建設・設備

潜水士

せんすいし

港湾施設、橋の水中部分、取水設備などに潜り、点検・清掃・補修・据付を行う専門職。送気や通信の設備と潜水計画を使い、水中での作業と安全な浮上を両立させる。

潜水前の点検で、男性の潜水士が、送気ホースにつながる潜水ヘルメットを支え、接続部分の状態を確認している。
ほかの職業とくらべる

はじめに

港の岸壁や橋の下など、水の中にある設備を調べて直す仕事です。水中で写真を撮り、貝などの付着物を落としたり、部品を取り付けたりします。水の深さによって体にかかる圧力が変わるので、陸の人と連絡を取り、決められた手順で安全に潜って戻ることがとても大切です。

2050年の見通し

2050年編集部の見立て

2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。

今の年収約467万円平均値・2025年の統計
2050年(物価の上昇を除いて)ほぼ変わらない幅:少し下がる〜上がる
収入
危険管理と近接補修ができる潜水士の希少性は賃金を支え得るが、水中ロボットによる潜水回数の減少と地域の発注予算制約があるため、実質収入は横ばいを中心に幅広く見た。
需要
港湾・取水設備の補修は残るが、広域点検や清掃の無人化によって人が潜る仕事の件数が減り得る。
人による差
人による差が広がる

ほかの職業の見通しを見る

今の潜水士の仕事

今
  • 水中作業の潜水計画水深、潮流、視界、作業時間を調べ、潜水方法、通信、緊急時の対応を地上班と決める。
  • 潜水装備と送気系の点検潜水服、呼吸用の送気設備、ホース、通話装置などの状態を潜水前に確認する。
  • 岸壁や橋脚の水中点検水中のひび割れ、鋼材の腐食、洗掘などを観察し、写真・寸法・位置の記録を残す。
  • 水中の清掃と補修補助取水口の付着物を除去し、部材の据付位置を確認して地上からの吊荷を誘導する。
  • 潜水後の安全確認と記録潜水時間や深さ、作業内容を記録し、体調の変化を確認して装備を整備する。

2050年、仕事はどう分担される?

2050年編集部の見立て

業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。

AI・ロボットが中心

  • 構造物表面の広域映像調査 確からしさ:中 水中ロボットと画像解析によって広い壁面の異常候補を探せるが、濁りや付着物は画像の品質を下げる。

AIと協働

  • 潜水計画の水深・潮流評価 確からしさ:中 過去の潮汐や海象の予測は計算できても、実際の海面と水中の状態を現場で確かめる必要がある。
  • 狭い取水口の付着物除去 確からしさ:中 単純な清掃はロボットが担えるが、配管まわりの接触感や入り組んだ形状は専門家の操作・作業が残り得る。

人が中心

  • 機械で把握しきれない欠陥の近接確認 確からしさ:中 濁った水中で金属の腐食や部材の緩みを手で確かめる作業は、遠隔センサーだけで再現しにくい場合がある。
  • 潜水の中止・浮上の判断 確からしさ:高 送気・通信の異常や急な潮流変化では、潜水士と地上の指揮者が安全手順に基づき中止を決める責任が残る。

2050年の一日

2050年架空の一日

2050年、潜水士の一日(架空)

船の甲板を渡る風に、潮のにおいが混じっている。三十代の潜水士・陽介は、港の取水設備を調べる仕事に向けて送気ホースの接続を確かめていた。水中ロボットが前日に撮った映像には、取水口の格子の一部が見えにくくなるほど付着物が映っていた。今日は人が近づき、格子の状態と固定金具を確認する。

地上班と通話試験を終えると、陽介は水面からゆっくり降りた。水の中は茶色く濁り、手を伸ばしても指先がぼんやり見えるほどだ。ライトで照らすと、格子に貝が厚く付いていた。ロボットが示した傷の位置に手を当てるが、金属の割れではなく、付着した殻の筋だった。陽介は位置を読み上げ、地上班に記録してもらった。

取水口の奥では細い繊維状のごみが金具に絡んでいた。機械のアームは届かなかったため、陽介が工具で少しずつ外した。作業の途中で潮の流れが強くなり、ホースが格子に寄り始めた。陽介が地上班に状況を伝えると、監督者から作業中断の返事が来た。残った箇所は翌日の別の方法で調べることになった。

決めた手順で浮上し、甲板に戻る。装備を外した陽介は、潜水時間と水深を記録し、通話の聞こえ方や潮流の変化を地上班と振り返った。設備を全部直せた日ではない。それでも、水の下で何が起きているかを確かめ、無事に帰ってくることが、次の補修を始めるための仕事になっている。

収入

平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。

今の年収

今統計

約467万円(年収・平均値)

調査
令和7年賃金構造基本統計調査(job tag掲載の年収)
調査年
2025年
対象
job tag『潜水士』に表示される広い『その他の建設の職業』等の職業分類に含まれる雇用労働者であり、潜水士のみの年収平均を示さない。
税・賞与
税・社会保険料を引く前、賞与を含む
  • job tag『潜水士』の全国年収466.9万円(2025年)を円換算した。職業分類が広く、潜水作業だけの平均ではない。
  • 水深や作業方法、沖合・港湾・河川などの現場、潜水手当や出張手当によって金額が変わる。
  • 潜水士免許は水中作業を安全に行うための資格であり、取得だけで収入や仕事が保証されるものではない。
  • 企業の雇用者と独立請負では手当・装備費・船舶費・保険費用の扱いが異なるため、額面年収を単純比較できない。

収入を動かすもの

2050年編集部の見立て

AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。

  • 岸壁・橋脚・取水設備の維持更新上がる方向

    海や川の中にある古い設備を直す仕事は、これからも必要です。

    大人向けの詳しい説明

    港湾と取水設備の維持管理は現場需要を支えるが、国や自治体、電力・水道事業者の工事予算が前提となる。

  • 水中ロボットと映像解析下がる方向

    広い場所を調べる仕事は、潜らずにロボットでできる部分が増えます。

    大人向けの詳しい説明

    遠隔操作型の水中機器が点検や清掃に入ると潜水回数は減り得る。一方、濁りと潮流、狭い構造物の影響は残る。

  • 潜水免許と現場の安全管理上がる方向

    水の中で安全に作業できる専門家の経験が大切になります。

    大人向けの詳しい説明

    潜水士免許に加えて送気・通信や潜水計画の実務経験が必要であり、熟練者の供給が減れば技能の価値を支える。

  • 工事現場の場所と季節どちらにも動きうる

    港や川の場所によって、潜れる日も仕事の量も変わります。

    大人向けの詳しい説明

    波浪・潮流による作業可能日数と、港湾施設の集中する地域への出張負担が、年間の稼働と賃金に差を生む。

2050年の3つのシナリオ

2050年編集部の見立て

未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。

  1. 老朽港湾施設の近接補修が続く

    条件岸壁や取水設備の補修予算が維持され、ロボットでは届きにくい箇所の作業が多い。

    起きそうなこと免許と経験を持ち、安全管理ができる潜水士の仕事と単価が支えられる可能性がある。

  2. 水中ロボットの遠隔作業が広まる

    条件濁水に強いセンサーと作業用アームが普及し、検査と簡単な清掃の多くを遠隔で行える。

    起きそうなこと人が潜る回数は減り、複雑な補修とロボットの運用を兼ねる人材に仕事が移る。

  3. 地域の工事予算が制約される

    条件人口減少地域で岸壁や河川施設の更新範囲が絞られ、遠隔拠点から専門班が派遣される。

    起きそうなこと現場数の少ない地域では収入の安定が難しくなり、複数地域への出張が増え得る。

働き方と暮らし

2050年編集部の見立て

人手は足りる? 余る?

橋脚、岸壁、取水口などの設備は水中部分の点検と補修が必要で、専門技能を持つ潜水士が残る領域がある。視界の悪い場所や狭い構造物での近接確認は難しく、水中ロボットがすべての現場をすぐ代替するわけではない。

一方、広範囲の映像点検や単純な清掃は無人機に移り、人が水に入る頻度が減る可能性がある。港湾・河川工事の予算や更新の地域差も大きい。人数需要は小幅減を中心としながら、資格と高度な作業経験を持つ人が不足する場合を想定して幅を広く取った。

働き方

港湾工事や水中設備点検の会社などに所属し、岸壁、橋脚、水力・取水施設、河川の構造物で作業する。潜水士だけで完結せず、地上の監督者、送気担当、船の乗組員などと一組になって作業計画・通信・救援体制を整える。

海の状態や水温で実施日が変わり、早朝や夜間の作業もあり得る。現場への出張が多い働き方もある。潜水の前後には装備の点検、潜水記録、体調確認が必要で、実際に潜る時間だけが勤務時間ではない。

この仕事に近づくには

今

進路と資格

  1. 高校や専門学校などで機械・土木・潜水の基礎を学ぶ入職までの学歴は一律ではない。土木、海洋、機械や水中作業の専門訓練を学び、潜水関連会社で実務経験を積む道がある。
  2. 国家資格の潜水士免許を取得する安全衛生技術試験協会の潜水士試験は筆記試験で、潜水業務に必要な法令・知識を問う。受験資格は限定されないが、免許の交付は18歳以上であることを確認する。
  3. 送気潜水と水中工事の実地訓練を積む潜水士免許とは別に、勤務先で使う潜水方式や工具、地上との通信、緊急時の手順を指導のもとで学び、水中の点検・補修業務を経験する。

今から伸ばしたい力

  • 潜水前に送気装置・ホース・通話装置を点検する力
  • 濁った水中で岸壁や取水口の位置を把握する空間認識力
  • 潮流や水深、潜水時間を考え安全に作業を中止する判断力
  • 腐食・ひび・付着物を見分け近接点検を記録する観察力
  • 水中から地上班へ位置と状態を短く正確に伝える通話技術

出典と前提

最終確認日
2026年11月2日

出典

予測の前提

  • 港湾と取水設備に水中での近接点検・補修を要する部分が2050年も残る。
  • 水中ロボットの利用は増えるが濁水・潮流・狭い構造物への対応には限界が残る。
  • 地域のインフラ更新予算と資格・実務経験を持つ潜水士の供給によって収入は変わる。

このページの更新

  • 初稿を公開

ラベルの意味や予測の限界は「予測の読み方」で説明しています。