ものづくり・研究 想像の仕事
水素サプライチェーン技術者
すいそさぷらいちぇーんぎじゅつしゃ
再生可能エネルギーの電気などで水素やアンモニアを作り、運び、工場や発電所、燃料電池の乗り物で安全に使えるよう、設備の設計と運用をつなぐ仕事になりそうだ。
はじめに
水素は、燃やしても二酸化炭素を出さない燃料です。この仕事は、風や太陽の電気で水素を作り、トラックや船で運び、工場や発電所、水素で走るバスなどで使えるようにする設備をつくって動かす仕事です。水素はもれやすく火がつきやすいので、安全のための点検をとても大切にします。
今ある芽
今ある技術や制度から見て、2050年には仕事として広がっている見込みが高いものです。水素は今も工場などで使われているが、作る費用が高く、燃料として広く行き渡る仕組みはまだ育っていない。2024年に水素社会推進法ができ、価格差を国が支える制度が始まった。各地で作る・運ぶ・使う設備がつながっていけば、その全体を見渡して安全に回す技術者が増えていく見込みがある。
- 水素社会推進法の成立2024年に水素社会推進法が成立し、低炭素の水素と化石燃料との値段の差を国が支援する制度ができた。値段の壁が下がれば、水素を扱う設備と人の需要が広がりそうだ。出典:Price-Gap Subsidy Program – Japan Enacts Act on Promotion of Hydrogen Society(King & Spalding)
- 工場の敷地で水素を作って使う風力発電の電気で工場の敷地内で水素を作り、そのまま供給する事業が検討されている。作る場所と使う場所が近い設備が増えると、両方を見る技術者が求められそうだ。出典:豊田通商、ユーラスエナジー、岩谷産業が愛知製鋼にてオンサイト型低炭素水素製造供給事業開始を検討(豊田通商)
2050年、どんな仕事をしている?
- 水電解装置の運転計画風や太陽の電気が多い時間に合わせて、水を電気で分けて水素を作る装置の運転時間を組む。
- アンモニア受け入れ設備の管理海外から船で届くアンモニアを港のタンクに受け入れ、温度と圧力を保ちながら必要な量だけ水素に戻す。
- 漏えい検知と保安点検配管やつなぎ目に置いたセンサーの記録を確かめ、定期的に手で検査して、わずかな漏れも見逃さない。
- 需要先への配送調整工場、発電所、燃料電池バスの水素ステーションなど、使う側の予定に合わせて運ぶ量と時刻を決める。
- 安全訓練の企画消防や近くの工場と合同で、漏れや火災を想定した訓練の筋書きをつくり、手順を見直す。
2050年の一日
2050年、水素サプライチェーン技術者の一日(架空)
午前六時、港の沖に白い船体が見えてきた。オーストラリアから液体のアンモニアを運んできた専用船だ。愛知県の港にある水素の受け入れ基地で、三十代の技術者、大輔は桟橋の管理室から双眼鏡をのぞいた。今日の受け入れ量は、この基地のタンクの三分の一ほど。船が岸に着くまでの二時間で、配管の弁の開け閉めの順番をもう一度確かめた。
荷下ろしが始まると、大輔の仕事は数字を見ることになる。タンクの温度、配管の圧力、そして百か所以上に置いた漏えいセンサーの値だ。アンモニアはにおいが強く、体に害もあるので、作業員は全員が検知器を身につけている。途中で一か所、センサーの値が少し上がった。大輔はすぐ現場の作業員に連絡し、つなぎ目を手持ちの検知器で調べてもらった。原因は朝露で計器が誤って反応したもので、記録に残して作業を続けた。
昼からは、基地の隣の工場で動く水電解装置の担当者と打ち合わせた。明日は風が強い予報で、風力発電の電気が余りそうだ。その分、水素を多めに作れる。大輔は、市内の燃料電池バスの営業所と、製鉄所のバーナーに回す水素の量を組み直し、配送トラックの出発時刻を一台ずつずらした。
夕方、来月の合同訓練の筋書きを、消防署の担当者と電話で詰めた。去年の訓練では、夜間の連絡に時間がかかった。今年は夜を想定に入れたい、と大輔は伝えた。荷下ろしを終えた船は、もう次の港へ向けて動き出していた。
この仕事に近づくには
今からできること
- 中学理科の化学分野(気体の性質、化学変化)と、エネルギー問題に関心を持つ。燃料電池の工作キットなどで、水素で電気が生まれる様子を確かめるのもよい。
- 高校化学(特に気体と反応)と物理を学ぶ。危険物取扱者や、高圧ガス製造保安責任者(丙種化学など)は年齢の制限がなく、高校生でも挑戦できる。
- 大学化学工学、機械工学、電気工学、エネルギー系の学科などで学ぶ。高専や工業高校からガス会社やプラント会社に入り、現場で経験を積む道もある。
今から伸ばしたい力
- 気体の性質と化学反応の理解
- 小さな異常を見逃さない注意深さ
- 電気・天気・需要の予定を組み合わせる段取り力
- 作る人・運ぶ人・使う人のあいだに立つ調整力
- 安全のルールを自分の言葉で説明できる力
近い「今の仕事」
この仕事に近いのは、今ある次の仕事です。今の年収や進路は、それぞれのページで見られます。
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ものづくり・研究 化学技術者 原料を反応させて樹脂、化学繊維、洗剤などをつくる工程を開発・改良する技術者。試作品の性質を測り、量産設備で安定して同じ品質に仕上げられる温度や配合、製造条件を決める。
2050年の収入ほぼ変わらない -
ものづくり・研究 プラント設計の技術者 工場や発電施設、水処理施設などの大型設備について、装置の配置、配管、温度や圧力、制御システムを設計する技術者。建設前の設計だけでなく、機器の調達確認や試運転にも関わる。
2050年の収入少し上がる -
ものづくり・研究 発電所の運転員 火力・水力・地熱などの発電所で、中央制御室の計器を見ながら発電機の起動・停止や出力調整を行う仕事。現場の巡回でポンプ、弁、配管などの状態を確かめ、電力を安定して届ける運転を支える。
2050年の収入ほぼ変わらない
出典と前提
出典
- Price-Gap Subsidy Program – Japan Enacts Act on Promotion of Hydrogen Society(King & Spalding)、2026年11月4日取得
- 豊田通商、ユーラスエナジー、岩谷産業が愛知製鋼にてオンサイト型低炭素水素製造供給事業開始を検討(豊田通商)、2026年11月4日取得
この仕事が広がる前提
- 低炭素の水素やアンモニアを作る費用が下がり、化石燃料と比べて選ばれるようになる。
- 港の受け入れ基地やパイプライン、ステーションなど、運ぶ・ためる設備が各地に整う。
- 水素とアンモニアを安全に扱うための基準が、大量に使う時代に合わせて整備される。