物流・交通

船員(航海士)

せんいん(こうかいし)

貨物船や旅客船の航路計画、操船の補助、見張り、船体や貨物の安全確認を担う船上の専門職。船橋でレーダー・海図・計器を使い、当直を交代しながら航海を支え、船長の指揮下で入出港にも携わる。

船橋で、女性の航海士が海図上の航路を確かめ、計器と見比べながら船の進む位置を確認している。
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はじめに

大きな船が安全に海を進むように、海図やレーダーを見ながら進路を確かめる仕事です。天気や波、ほかの船の動きを調べ、船長と相談して航路を考えます。港に入るときは船の前後の作業も見守ります。船の上で何日も暮らし、交代で見張りをすることがあります。

2050年の見通し

2050年編集部の見立て

2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。

今の年収約470万円平均値・2025年の統計
2050年(物価の上昇を除いて)少し上がる幅:少し下がる〜上がる
収入
資格者不足と乗船を伴う勤務の負担が賃上げ要因になるが、航路自動化や輸送運賃の低迷が制約となる。内航と外航で差があるため実質収入は小幅増を中心に、幅を広くみる。
需要
国土交通省が海技人材確保を課題とする一方、AIによる航路計算・監視と国内貨物の変化が船上要員数を抑え得る。資格者への需要は残るが大幅増は見込まない。
人による差
人による差が広がる

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今の船員(航海士)の仕事

今
  • 航海計画の原案づくり海図と気象・海象情報を調べ、距離・燃料消費・所要時間を算出して船長に航路案を提出する。
  • 船橋での航海当直レーダー・GPS・見張りによって位置、他船の進路、航路標識を確認し、避航の必要性を船長へ報告する。
  • 入出港時の係船作業の指揮船首・船尾などの持ち場で錨や係船索を扱う甲板員に指示し、船長の操船命令を伝える。
  • 積荷と喫水の確認貨物の積付け・固定や船体の沈み具合を点検し、安全な航行条件を守る。
  • 航海機器と書類の点検航海計器や救命設備の状態、出港許可など必要書類を確認し記録する。

2050年、仕事はどう分担される?

2050年編集部の見立て

業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。

AI・ロボットが中心

  • 航路と燃料消費の最適化 確からしさ:高 海流・気象・港の混雑を計算して候補航路を比較する仕事は機械に向くが、実行の判断は別に必要となる。

AIと協働

  • レーダー映像からの他船検出 確からしさ:高 複数センサーで船の接近を警告できる一方、漁具や視界不良などの海上事情は人の見張りが補う。
  • 貨物の固縛と甲板安全の確認 確からしさ:中 画像検査は補助になるが、現場で締結状態や危険な足場を確かめる工程は残る。

人が中心

  • 狭い水路での航海当直 確からしさ:中 交通が密集する場所では法制度・責任・通信が複雑で、遠隔操船が可能でも配置の変更には時間がかかる。
  • 出入港時の係船作業指揮 確からしさ:中 潮流と岸壁の状況を見ながら綱を扱う人を指揮し、他船や岸壁係員と連携する判断が必要である。

2050年の一日

2050年架空の一日

2050年、船員(航海士)の一日(架空)

夜半の船橋に、細い雨が横から当たっていた。20代の航海士・美帆は、午前零時からの当直を引き継ぐ。貨物船は沿岸を北上中で、右手には小さな漁船の灯りがいくつも見えた。航路支援装置は燃料を節約できる直進経路を示していたが、漁船の動きが読みにくい。美帆はレーダーの目標を一つずつ確かめ、見張りの甲板員と船の位置を照合した。

少し前まで進路を保っていた一隻が、急に向きを変えた。自動計算では余裕があると出る。だが小さな灯りは網を引いている船のものかもしれない。美帆は速力と距離を記録し、船長に早めに状況を伝えた。船長は船橋に上がり、周囲の交通を見て安全な側に余裕を取る進路を決めた。海図に残る線は短いが、その線を選ぶまでに人は多くの確認をしている。

夜が明けると、港の手前で美帆は係船作業の準備に回った。濡れた甲板では綱に近づきすぎないことを甲板員と確認する。岸壁の受け入れ時間が予定より早まり、荷役の係員と連絡を取り直す必要も出た。船長の指示を復唱し、船首の持ち場へ伝える。海上の仕事は画面の中だけでは終わらない。

入港後は貨物の状態と航海記録を点検し、次の港までの気象図を開いた。数週間先には陸上でまとまった休暇がある。美帆は家族から届いた写真を見てから、交代する同僚に次の航路で気になる潮流の場所を教えた。

収入

平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。

今の年収

今統計

約470万円(年収・平均値)

調査
令和7年賃金構造基本統計調査(job tag掲載の年収)
調査年
2025年
対象
job tag「航海士」に対応する職業分類の雇用労働者で、内航・外航、船長や関連する船舶職を含み得る統計である。
税・賞与
税・社会保険料を引く前、賞与を含む
  • job tag掲載の2025年全国年収470.1万円を円に換算した。
  • 外航船・内航船、役職、船員手当、乗船期間によって金額が変わるため航海士だけの専用平均と解釈しない。
  • 乗船中の当直と下船後のまとまった休暇は通常の陸上勤務と働き方が異なる。
  • 税・保険料控除前の賃金統計であり自営業者の事業所得を表さない。

収入を動かすもの

2050年編集部の見立て

AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。

  • 海技免状と航海当直の責任上がる方向

    船を動かすには資格を持つ人の判断が必要で、その経験には価値があります。

    大人向けの詳しい説明

    船舶の大きさや航行区域に応じた海技士の免許と船員配置制度が供給を制限する。

  • 内航海運の人材不足上がる方向

    船で働く人が少なくなると、経験ある航海士を求める会社が増えます。

    大人向けの詳しい説明

    国土交通省は海技人材の確保を喫緊の課題として検討しており、採用・定着の費用が賃金を支える可能性がある。

  • 航路計算・監視の自動化どちらにも動きうる

    海図や天気を調べる作業は楽になっても、船を安全に進める責任は残ります。

    大人向けの詳しい説明

    航行支援は人の当直作業を減らし得るが、完全な無人化には国際的な運航規則と責任分担の調整を伴う。

  • 海上運賃と燃料費下がる方向

    運ぶ荷物が減ったり燃料代が増えたりすると、給料が上がりにくくなります。

    大人向けの詳しい説明

    内航輸送の単価と船舶更新費が企業の利益を左右し、資格者不足があっても賃金に転嫁されない場合がある。

2050年の3つのシナリオ

2050年編集部の見立て

未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。

  1. 船員確保と航行安全への投資

    条件国内輸送が維持され、熟練航海士の不足に対応するため、企業が待遇と養成に資金を振り向ける。

    起きそうなこと海技免状を持つ人の採用競争が強まり、手当や実質収入が上向く可能性がある。

  2. 船舶の遠隔支援が普及

    条件監視や航路計算が陸上センターに集まり、法制度も段階的に見直される。

    起きそうなこと船上当直の人数は減る可能性があるが、免許を持つ運航監督者への需要は残る。

  3. 国内貨物が減り運賃が下がる

    条件地域の荷動きが人口減少で細り、海上運賃の値上げが難しい。

    起きそうなこと欠員があっても事業者の賃上げ余力が弱く、乗船条件の差が広がる。

働き方と暮らし

2050年編集部の見立て

人手は足りる? 余る?

国土交通省は少子高齢化や船員不足を背景に、海技人材の確保・育成を政策課題としている。島や沿岸部へ貨物・旅客を運ぶ船は地域生活を支え、一定の航海士が必要となる。経験を積み海技免状を持つ人を確保するには時間がかかる。

一方、航路計算や遠隔監視の導入、国内の貨物量、物流の集約が船上の必要人数を変える可能性がある。短期的な資格者不足を2050年まで直線的に伸ばすことはできないため、需要は横ばいから小幅増を中心とする。

働き方

外航船では長い乗船期間に船内で暮らし、船橋当直を交代しながら担当する。内航船や旅客船では航路と勤務日程が異なり、港での荷役や係留の準備も仕事になる。

下船後にまとまった休暇を設ける働き方があり、賃金には乗船手当などが加わることもある。潮流・天候・船の設備は日々変わるため、遠隔支援が進んでも当直の引き継ぎや乗組員同士の連携は重要である。

この仕事に近づくには

今

進路と資格

  1. 商船系の大学・高専などへ進む海事・航海系の大学や商船高等専門学校(商船学科は乗船実習を含め5年6か月)などで航海学と実習を学ぶ。ほかにも海上技術学校等の進路がある。
  2. 乗船実習と海技士国家試験海技士(航海)1〜6級は国が定める資格。船の航行区域や大きさなどに応じて必要な級が異なり、受験には条件に応じた乗船履歴が必要である。
  3. 海技免状を得て航海当直を経験学科・身体検査・口述など国家試験と必要な講習を経て免状を取得し、船会社で当直・係留・貨物の安全確認の経験を積む。

今から伸ばしたい力

  • レーダーと海図の情報を突き合わせる力
  • 気象・潮流・船速から航路の危険を読む力
  • 航海計算と位置測定の基礎
  • 船橋当直で船長の指示を正確に復唱する力
  • 係船作業の危険箇所を見つける観察力

出典と前提

最終確認日
2026年11月1日

出典

予測の前提

  • 日本の沿岸輸送と島への輸送を担う船舶は2050年にも運航される。
  • 遠隔監視・自動航行の普及は航行区域と船型、法制度により異なる。
  • 免状保有者の不足が賃金に反映されるかは海上運賃と企業利益次第である。

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