医療と介護は、2050年にどうなっている?

2050年、病院や介護施設では誰がどんな仕事をしているのでしょうか。ロボットが手伝う場面が増えたら、人の役割は小さくなるのでしょうか。高齢化と仕事の変化を分けて考えてみましょう。
今わかっていること
総務省「人口推計」の2025年10月1日現在の確定値(内閣府『令和8年版高齢社会白書』掲載)では、日本の65歳以上の人は約3,622万人でした。年を重ねても元気に暮らす人はいます。高齢者が増えることは、全員が介護を必要とすることと同じではありません。ただ、病気の治療や毎日の生活を支えるサービスについて考える必要は大きくなります。
医療と介護は似ていますが、役割が違います。医療は診察、検査、治療などを通じて健康を守ります。介護は、食事、移動、着替えなど、生活の中で必要な手助けをします。両方が必要な人もいます。病院だけでなく、自宅や地域の施設で支援を受けることもあります。
厚生労働省が2024年7月に発表した「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」では、2022年度の介護職員数約215万人に対し、2026年度の必要数は約240万人、2040年度は約272万人と推計されました。これは2024〜2026年度の自治体の介護保険事業計画にあるサービス見込み量などをもとに、都道府県の推計を集めた数字です。現在の職員数や将来必ず働く人の数ではありません。
現在の仕事は、人が直接支援することだけではありません。利用者の状態を記録し、家族や医師に連絡し、薬や食事に気を配り、事故を防ぐために情報を共有する仕事もあります。相手の気持ちや体調によって、同じ手順が使えない日もあります。
2050年に向けた見通し
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」では、2050年の65歳以上の人口を約3,888万人と推計しています。2020年の国勢調査を出発点とし、出生、死亡、海外との人口移動に仮定を置いた「出生中位・死亡中位」の条件での計算です。想定が変われば数字も変わります。
高齢者の人数だけで、医療費や介護職員の人数が決まるわけではありません。健康に暮らせる期間、家族の状況、病気の治療方法、地域のサービスの作り方などによって、必要な支援が変わります。また、2040年度の介護職員必要数の推計を、そのまま2050年に延ばすことはできません。
厚生労働省は介護分野で、ICT(情報を記録・共有するデジタル技術)や介護ロボットの導入を支援しています。見守りや記録、移乗の補助などに道具を利用し、働く人の負担を減らそうとする取り組みです。ただし機器を購入するだけでは使いこなせません。操作を学び、故障時の対応を考え、利用する人が不安にならないよう説明することも必要です。
見方が分かれていること
病院を増やすか、自宅や地域で支えるか
病院や施設には、専門的な機器と人員を集めて治療やケアを提供できる強みがあります。急な病気や重い症状では、専門的な設備が必要です。一方、住み慣れた場所で暮らしたい人には、在宅医療や訪問介護などの仕組みが大切です。
ただし、自宅で支える場合も、家族だけに負担をかけてよいわけではありません。訪問する人の移動時間、夜間の連絡先、住まいの設備などを整える必要があります。病院と自宅のどちらが正しいかではなく、本人の希望と安全、地域の人員に合わせた組み合わせが課題です。
ロボットを増やせば人手不足は解決するか
作業を機械で補助すれば、身体の負担や記録の手間を減らせる可能性があります。限られた人数でもサービスを続けやすくなるかもしれません。
一方、利用者の体調の変化に気づくことや、気持ちを受け止めることは単純な作業ではありません。誤作動や個人情報の扱いにも注意が要ります。導入費用と研修時間を誰が負担するのかも考えなくてはなりません。
仕事への影響
医療の仕事では、検査画像の確認補助や文書の整理などをデジタル技術が支える可能性があります。それでも、診断や治療の方針を決める責任、患者に分かる言葉で説明すること、別の病気の可能性を考えることは重要です。医師が使う道具が増えても、医師の役割は一つの作業に限られません。
介護の仕事では、利用者と話す時間を確保しながら、記録や引き継ぎを効率化する方法が課題になります。複数の職種が同じ情報を見られれば、連絡漏れを減らせるかもしれません。利用者本人の気持ちを確かめる仕事は引き続き必要でしょう。
医療・介護で働く人の給料には、特別な仕組みがあります。公的医療保険や介護保険のサービスには、国が決める「診療報酬」「介護報酬」という価格の基準があります。必要な人が増えても、事業者が自由に料金を上げられるわけではありません。人手不足がすぐ賃上げにつながらない理由の一つです。一方、国が制度や報酬を見直すことで、働く環境が変わる可能性もあります。
地域差もあります。医師や介護職員、交通手段が十分にある地域と、移動に時間がかかる地域では、同じサービスを届ける方法が違います。人口が少ない場所ほど、訪問の順番や複数施設の連携が大切になるかもしれません。
考えてみよう
- 自分や家族が長く療養するなら、病院と自宅のどちらで、どんな支えがほしいですか。
- 介護ロボットに任せたい作業と、人にしてほしい作業を一つずつ挙げられますか。
- 医療や介護で働く人が長く働き続けるには、どんな環境が必要だと思いますか。