した世帯の進め方を知りたいという。颯太は記録の中から個人が分からない形にまとめた事例を開き、うまくいかなかったことも含めて話した。帰り際、仮設団地の掲示板に、来週開く「家の修理相談会」の紙を貼った。
この仕事に近づくには
今からできること
- 中学社会科の公民で社会保障や地方自治のしくみを学ぶ。地域の防災訓練やボランティア活動に参加し、困っている人の話を聞く経験を積む。
- 高校公共や家庭科で福祉や暮らしのお金について学ぶ。災害ボランティアセンターの活動や、福祉施設でのボランティアに参加してみるのもよい。
- 大学・専門学校社会福祉学部などで学び、社会福祉士や精神保健福祉士の国家試験の受験資格を得る道がある。法学部や建築学科から入り、福祉の知識を加えていく道も考えられる。
今から伸ばしたい力
- 相手の話を急かさず最後まで聞き、言葉の裏にある困りごとに気づく力
- 住まいや福祉、法律の制度を調べて、使えるものを見つける力
- いろいろな専門家に声をかけ、役割を分けて進める調整の力
- 記録を正確に残し、個人の情報を大切に扱う力
- 長い時間がかかる支援を、焦らず続ける粘り強さ
近い「今の仕事」
この仕事に近いのは、今ある次の仕事です。今の年収や進路は、それぞれのページで見られます。
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医療・福祉 社会福祉士 暮らしに困りごとを抱える人の話を聞き、福祉制度や地域サービスにつなぐ相談援助の国家資格者。高齢者、障害のある人、生活に困る家庭などの希望を整理し、必要な支援の申請・調整を手伝う。
2050年の収入ほぼ変わらない -
公務・安全 福祉事務所のケースワーカー 自治体の福祉事務所で生活保護などの相談・申請を受け、家計、住まい、健康、就労状況を確認して制度に沿う支援を行う。家庭訪問や他機関との連携も担う公務員の仕事。
2050年の収入ほぼ変わらない -
公務・安全 防災の専門職(自治体) 市区町村や都道府県の防災担当として、地域防災計画の見直し、避難所の準備、住民への避難情報の伝達、防災訓練や関係機関との連絡を担う。地形や災害リスクを把握し、地域の備えを整える仕事。
2050年の収入ほぼ変わらない
出典と前提
出典
- 災害ケースマネジメント実施の手引きの公表について(内閣府(防災担当))、2026年11月4日取得
- 令和8年版 防災白書 第1部第1章第2節 2-6 被災者支援の充実に向けた検討(内閣府)、2026年11月4日取得
この仕事が広がる前提
- 自治体が災害の前から、ケースマネジメントの担当者や連携先を決めておく体制を整えていること。
- 弁護士や建築士、福祉の専門家が、被災者一人ひとりの支援にチームで関わるしくみが広がっていること。
- 被災者の情報を、本人の同意のもとで関係機関が安全に共有できるルールが整っていること。