クリエイティブ

絵本作家

えほんさっか

子どもがページをめくって楽しむ本の物語や絵をつくる仕事。自分で文章と絵の両方を担当する人も、作家と画家で分担する人もいる。見開きごとの場面展開、読み聞かせの言葉、色と紙面の構成を編集者と磨いて仕上げる。

制作机で、男性の絵本作家が見開きのラフに木と小鳥の絵を描き、隣のページ案と見比べながら物語の流れを考えている。
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はじめに

絵本作家は、絵と言葉でお話をつくる仕事です。絵だけを描く人、文章だけを書く人、両方をつくる人がいます。「次のページが気になる」と思ってもらえるように、ページをめくる順番や色の使い方、声に出したときの言葉のひびきまで考えます。

2050年の見通し

2050年編集部の見立て

2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。

今の年収約492万円参考値:公的な資料から計算した目安
2050年(物価の上昇を除いて)少し下がる幅:大きく下がる〜少し上がる
収入
作品を作る費用が下がる一方、供給増で原稿料の価格競争が強まる。人口減少に伴う本の需要と出版社の支払い能力を考慮し、実質所得は小幅減を中心にしたが、長く売れる作品の権利を持つ作家は別だ。
需要
少子化と自動生成作品の増加で新刊の有償依頼は減る可能性がある。紙の絵本・読み聞かせ・翻訳市場は残るため、一律の大幅減とは見ていない。
人による差
人による差が広がる

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今の絵本作家の仕事

今
  • 絵本の物語と見開き構成を考える年齢に応じたテーマを決め、ページごとにどの場面を見せるかをラフな絵と短い文章で並べる。
  • 読み聞かせの文を推敲する声に出して読んだときのリズムや繰り返しを確かめ、子どもにも伝わる言葉へ直す。
  • 原画と色彩を制作する水彩や色鉛筆、デジタル作画などで登場人物の表情と背景を描き、見開きの色の流れを整える。
  • 編集者との絵コンテ確認見開きごとのラフを編集者と検討し、ページをめくったときの意外さや説明不足を直す。
  • 色校正と増刷・利用条件の確認印刷見本の色や文字位置を確かめ、出版契約にある印税・電子版・翻訳版などの利用範囲を確認する。

2050年、仕事はどう分担される?

2050年編集部の見立て

業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。

AI・ロボットが中心

  • 翻訳・音声版の試作 確からしさ:中 文章の翻訳や試聴用の読み上げは自動化しやすい。ただし語呂や文化による伝わり方は監修が要る。

AIと協働

  • 見開きの仮レイアウト作成 確からしさ:高 複数の紙面案を試す作業は機械に向くが、どこでページをめくると驚くかは作者が決める。
  • 主人公の顔と画風の統一 確からしさ:中 参考絵の色合わせは補助できても、絵の揺らぎや意図的な省略を作品の表現として選ぶ役割が残る。

人が中心

  • 子どもの反応を見て場面を練り直す 確からしさ:高 幼い読者がどの絵で立ち止まり、何を言い出すかを観察して物語を変える判断は作者の仕事だ。
  • 出版契約と二次利用の許諾 確からしさ:中 画像や文章が電子版・動画・商品に使われる範囲の合意には著作者の権利判断が関わる。

2050年の一日

2050年架空の一日

2050年、絵本作家の一日(架空)

紙を一枚めくるたび、部屋の空気が少し変わる。50代の絵本作家・俊一は、机に広げた十二枚の見開きのうち、七枚目だけを裏返した。主人公の小さな魚が初めて川の外へ出る場面。絵はきれいに描けているのに、読んだ人の驚きが先に来てしまう。ページをめくる楽しみがなくなっていた。

午前中、編集者から届いた読み聞かせの録音を聞く。三人の子どものうち二人が、魚が空を見上げる絵で「どうして?」と聞いていた。俊一は文章を一行削り、前の見開きに描いた雲の形を少しだけ変えた。画面の試作道具は背景を何十種類も提案したが、選んだのは白い紙を大きく残す案だった。答えを全部描かないほうが、子どもは続きを想像できる。

午後は印刷所から届いた試し刷りと、端末の色を見比べる。魚の背中の青は、紙に印刷するとわずかに暗い。印刷担当者と色を調整し、見開きの中央に大切な表情がかからないよう絵の位置も動かした。その後、海外向けの電子版に関する連絡を受け、翻訳したときに韻が消える部分と、絵の利用条件を編集者と確認する。

夕方、俊一は図書室の読み聞かせ会に試作本を持っていく。子どもが七枚目をめくり、「あ、雲が同じ形だ」と小声で言った。説明しなくても気づいてくれた。帰宅した俊一は最終ページの文章をさらに短くした。明日編集者に送るのは、これ以上言葉を足さなくてよいと分かった一冊のラフだ。

収入

平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。

今の年収

今参考値

約492万円(年収・公的な資料から計算した目安)

資料
イラストレーター|職業詳細(job tag)
対象
job tag「イラストレーター」の対応する美術家・イラストレーター等の雇用労働者。絵本作家の独立した平均年収ではない。
税・賞与
税・社会保険料を引く前、賞与を含む雇用賃金の参考値。印税や作品別原稿料の事業所得とは違う。
計算方法
専用の年収統計がないため、絵の制作が職務として近い厚生労働省job tag「イラストレーター」の2025年全国年収492.2万円を雇用賃金の参考額とした。
  • 492.2万円は絵本作家本人だけの平均値ではなく近接職種の賃金統計から借りた目安だ。
  • 絵本作家の多くは独立して働き、印税・原稿料・挿絵や講座などの兼業収入で所得が変わる。
  • 本の定価や販売冊数が同じでも、契約の印税率や権利の分担によって受取額は異なる。
  • 製作画材・事務所・取材・打ち合わせの経費は売上から差し引く必要がある。

収入を動かすもの

2050年編集部の見立て

AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。

  • 児童人口と図書館の購入下がる方向

    子どもの数が減ると、絵本を買う人の数も変わるかもしれません。

    大人向けの詳しい説明

    子どもの人口だけでは絵本市場は決まらないが、新刊の販売部数や公共の選書予算に影響する。

  • 絵と文章の生成サービスどちらにも動きうる

    絵本をつくる道具は便利になりますが、似た作品もたくさん増えます。

    大人向けの詳しい説明

    試作費用を下げる一方で作品供給が増え、出版社の選書と読者への発見性が重要になる。

  • 印税契約と二次利用の権利上がる方向

    大切な絵やお話を長く使ってもらえる契約なら、収入が続くこともあります。

    大人向けの詳しい説明

    電子版や翻訳版、関連商品などの契約条項が継続収入を左右するが、権利収入の分布は偏りやすい。

  • 紙の見開きと読み聞かせの価値どちらにも動きうる

    声に出して読む気持ちよさやページをめくる楽しさが作品の強みになります。

    大人向けの詳しい説明

    物としての絵本の価値は残るが、印刷・紙・流通の費用が採算を左右する。

2050年の3つのシナリオ

2050年編集部の見立て

未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。

  1. 紙の絵本と読み聞かせが続く

    条件図書館、家庭、学校で紙の本を読む機会が保たれ、少部数でも新刊を出せる流通がある。

    起きそうなこと紙の質感やページ構成に強い作家の依頼は続くが、読者人口が減るため印税の増加は保証されない。

  2. 自動生成絵本が大量に流通する

    条件簡単な絵と短い物語を安価に作れるサービスが一般化し、電子書店に新作が増える。

    起きそうなこと定型的な絵本の価格と発見されやすさに圧力がかかり、独自の画風や作品世界を持つ作家との差が広がる。

  3. 翻訳・舞台化など複数の利用が増える

    条件作者が電子版、翻訳、朗読、展示への許諾を理解して出版契約を結ぶ。

    起きそうなこと作品の寿命が伸びれば権利収入を得られる一方、利用範囲が広い契約では追加収入にならない場合もある。

働き方と暮らし

2050年編集部の見立て

人手は足りる? 余る?

絵本は紙のページをめくる、家族や先生が声に出して読むといった使い方があり、短い画像や動画と違う価値を持つ。ただし少子化の進行は読者数や書店での新刊の売れ方に影響し、新作すべての仕事が増えるとは限らない。

AIで絵と物語を試作しやすくなると出版の入口は広がるが、競争も激しくなる。独自の絵柄、読み聞かせでの反応、長く読まれる作品を育てる力が評価される一方、発注単価が下がる分野も生じるため、需要は小幅に減る見立てを中心にした。

働き方

多くは個人で制作し、出版社や編集者と作品単位で契約する。絵と文を一人で担当する場合も、文章担当と絵担当が別の場合もある。作業場は自宅やアトリエが中心で、絵の原稿や試し刷りを確認するための打ち合わせがある。

収入は毎月決まった給与とは限らず、刊行時期や販売部数により変動する。挿絵、学校や図書館での読み聞かせ、講座、展示などを兼ねる人もいる。電子版や翻訳版の契約条件を理解することは創作活動を続けるためにも必要だ。

この仕事に近づくには

今

進路と資格

  1. 子どもの本を読み、短い絵本を自作する好きな絵本を読み比べ、ページ割り、読み聞かせのリズム、絵と文章の役割を練習する。絵本作家になるための国家資格はない。
  2. 美術や文芸を学び作品集をつくる美術系大学の4年制課程、専門学校、児童文学の講座などで描画と編集の技術を学ぶ道があるが、卒業資格が職業の必須条件ではない。
  3. 出版社との企画相談や公募で発表する絵と文のラフをまとめ、出版社の企画相談や絵本の公募に応募するなどして作品を発表する。出版の際は契約の印税・原稿料・二次利用条件を確認する。

今から伸ばしたい力

  • 見開きの最後に次のページへの期待をつくる構成力
  • 子どもに声に出して読める短い文章を選ぶ力
  • 登場人物の表情を少ない線や色で伝える力
  • 印刷した紙の色や見開きの中央を考える力
  • 印税・翻訳・電子版などの利用許諾を理解する力

出典と前提

最終確認日
2026年11月1日

出典

予測の前提

  • 2050年も紙の絵本と家庭や図書館での読み聞かせが一定程度続く。
  • 絵と文を生成する道具が普及しても作品を継続販売できるかは別の問題だ。
  • 出版契約の権利範囲と作者の報酬分配は作品や出版社によって変わる。

このページの更新

  • 初稿を公開

ラベルの意味や予測の限界は「予測の読み方」で説明しています。