建築士
けんちくし
住宅や学校、店舗などの建物を設計し、工事が図面どおりに進むか確かめる仕事。依頼者の要望と敷地、予算、法律の条件をまとめて図面にし、耐震性や省エネ性能も示す。

はじめに
家や学校などの建物の設計図をかく仕事です。住む人の話をよく聞き、部屋の並びや窓の位置を考えて、図面や模型で見せます。地震に強いか、冬でもあたたかいかも計算します。工事が始まったら現場に行き、図面どおりにできているかを確かめます。
2050年の見通し
2050年の収入が、この職業の今の収入と比べてどう変わりそうかを示します。物価の上昇を差し引いた実質の変化です。
- 収入
- 所属する一級建築士の高齢化と、2025年の法改正で増えた構造・省エネの確認は、責任を負える建築士の交渉力を強める。一方で設計の自動化と住宅設計料の価格競争が報酬を押し下げるため、大きくは上がらずやや上向きを中心にした。
- 需要
- 新築の減少と作業の自動化は設計の人手を減らすが、小規模住宅の審査の厳格化や既存建物の改修・用途変更は一件ごとの判断を増やす。両方の力が釣り合う中心を置いた。
- 人による差
- 人による差が広がる
今の建築士の仕事
- 敷地調査と法規の確認敷地の広さや道路との関係を調べ、用途地域による建物の高さ・面積の制限を確かめる。
- 基本設計(間取りと外観の提案)依頼者の暮らし方や予算を聞き取り、図面、模型、完成予想図で案を示して方向を決める。
- 実施設計(意匠・構造・設備の図面)工事に使う詳細な図面をまとめ、構造計算や省エネ性能の計算を行う。
- 建築確認申請建築基準法などに適合することを示す図書を作り、自治体や指定確認検査機関の審査を受ける。
- 工事監理工事が設計図どおりに行われているか現場で確かめ、施工者からの質問に答え、変更の可否を判断する。
2050年、仕事はどう分担される?
業務ごとに、2050年にだれが主に担いそうかを3つに分けました。職業そのものが「なくなる確率」ではありません。
AI・ロボットが中心
- 構造・省エネ性能の計算 確からしさ:高 壁の量や断熱性能の計算はすでにソフトが中心で、案を動かすたびに自動で結果が出るようになると考える。入力条件と結果の妥当性は人が確かめる。
- 法規の照合と申請図書の作成 確からしさ:中 高さ制限や面積の照合、書類の作成は自動化しやすい。ただし設計図書に記名し責任を負うのは建築士で、解釈が分かれる部分の判断は残る。
AIと協働
- 間取り案と図面の作成 確からしさ:高 敷地条件から多くの案を出すことは道具が得意になるが、どの案を選び、どこを直すかを決めるのは人の仕事になる。
人が中心
- 暮らし方の聞き取りと合意 確からしさ:高 家族の生活習慣や言葉にしにくい望みをくみ取り、予算や性能との折り合いを一緒に決めるには対話が欠かせない。
- 工事監理と現場での判断 確からしさ:中 写真や計測データで離れた場所から確かめる範囲は広がるが、改修で壁を開けたときの想定外や施工の不具合には現場での判断が要る。
2050年の一日
2050年、建築士の一日(架空)
縮尺五十分の一の模型は、両手に載るほどの大きさだ。白いボール紙の屋根を外すと、二階の子ども部屋と、居間の上に開いた吹き抜けが見える。建築士の健吾は、打ち合わせ机の真ん中にそれを置いた。
向かいには三人家族が座っている。設計の道具は、敷地の日当たりや風の向き、法律で決まる高さの制限を読み込み、間取りの案を十数通り出してくる。壁の量が地震に足りるか、冬の暖房にどれだけエネルギーが要るかも、案を動かすたびに数字が変わる。計算の多くは道具に任せられるようになった。
けれど、家族が決めかねているのは数字ではない。夫は在宅で働く部屋を求め、妻は台所から子どもの様子が見えることを望む。小学生の娘は模型の階段を指でなぞり、「ここで本を読みたい」と言った。健吾は踊り場を少し広げ、低い窓を一つ足す案をその場で描いた。窓を増やせば断熱の数値はわずかに下がる。どこまでなら受け入れられるか、数字と暮らしの両方を並べて家族と話し合った。
夕方、構造を担当する建築士と画面越しに確かめ合う。道具は基準を満たすと示しているが、吹き抜けの周りは揺れ方が偏りやすい。健吾は梁を一本加え、模型にも細い棒を足した。この家の設計者として図面に名前を記すのは自分だ。来週の打ち合わせまでに、娘の読書の場所を模型の中に作っておくと約束した。
収入
平均の年収だけでは、その仕事の収入は分かりません。働き方や経験、地域、独立しているかどうかで大きく変わります。
今の年収
約679万円(年収・平均値)
- 「建築設計技術者」の全国年収679.1万円を円に換算した。建築士の資格を持つ人だけの集計ではなく、資格のない設計スタッフや構造・設備の設計者も含まれ得る。
- 自分の設計事務所を開いている建築士の事業所得は含まれない。小さな事務所の主宰者は案件の数で収入が大きく変わる。
- 大手の設計事務所や建設会社の設計部、住宅メーカー、小規模な設計事務所で差が大きい。一級建築士の資格手当の有無でも変わる。
- 自治体で建築確認や公共建築を担当する建築職の公務員は、この値とは別の給与体系で働く。
収入を動かすもの
AIで仕事が速くなっても、収入が上がるとは限りません。何が収入を押し上げ、何が押し下げるかを並べました。
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建築士の高齢化上がる方向
設計事務所で働く一級建築士は、60歳以上の人が多くなっています。若い建築士は大切にされそうです。
大人向けの詳しい説明
建築士事務所に所属する一級建築士のうち60歳以上は約44%(2024年)で、2008年の約12%から増えた。国土交通省の資料は、今の傾向が続けば所属建築士の数が30年後に半分ほどになると見込んでいる。
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2025年の法改正上がる方向
2025年から、小さな家でも地震への強さや省エネの性能をきちんと確かめるきまりになりました。
大人向けの詳しい説明
2025年4月から原則すべての新築で省エネ基準への適合が義務になり、4号特例の縮小で木造2階建て住宅も構造の審査対象になった。小規模な住宅でも計算と図書作成の仕事が増えている。
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設計作業の自動化下がる方向
図面をかいたり計算したりする作業は、道具がどんどん速くしてくれます。
大人向けの詳しい説明
間取り案の生成、法規の照合、性能計算が自動化されると、一件あたりの作業時間が減る。浮いた時間が設計料の値下げに回るか、提案や監理の質に回るかで収入への影響が変わる。
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新築の減少と設計料の決まり方どちらにも動きうる
家を新しく建てる人が減ると、設計の仕事の中身も変わります。
大人向けの詳しい説明
人口と世帯の減少で新築は減る方向にある。設計料は工事費や延べ面積に結びつけて決まることが多く、住宅メーカーでは建物の価格に含まれて見えにくい。国が業務報酬の目安を示しているが、実際の額は依頼者との交渉で決まる。
2050年の3つのシナリオ
未来の収入はひとつの数字では言えません。条件ごとに分けて、どうなれば収入がどう動くかを考えます。
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設計と監理の責任に対価がつく
条件設計事務所に所属する建築士の高齢化が進み、厳しくなった構造・省エネの審査に対応できる人が足りなくなる。
起きそうなこと設計料の水準が見直され、責任を負って記名できる建築士の実質収入が上向く可能性がある。
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自動化で一件の手間が減る
条件図面、計算、申請の作業を設計の道具が大きく省き、住宅の設計料が定額や低価格に寄っていく。
起きそうなこと一人で多くの案件を担えるが、収入は案件の数と依頼者を集める力しだいになり、人による差が開く。
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新築が減り改修の専門家へ
条件新築の着工が減り、既存住宅の耐震・断熱改修や、建物の用途変更が仕事の中心になる。
起きそうなこと古い建物を調べて直す知識を持つ人は仕事を得やすいが、工事費の小さい改修では設計料も低くなりやすい。
働き方と暮らし
人手は足りる? 余る?
人口と世帯の減少で、新しく建つ住宅は少なくなる方向にある。設計の道具が図面や計算を速くすることで、一つの案件に必要な人手も減っていく。新築の設計だけを見れば、仕事の量は縮みやすい。
一方で、2025年の法改正で小さな住宅にも構造と省エネの確認が求められるようになり、古い建物の耐震・断熱改修や、空き家や店舗を別の用途に変える計画も増えている。改修は現地を調べないと条件が決まらず、一件ごとの判断が多い。所属する建築士の高齢化で担い手も減るため、仕事全体は今と同じ程度を中心とし、新築中心か改修や監理に強いかで差が出ると考える。
働き方
設計事務所、建設会社の設計部、住宅メーカー、自治体の建築職など働く場所は幅広い。事務所で図面や模型をつくる時間が長く、依頼者との打ち合わせ、敷地の調査、工事現場での監理のために外へ出ることも多い。job tagでは月の労働時間は166時間とされるが、申請や着工の期限の前は作業が集中しやすい。
働きながら建築士試験の勉強をする人が多く、一級建築士の試験は学科と設計製図の二段階で準備に時間がかかる。経験を積んで自分の事務所を開く人もいるが、その場合は設計だけでなく仕事を得ることや事務所の経営も担う。打ち合わせや図面の確認はオンラインでも行われるようになってきた。
この仕事に近づくには
進路と資格
- 大学・専門学校・工業高校などで建築を学ぶ国が指定する科目を修めて卒業すると建築士試験を受けられる。大学などの卒業で一級・二級・木造、高校の建築系学科の卒業で二級・木造の受験資格が得られる。
- 建築士試験に合格する一級・二級・木造建築士の試験は学科と設計製図からなる。2020年の制度改正で実務経験は受験の条件から免許登録の条件に変わり、卒業後すぐに受験できるようになった。
- 実務経験を積んで登録し、設計と監理を担う学歴に応じた年数の実務経験を経て免許を登録する。木造建築士・二級建築士は建てられる規模や構造に制限があり、大きな建物や高い建物の設計・監理には一級建築士が必要になる。
今から伸ばしたい力
- 空間を立体で考え、図面と模型で表す力
- 建築基準法などの法令を読み解く力
- 構造力学や環境工学の土台になる数学・物理
- 依頼者の言葉から暮らし方を聞き取る力
- 計算や自動の判定結果をうのみにせず確かめる力
関連する職業
出典と前提
出典
- 建築設計技術者 - 職業詳細(job tag)(厚生労働省)、2026年10月30日取得 仕事内容・入職経路と資格・労働時間・全国年収を参照。将来像はこれらの現状を起点にした条件付きの見立て。
- 建築分野の担い手の動向について(建築分野の中長期的なあり方に関する懇談会 第2回 資料4)(国土交通省)、2026年10月30日取得 建築士事務所に所属する一級建築士の年齢構成(60歳以上約44%)と、所属建築士数の将来見込みを参照。
- 建築士法の一部を改正する法律(平成30年法律第93号)等について(国土交通省)、2026年10月30日取得 2020年3月施行の改正で、実務経験が建築士試験の受験要件から免許登録の要件に改められたことを参照。
- 【令和7年(2025年)4月施行】建築基準法・建築物省エネ法の改正について(札幌市)、2026年10月30日取得 2025年4月からの省エネ基準適合義務化と4号特例の見直し(新2号建築物の構造審査)を参照。
- 建築士の役割(浜松市)、2026年10月30日取得 一級・二級・木造建築士が設計・工事監理できる建築物の範囲を参照。
予測の前提
- 2050年も一定規模以上の建物の設計と工事監理は、建築士の資格を持つ人が責任を負う。
- 設計の道具が計算や照合を担っても、設計図書への記名と説明の責任は人に残る。
- 2050年の新築着工数や設計料の水準は確定させない。
このページの更新
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ラベルの意味や予測の限界は「予測の読み方」で説明しています。

