内部監査人
ないぶかんさにん
会社の内部で、決められた手続きや管理の仕組みが実際に機能しているかを独立した立場で調べる職業。監査計画、現場への聞き取り、証拠の確認、経営陣への改善提言を担う。

はじめに
会社の中で、約束した仕事のやり方がきちんと守られているかを調べる人です。お金の記録だけでなく、商品や情報の管理方法も確かめます。何か気になることがあれば、担当者から話を聞き、証拠を集めて理由を調べます。そして会社をもっと安全に運営するための直し方を提案します。
2050年の見通し
2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。
- 収入
- 会計・情報システム・業務運用を横断して評価できる経験者が限られ、独立性を確保する監査部門では報酬の交渉余地が生まれやすい。ただし記録照合の自動化と会社の間接費削減は賃上げを抑える。
- 需要
- 内部統制やガバナンスの確認は残り、AI活用に伴う新たな統制対象も生じる。一方、継続的な自動監視で定型検査の人数は減らせるため、職全体では横ばいを中心にみる。
- 人による差
- 人による差が広がる
今の内部監査人の仕事
- リスクに基づく年間監査計画の策定在庫、海外子会社、情報管理などのリスクを比較して監査対象と検査手順を決め、取締役会などの承認を得る。
- 業務フローと権限分担の確認発注者と承認者が分かれているか、決められた決裁権限を守れているかを業務手順と実記録から確かめる。
- 証憑の抽出検査と聞き取り購買伝票、承認履歴、棚卸記録などを抜き出し、部署の担当者に処理の理由を聞く。
- 監査調書・改善勧告の作成見た証拠と判断過程を監査調書に残し、不備の原因と優先順位を報告書に記す。
- 改善策の実施状況の追跡担当部門の是正期限と再点検の結果を確認し、経営陣に未解決事項を伝える。
2050年、仕事はどう分担される?
業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。
AI・ロボットが中心
- 会計・発注記録の異常抽出 確からしさ:高 多数の取引記録を照合し、例外パターンを拾う作業は自動化が進む。ただし異常が直ちに不正を意味するわけではない。
AIと協働
- 監査対象リスクの優先順位づけ 確からしさ:中 AIは過去の指摘やシステム変更履歴を整理するが、事業計画と現場の事情を踏まえた監査計画は人が承認する。
- 監査調書の初稿整理 確からしさ:高 証拠の一覧や報告書案はAIが支援できるが、何を検査したかの追跡性と結論の妥当性を監査人が検証する。
人が中心
- 内部統制の運用実態の現場確認 確からしさ:中 帳票が整っていても実際の手順が違う場合がある。作業者の説明や現場の動きを確かめる必要がある。
- 監査の独立性を守った改善提言 確からしさ:高 監査対象部署と利害が衝突する場面でも、証拠に基づいて経営陣へ説明する独立性と責任が求められる。
2050年の一日
2050年、内部監査人の一日(架空)
倉庫の棚には、予備電池の箱がきれいに並んでいた。しかし本社の管理画面には、同じ番号の箱が別の拠点にも保管されていると表示されていた。三十代の内部監査人・健太は、朝から倉庫責任者と記録を照らし合わせていた。自動監査の画面は「重複登録の疑い」と警告していたが、健太は画面だけで結論を出さず、実物の箱に貼られた番号を一つずつ確かめた。
原因は、移動中の在庫を「出発した倉庫」と「到着予定の倉庫」の両方で一時的に数える新しい運用にあった。手順書には出発時点で登録を消すとあるのに、現場では到着確認後に消すよう指示されていた。健太は誰のミスかを問い詰める前に、出発側の担当者、受け入れ側の担当者、システム担当者から別々に説明を聞いた。口頭でしか共有されていない運用変更が見えてきた。
午後は、数週間分の移動記録を無作為に選び、物品が紛失したわけではないことを確認した。ただし会社が倉庫ごとの保管数量を判断するときに、二重計上の数字を使ってしまうおそれがある。健太は調書に、検査した記録の範囲と確認できなかった期間を分けて書いた。自動作成された報告文の「在庫管理に重大な欠陥」という表現も、証拠に照らして直した。
夕方の会議では、倉庫を責めるのでなく、移動中の在庫に専用の区分を設け、両拠点が同じ画面を見る案を示した。経営陣は改善期限を決めたが、導入後に監査部門がもう一度検証することになった。健太は会議室を出る前に、現場の担当者が安心して疑問を報告できる窓口があるかも尋ねた。帳票と実際の仕事をつなぐのが、この日の監査だった。
収入
平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。
今の年収
約525万円(年収・平均値)
- job tag掲載の2025年全国年収525.2万円を円換算したもので、内部監査人だけを集計した平均ではない。
- 元となる職業分類には総務事務員等が含まれ、監査責任者の報酬水準とは直接対応しない。
- 大企業の監査室、子会社、金融機関、職位や監査経験によって給与差がある。
- 外部の監査コンサルタントの請負収入や独立事業者の事業所得を示す値ではない。
収入を動かすもの
AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。
-
経営陣から独立した監査権限上がる方向
調べる相手に遠慮せず、会社の上の人に伝える役割が大切です。
大人向けの詳しい説明
IIAの国際基準はガバナンスと独立性を重視する。独立した監査の維持には専任者と監督体制への投資が必要になる。
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全取引データの継続監視下がる方向
伝票を一枚ずつ集める仕事は、機械が手伝うようになります。
大人向けの詳しい説明
全件照合や不自然な取引の抽出は自動化しやすく、標本抽出だけに従事する人の仕事量を減らす可能性がある。
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システム変更と委託先の複雑化上がる方向
会社の仕組みが複雑になるほど、仕事の決まりを確かめる人が必要になります。
大人向けの詳しい説明
AIによる決裁、外部委託、海外拠点など監査範囲の増加が、業務理解とシステム監査の専門性を押し上げる。
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経営陣の監査予算どちらにも動きうる
会社が調べるための時間と人を用意できるかで、仕事の量が変わります。
大人向けの詳しい説明
規制や業種ごとの監査への期待と、収益悪化時の間接部門の人員削減の双方が賃金・需要を左右する。
2050年の3つのシナリオ
未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。
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複雑なグループ経営への監督が強まる
条件子会社・取引先・AI運用の統制を検査する必要が増え、独立した監査部門への予算が維持される。
起きそうなこと専門性を持つ監査人の需要と報酬が高まり、監査経験による差が拡大する。
-
監査証拠の照合が低コスト化する
条件記録の突合と監査調書の下書きが継続的なソフトウェア監査に移る。
起きそうなこと初級の抽出検査担当は減り、人が行うのは監査計画と改善の妥当性判断が中心になる。
-
企業が監査体制を縮小する
条件景気や再編により監査要員の予算が制限され、兼務を増やす会社が多くなる。
起きそうなこと独立性の確保が難しくなり、職務負担に比べて待遇が伸びない職場が生じる。
働き方と暮らし
人手は足りる? 余る?
内部監査は会社の決裁、資産管理、法令順守などが実際に機能するかを点検する。AIや外部委託先を使う範囲が広がれば、組織の仕組みを横断して検査する専門性は引き続き求められると考えられる。
他方、帳票の突合や例外抽出は機械で行える範囲が広がり、監査人数が同じ比率で増えるとは限らない。監査部門の独立性に費用をかける大企業と、兼務で対応する中小企業では採用状況が分かれる。
働き方
企業の内部監査部門に所属し、監査計画の作成、各部署でのヒアリング、監査調書、経営陣への報告を行う。監査対象部署とは一定の独立性を保つ必要があり、通常の総務事務と業務の目的が異なる。
本社での記録分析に加え、工場、倉庫、店舗、子会社への出張もある。定期監査は計画的に進められるが、監査報告前や重要な改善事項が見つかった時期は関係部署との面談が増える。
この仕事に近づくには
進路と資格
- 学校で会計・法律・情報システムの基礎を学ぶ特定の学歴・資格は法律上の必須条件ではない。大学の経営・経済・法・情報系などの学習が役立ち、高専や現場経験から入る道もある。
- 営業・経理・システムなどの現場を経験するjob tagでは社内の別部署で業務を知った後の異動や中途採用が多く、新卒から直ちに専任監査人になる例は少ないとされる。
- 内部監査士やCIA(公認内部監査人)を学ぶ日本内部監査協会の内部監査士や国際資格CIAは関連資格で、職務に必須の国家免許ではない。試験・認定条件を確認し、実務とともに学ぶ。
今から伸ばしたい力
- 購買・経理などの業務フローから承認と職務分離を読み解く力
- 伝票やログの出所を確かめ、再検証できる監査調書を残す力
- 現場を萎縮させずに手順と実態の違いを聞き出す面談力
- 監査対象から独立し、不都合な事実も公平に報告する倫理観
- 不備の原因を検証し、改善後の再点検条件を定める力
関連する職業
-
専門・ビジネス 公認会計士 企業の決算書が適切に作られているかを調べ、監査の意見を示す専門職。取引や会計処理、社内の管理の仕組みを確認する。財務や経営の助言、企業内での会計業務に携わる人もいる。
2050年の収入ほぼ変わらない -
専門・ビジネス 企業の法務担当 企業が商品を売り、サービスを提供し、取引先と協力するときに法律上の問題を見つけて防ぐ仕事。契約書の審査、消費者向け表示、社内規程、内部通報、紛争への対応などを担当する。
2050年の収入少し上がる -
IT・デジタル ITコンサルタント 会社や自治体の仕事の流れを調べ、情報システムでどの問題を解決するか考える専門職。現場への聞き取り、導入計画、費用対効果の比較、システム会社の選定、運用開始後の改善を支援する。
2050年の収入ほぼ変わらない
出典と前提
出典
- 内部監査人 - 職業詳細(厚生労働省 job tag)、2026年11月2日取得 職務、独立性、進路・資格、2025年全国年収525.2万円の確認
- Global Internal Audit Standards(The Institute of Internal Auditors)、2026年11月2日取得 2025年1月からの国際内部監査基準、ガバナンスと独立性の論点を確認
予測の前提
- 監査人が経営陣に直接報告できる独立性を維持する企業が一定数存在する。
- 購買・会計記録の継続的な自動照合は普及しても、結論の説明責任は人が担う。
- 監査部門への人員配分と業務範囲は企業規模や規制環境によって異なる。
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