専門・ビジネス 想像の仕事
ネイチャーポジティブ・アナリスト
ねいちゃーぽじてぃぶ・あなりすと
企業の工場や原料の産地が、森や水、生きものにどう頼り、どう影響しているかを調べて数字にし、自然を回復させる計画と情報の公開を支える仕事になりそうだ。
はじめに
会社の工場や、原料をとる畑や森が、そこにすむ生きものや水にどんな影響をあたえているかを調べる仕事です。川の水を調べたり、空からの写真を見たりして、自然のようすを数字で表します。そして、自然を元気にするために会社が何をすればよいかを考えて伝えます。
今ある芽
実証や制度づくりが始まっていて、条件がそろえば広がりそうなものです。これまで企業が公表する環境の情報は、二酸化炭素の量が中心で、生きものや水への影響を測る方法は定まっていなかった。自然への影響を開示する国際的な枠組みや、生きものを守る土地を国が認める制度が広がれば、それを調べて数字にする専門家が必要になりそうだ。
- 自然への影響を開示する国際的な枠組み企業が自然への依存や影響、リスクを開示するための枠組み(TNFD)の提言が公表された。開示には現地の調査と分析を担う人が欠かせない。出典:TNFD publishes recommendations(Regulation Tomorrow(Norton Rose Fulbright))
- 自然共生サイトの認定新しい法律にもとづき、企業やNPOが生きものを守る土地を、国が自然共生サイトとして201か所まとめて認定した。土地の価値を調べて示す仕事につながりそうだ。出典:地域生物多様性増進法に基づく「自然共生サイト」の認定(令和7年度第1回)について(農林水産省)
2050年、どんな仕事をしている?
- 環境DNA調査の設計川や池の水に残る生きもののDNAを調べる調査の場所と時期を決め、地元の団体と採水して、どんな種がいるかを記録する。
- 原料産地の自然の地図化衛星画像や調達先のデータを重ね、原料がどの森や水源と関わっているか、どこで影響が大きいかを地図にする。
- 自然への依存と影響の評価工場が使う水の量や、農地の広がり方などを指標にして、自然に頼っている度合いと与えている影響を数字にまとめる。
- 回復計画の立案植林の場所、水の使い方の見直し、調達先の変更など、自然を回復させる手立てを、費用や効果の見込みとともに提案する。
- 開示レポートの作成分かったことと分からないことを分けて書き、投資家や地域の人が読んで判断できる報告書にまとめる。
2050年の一日
2050年、ネイチャーポジティブ・アナリストの一日(架空)
ペットボトル一本分の川の水に、その森にすむ生きものの痕跡が溶けている。三十代の健太は、飲料メーカーの工場の上流で、地元の自然保護団体の人と並んで沢に入り、水をろ過器に通していた。半年ごとに同じ五地点で水を汲み、環境DNAでどんな魚や両生類がいるかを調べている。
昼前に事務所に戻ると、前回の分析結果が届いていた。三年前に工場が水の使い方を見直してから、ある地点でサンショウウオの仲間の反応が出るようになっている。健太は喜ぶ前に、採水した日の天気と水量を確かめた。雨のあとで別の沢の水が混じった可能性もある。結論は、次の調査を待ってからにすると決めた。
午後は、同じ会社の調達部門との打ち合わせだった。紅茶の原料を買っている海外の産地で、衛星画像を見ると茶畑の端が少しずつ森に食い込んでいる。健太は画像を並べて見せ、産地の農家と森の境目を決める取り組みを、買い手として支える案を出した。調達の担当者は、値段だけでなく産地の記録も条件に入れる方向で検討すると言った。
夕方、健太は来月公表する報告書の下書きを開いた。うまくいったことだけを並べると、読む人の判断を誤らせる。だから、上流の生きものの結果は「変化の兆しがあるが、確かめるには時間がかかる」と書いた。画面を閉じる前に、次の採水日を保護団体に連絡した。
この仕事に近づくには
今からできること
- 中学理科の生物と、社会の地理を学ぶ。地域の生きもの調査や自然観察会に参加してみる。
- 高校生物と地理、数学の統計を学ぶ。生物分類技能検定などで、生きものを見分ける力をのばすのもよい。
- 大学生物学、生態学、農学部の森林科学、環境学、地理学などが入口になる。地理情報システム(GIS)や統計の授業をとっておくと強みになる。ビオトープ管理士などの資格も近い分野にある。
今から伸ばしたい力
- 生物や生態系への興味と、身近な生きものを観察する力
- 統計とデータ分析で、測った結果を正しく読み取る力
- 地図や衛星画像を重ねて考える力
- 分かったことと分からないことを分けて伝える誠実さ
- 企業の人と地域の人、両方と話ができる対話の力
近い「今の仕事」
この仕事に近いのは、今ある次の仕事です。今の年収や進路は、それぞれのページで見られます。
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ものづくり・研究 環境技術者 川や湖、大気、土壌などを調査し、汚染物質の濃度や水質の変化を測る技術者。採水や分析結果をもとに発生源を調べ、工場の排水処理、自治体の環境保全、地域の監視計画などを支える。
2050年の収入ほぼ変わらない -
専門・ビジネス 証券アナリスト 企業の決算書や業界の動向を調べ、株式・債券などの価値とリスクを評価する専門職。業績予想や企業価値の計算を行い、その根拠を投資家や運用担当者に報告する。
2050年の収入少し下がる -
公務・安全 自然保護官(レンジャー) 環境省の職員として国立公園や野生生物の生息地を守り、登山道の管理、希少種の調査、外来生物への対策、施設整備や開発行為の審査を行う。利用者、地元住民、研究者と協力し、自然の保全と持続的な利用を両立させる仕事だ。
2050年の収入ほぼ変わらない
出典と前提
出典
- TNFD publishes recommendations(Regulation Tomorrow(Norton Rose Fulbright))、2026年11月4日取得
- 地域生物多様性増進法に基づく「自然共生サイト」の認定(令和7年度第1回)について(農林水産省)、2026年11月4日取得
この仕事が広がる前提
- 企業が自然への影響を開示することが、投資家や取引先から広く求められるようになっていること。
- 環境DNAや衛星画像などで、自然の状態を比べられる形で測る方法が定まっていること。