ものづくり・研究

セラミックスの技術者

せらみっくすのぎじゅつしゃ

精密な原料粉末を成形・焼成し、耐熱性、電気絶縁性、耐久性などを持つファインセラミックス部品を開発・製造する技術者。粉の粒子径や配合、焼成温度を調整し、収縮やひび割れを防ぎながら性能と歩留まりを高める。

開発室で、男性のセラミックス技術者が、白い試験片を保持台に置き、測定器で厚さを確認している。
ほかの職業とくらべる

はじめに

とても細かい粉を材料に、熱や電気に強い特別な部品をつくる仕事です。粉を混ぜて形をつくり、高い温度の炉で焼きます。焼くと部品が小さくなったり曲がったりするので、粉の混ぜ方や焼く温度を何度も試して、ねらった大きさと強さに仕上げます。

2050年の見通し

2050年編集部の見立て

2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。

今の年収約612万円平均値・2025年の統計
2050年(物価の上昇を除いて)少し上がる幅:下がる〜上がる
収入
難しい部品の原料配合、欠陥の原因解析、焼成条件の開発は育成に時間がかかり、技術者が評価される余地がある。一方、高温設備の費用や自動化による価格競争は賃金を抑え得るため実質収入は小幅増を中心にした。
需要
情報通信やエネルギー向けの耐熱・絶縁部品に用途拡大の可能性がある。量産現場の省人化と海外への生産移転もあり得るため、専門分野全体として小幅増を中心に幅を残した。
人による差
人による差が広がる

ほかの職業の見通しを見る

今のセラミックスの技術者の仕事

今
  • 原料粉末の粒子径と配合の設計製品に必要な強さや絶縁性に合わせ、原料粉末の種類、粒子径、水や結合剤の割合を検討する。
  • ミルによる混合とスラリーの調製粉末と液体をミルで混合し、粒子の分散状態や粘度を測定して均一な泥状材料をつくる。
  • 造粒・成形条件の設定スプレードライヤーで顆粒にした材料を型に詰め、加圧条件と成形後の密度を管理する。
  • 焼成収縮を見込んだ炉温度の調整炉内の温度分布や保持時間を変えて試験し、焼いた後の寸法ずれや割れを減らす。
  • 研磨・寸法検査と物性評価焼成した部品を研磨し、寸法、耐熱性、機械的強さ、絶縁性能などを測定する。

2050年、仕事はどう分担される?

2050年編集部の見立て

業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。

AI・ロボットが中心

  • 多条件の配合と焼成結果の予測 確からしさ:中 過去の実験データを使って粒子径や温度条件の候補を絞る仕事は自動化しやすい。ただし新しい粉末の性質は実物で確かめる必要がある。

AIと協働

  • スプレードライヤーの造粒監視 確からしさ:中 水分量や粉の大きさを装置が連続測定して調整しても、粉末の付着や異常な詰まりは実機の確認が必要になる。
  • 炉の温度分布と収縮率の調整 確からしさ:中 炉内センサーと過去の焼成結果から設定を提案できるが、製品形状ごとの収縮や反りは試験で確認する。

人が中心

  • 焼結不良の断面観察と原因追究 確からしさ:中 微細なひび割れや内部の空隙がどの工程で生じたか、顕微鏡観察と工程知識を結びつけて考える必要がある。
  • 顧客部品向けの材料・加工法の決定 確からしさ:高 性能、寿命、加工費、歩留まりのどれを優先するかは使い方を聞いた上で試験結果を評価する仕事になる。

2050年の一日

2050年架空の一日

2050年、セラミックスの技術者の一日(架空)

焼き上がった白い円筒を測ると、設計した寸法よりほんの少し細かった。30代の材料技術者・直人は、ノギスを机に置いて深く考える。電子部品に使う絶縁体の試作品は、粉を押し固めて高温で焼く。焼成すると材料は縮むが、その縮み方は粉の大きさや混ぜ方によって変わる。今日の試作品は強度試験を通っていても、取り付ける部品に合わなければ使えない。

午前、直人は原料の記録をさかのぼり、ミルで粉を混ぜた時間とスラリーの粘度を比較した。予測ソフトは炉の温度を少し下げる案を出したが、下げすぎれば必要な強さが出なくなる。直人は焼いた製品の断面を顕微鏡で観察する。小さな空隙の数も普段と違う。焼き方だけではなく、成形する前の粉の状態が関係しているかもしれない。

午後、成形担当と一緒にスプレードライヤーの設定を確認した。乾燥後の顆粒の大きさが、いつもの範囲の端に寄っている。直人は水分量の条件を二つだけ変えた少量の試作を提案した。何十通りも一度に試すより、原因を切り分けられる試験にする。成形体を取り出して重さと密度を測り、翌日の焼成炉の空き時間を確保した。

退勤前、直人は顧客に寸法の結果と再試作の予定を伝えた。作り直しを急ぐだけなら、同じ失敗を繰り返すことがある。どの工程をどう変え、強さと寸法を両立させるかを言葉にした。作業着に付いた白い粉を払うと、工場の窓から夕日が差し込んでいた。直人は明日の試験で見る数字を手帳に三つ書き、試験片のラベルを確認して帰った。

収入

平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。

今の年収

今統計

約612万円(年収・平均値)

調査
令和7年賃金構造基本統計調査(job tag掲載の年収)
調査年
2025年
対象
job tag「ファインセラミックス製造技術者」に対応する『その他の開発技術者』『その他の製造技術者』等の雇用労働者。セラミックス専門技術者のみの統計ではない。
税・賞与
税・社会保険料を引く前、賞与を含む
  • job tag「ファインセラミックス製造技術者」の2025年全国年収611.9万円を円換算した。広い職業分類の値であり、セラミックスの技術者だけの平均ではない。
  • 量産の工程技術者、研究開発、製品の品質保証で仕事内容・昇進経路・給与体系が異なる。
  • 電子部品・自動車・エネルギーなど製品分野、企業規模、経験年数、地域によって収入は違う。
  • 額面年収であって、税・社会保険料の控除後の手取りや独立事業者の事業所得ではない。

収入を動かすもの

2050年編集部の見立て

AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。

  • 耐熱・絶縁材料の多用途化上がる方向

    熱や電気に強い部品が必要な製品が増えると、材料を考える仕事が広がります。

    大人向けの詳しい説明

    電子、輸送、エネルギーなどの用途で性能向上の余地があり、試作と材料評価への発注が増える条件がある。

  • 原料配合と焼成条件の自動最適化下がる方向

    いつも同じ形の部品をつくる工程は、機械が調整しやすくなります。

    大人向けの詳しい説明

    センサーと予測技術で定型部品の歩留まり改善が進めば、人が担う反復試験や量産調整の時間が減る可能性がある。

  • 焼成炉の電力・燃料費どちらにも動きうる

    高い温度で焼くには多くのエネルギーが必要なので、費用の変化が仕事に影響します。

    大人向けの詳しい説明

    電気炉・ガス炉の運転費と更新投資が事業採算を左右し、生産性が上がっても賃金に分配されるとは限らない。

  • 熟練者の試作・欠陥解析技能上がる方向

    ひび割れや寸法のずれを調べ、原因を見つけられる人が大切です。

    大人向けの詳しい説明

    新素材や難形状では原料・成形・焼成の条件を横断して不良の原因を切り分ける人材が価値を持つ可能性がある。

2050年の3つのシナリオ

2050年編集部の見立て

未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。

  1. 高温・高耐久部品の用途が広がる

    条件電子、電力、輸送関連の装置で耐熱性・絶縁性の高い部品が必要になり、新素材の試作が増える。

    起きそうなこと配合や焼成条件を決められる技術者の専門性が評価される可能性がある。

  2. 試作と量産の一部が自動最適化される

    条件原料粉末の検査から焼成まで工程データが連結され、標準部品の条件設定が機械に移る。

    起きそうなこと定型工程の担当人数は減り得るが、難しい形状の収縮や欠陥の原因を解く人への需要は残る。

  3. 電力費と国際競争が製造拠点を変える

    条件高温炉に必要なエネルギー費と海外製品の価格競争が強まり、国内製造の採算が悪化する。

    起きそうなこと工場の集約や生産移転が進めば地域によって雇用と報酬が下がる可能性がある。

働き方と暮らし

2050年編集部の見立て

人手は足りる? 余る?

ファインセラミックスは天然の粘土を焼く陶磁器とは異なり、高度に調整した粉末から耐熱性、絶縁性、耐摩耗性などを備えた部品をつくる。job tagは情報通信、自動車、エネルギー、環境などの用途を挙げている。こうした部品が使われる機器の高度化は、新材料の試作や品質評価を担う技術者の仕事を支える。

ただし用途の増加が国内雇用の増加と同じとは限らない。高温炉の電力費、世界の製造拠点の競争、標準部品の成形・焼成の自動化によって、必要人数や給与の条件が変わる。需要は小幅増を中心に見つつ、量産担当と材料開発担当、勤務地によって差が広がると考えた。

働き方

材料メーカーの研究開発室、セラミックス部品工場の工程設計・品質管理部門などが主な勤務先になる。製造技術者は原料のミル、スプレードライヤー、成形機、ガス炉・電気炉を使う現場と試験室を行き来する。試作を担当する人は顧客の寸法・性能条件を聞いて実験を重ねる。

研究開発は日勤が中心の職場もあるが、焼成炉の運転や量産工程に近い担当は設備の予定や交代制に合わせることがある。焼成や冷却には時間がかかり、短い試作でも数日かけて結果を見る場合がある。高温設備の安全管理や粉体の取り扱いを学ぶことも必要になる。

この仕事に近づくには

今

進路と資格

  1. 高校で化学・物理・数学を学ぶ粉末や熱の性質を理解するために、結晶、化学反応、熱、測定の基礎を学ぶ。
  2. 高専5年・大学4年などで材料を専攻する材料工学、応用化学、無機材料、機械工学などで粉体、成形、焼結、物性評価の基礎を学び、実験に取り組む。
  3. 研究開発または工程技術の現場で経験を積む製造設備の研修、安全教育、品質管理の実務を重ねる。共通の必須国家資格はないが、職場で担当する設備や安全管理に応じた資格・教育が必要になる。

今から伸ばしたい力

  • 粉末の粒子径とスラリーの分散状態を理解する力
  • 成形密度と焼成収縮の関係を見積もる力
  • 顕微鏡で空隙や微小なひび割れを調べる力
  • 強度・絶縁性などの評価結果から配合を改良する力
  • 高温炉と粉体作業の安全手順を守る力

出典と前提

最終確認日
2026年11月1日

出典

予測の前提

  • 2050年も電子・輸送・エネルギー分野で機能性セラミックス部品が使われ続ける。
  • 定型部品の製造工程は自動化するが、新材料の試作と収縮・欠陥解析には人が携わる。
  • 炉のエネルギー費、材料調達、国内外の設備投資条件が就業地域と賃金に影響する。

このページの更新

  • 初稿を公開

ラベルの意味や予測の限界は「予測の読み方」で説明しています。