公務・安全 想像の仕事

防災デジタルツイン・アナリスト

ぼうさいでじたるついん・あなりすと

建物や道路、川を細かく再現した3Dの街の上で大雨や津波を何度も起こしてみて、どの道で逃げ、どの建物に上がればよいかを住民や自治体と一緒に決める仕事になりそうだ。

はじめに

コンピュータの中に本物そっくりの町をつくり、そこで大雨や津波が来たらどうなるかを試してみる仕事です。水がどこまで来るか、どの道が通れなくなるかを調べ、町の人が安全に逃げられる道や、上の階へ逃げこめる建物を地図や3Dの画面で分かりやすく伝えます。

今ある芽

芽が出はじめている

実証や制度づくりが始まっていて、条件がそろえば広がりそうなものです。今も浸水の予測やハザードマップづくりはあるが、作るのは専門の研究者やコンサルタントが中心で、結果は紙や平面の地図で配られることが多い。国が整備する3D都市モデルが全国に広がり、建物の高さや出入口まで入った街のデータを自治体が日常的に更新するようになれば、それを使って地域ごとの避難を一緒に考える専門職が求められるようになるかもしれない。

  • 全国の街を3Dで公開するPLATEAU国土交通省は都市の建物や道路を3Dで再現したモデルを整備し、誰でも使えるデータとして公開している。災害のシミュレーションを行う「土台」が公共のものとして用意され始めている。出典:コラム 3D都市モデルが新しい世界を創る―Project PLATEAU(プラトー)の取組(国土交通省(国土交通白書))
  • 垂直避難できる建物を3Dで探す郡山市では3D都市モデルを使い、浸水したときに上の階へ逃げられる建物を洗い出した。建物一つずつの高さまで考えた避難の検討は、この仕事の中心になりそうな作業だ。出典:防災の動き(3D都市モデルによる浸水リスクの可視化)(内閣府 防災情報のページ)
  • 高潮の深さを3Dで見せるハザードマップ江戸川区は高潮で浸水する深さを3Dで確かめられるハザードマップを公開している。住民が自分の家の周りを立体で見て理解できる伝え方が、すでに試されている。出典:3D都市モデルで高潮浸水リスクが確認できます(江戸川区)

2050年、どんな仕事をしている?

2050年想像の仕事
  • 街のモデルの更新と現地確認新しく建った建物や工事中の道路、ブロック塀などをデータに反映し、ずれがないかを現地を歩いて確かめる。
  • 浸水・津波・火災の条件を変えた試算雨の量や潮位、風向きなどの条件を何通りも変えてシミュレーションを走らせ、危険が大きくなる場面を洗い出す。
  • 建物ごとの避難先の評価マンションや学校、商業施設の階数や入口の高さを調べ、浸水時に一時的に上がれる場所として使えるかを判定する。
  • 住民向けの避難ルート説明会町内会や学校で3Dの画面を見せながら、家から避難先までの道で水がどこから来るかを一緒に確かめる。
  • 災害時の被害の見込みの速報実際に大雨が降っているときに観測データを取りこみ、数時間先に浸水しそうな地区を自治体の災害対策本部へ伝える。

2050年の一日

2050年架空の一日

2050年、防災デジタルツイン・アナリストの一日(架空)

「この塀、モデルに入ってないですね」。川沿いの細い道で、柚葉はタブレットの3D画面と目の前の景色を見比べた。去年建て替えられた家の前に、腰の高さほどのコンクリート塀ができている。市役所の防災課で働いて三年目の彼女は、今日の夕方に開かれる町内会の説明会に向けて、避難ルートの最終確認に来ていた。

塀を測ってデータに書き足し、庁舎に戻ってシミュレーションをやり直す。上流で一時間に百ミリの雨が二時間続いたという想定だ。画面の中で水が堤防の低いところからあふれ、路地に流れこむ。塀があると、水はその手前でせき止められて深くなり、高齢者の多い一角から避難所へ向かう道が三十分早く通れなくなった。柚葉は別の道を三本試し、少し遠回りでも高台の神社へ抜ける坂道がいちばん長く使えることを確かめた。

午後は、近くの五階建てマンションの管理組合と話した。浸水したとき、近所の人が三階の共用廊下まで上がれるようにしてほしいという相談だ。モデルで水の深さを見ると、一階の入口はひざ上まで水につかるが、外階段は最後まで使える。オートロックの扉をどうするか、誰が鍵を開けに行くかは画面では決められない。柚葉は管理組合の人と、次の訓練で実際に試してみることにした。

夜七時、公民館の大きな画面に町の3Dモデルが映ると、集まった住民から声が上がった。「うちの前、こんなに深くなるのか」。柚葉は塀の場所を指し、坂道のルートを示した。最後に手を挙げたのは、毎朝その道を散歩するという男性だった。「坂の途中、街灯が一本切れてるよ」。柚葉は礼を言ってメモをとった。夜の避難では、それも大事なデータになる。

この仕事に近づくには

今

今からできること

  1. 中学社会科の地理で地形図やハザードマップを読み、理科で天気や川のはたらきを学ぶ。自分の家から避難所までを実際に歩いてみるのもよい。
  2. 高校地理総合や地学基礎で土地と災害の関係を、数学と情報Iでデータの扱い方やプログラミングを学ぶ。無料で使える3D都市モデルのデータにふれてみる。
  3. 大学・専門学校工学部の土木・都市工学系、地理学科、情報系の学部などで、水の流れのシミュレーションやGISを学ぶ。測量士補などの資格も地図を扱う仕事の入口になる。

今から伸ばしたい力

  • 地形図やハザードマップを読み、土地の高い低いを想像する力
  • 数学と統計で、条件を変えたときの結果を比べる力
  • 3Dモデルや地図のソフト(GIS)を使いこなす力
  • 画面の上の結果と、実際の町の様子を見比べて確かめる力
  • 専門的な結果を、住民に分かる言葉と図で伝える力

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出典と前提

最終確認日
2026年11月4日

出典

この仕事が広がる前提

  • 3D都市モデルが多くの自治体で整備され、建物や道路の変化に合わせて更新され続けていること。
  • 自治体が避難計画を、地域ごと・建物ごとに細かく見直す取り組みを広げていること。
  • マンションや商業施設が、浸水時に近所の人を受け入れるしくみづくりに協力していること。

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