ものづくり・研究 想像の仕事
電池循環スペシャリスト
でんちじゅんかんすぺしゃりすと
使い終わった電気自動車などの電池を回収して劣化を診断し、蓄電池として第二の役目を与えるか、金属を取り出して新しい電池に戻すかを決めて処理する仕事になりそうだ。
はじめに
電気自動車などで使い終わった電池を集めて、どれくらい元気が残っているかを調べる仕事です。まだ使える電池は、家や工場で電気をためる電池に生まれ変わらせます。もう使えない電池は安全に分解して、リチウムなどの金属を取り出し、新しい電池の材料にもどします。
今ある芽
今ある技術や制度から見て、2050年には仕事として広がっている見込みが高いものです。いまは電気自動車の電池がまだ大量には使い終わっておらず、診断から再利用、リサイクルまでを一人の専門家が見通す仕事は少ない。使い終わる電池が増え、電池ごとの記録や再生材料の使用がルールになれば、行き先を判断する専門職の出番が広がりそうだ。
- EUの電池パスポートと再生材料のルールEUでは電池の素材や使われ方を記録する「デジタル電池パスポート」が2027年から義務になり、再生材料を一定量使うルールも始まる。記録を読み取って行き先を決める人が求められそうだ。出典:EU Policies That Will Transform Battery Recycling Industry(Battery Technology(Informa))
- 国内で電池リサイクルの仕組みを確立する目標経済産業省の蓄電池産業戦略は、2030年までに国内の電池リサイクルの仕組みを確立する目標をかかげた。回収から再資源化までを担う人材が必要になりそうだ。出典:蓄電池産業戦略 中間とりまとめ(案)(経済産業省)
2050年、どんな仕事をしている?
- 劣化診断回収した電池パックの容量や内部抵抗を測り、電池パスポートの使用履歴と照らして、どれくらいの力が残っているかを見積もる。
- 行き先の判定診断の結果から、そのまま再利用、組み直して定置用の蓄電池にする、素材として回収する、のどれにするかを決める。
- 定置用蓄電池への組み直し性質のそろった電池を組み合わせ、工場や地域の発電所で電気をためる蓄電池として作り直し、制御の設定を行う。
- 安全な放電と解体ふくらみや傷のある電池を見分け、完全に放電してから分解し、熱や火花が出ないよう手順どおりに処理する。
- 再生材料の品質確認電池を砕いて取り出した黒い粉(ブラックマス)や、そこから精製したリチウム・ニッケル・コバルトの成分を調べ、電池メーカーに渡せる品質か確かめる。
2050年の一日
2050年、電池循環スペシャリストの一日(架空)
「これは、まだ十年は働けますね」。若手の陸がタブレットを見せてきた。画面には、宅配会社が使い終えた小型トラック四十台分の電池の診断結果が並んでいる。電池の再生工場で判定を任されている五十代の浩二は、数字の一覧を上から下まで眺め、うなずいた。
受け入れ場には朝から運搬車が続けて入ってきた。パックを一つずつ台に載せ、端子をつなぐと、電池パスポートに残された充電の回数や、真夏にどれだけ熱くなったかの記録が出てくる。浩二はその履歴と、いま測った容量を見比べる。一台分だけ、外側がわずかにふくらんだパックがあった。浩二は再利用の列から外して隔離棚に移し、放電の担当に回した。
午後は車で一時間ほどの山あいの集落へ向かった。去年この工場で組み直した電池が、小さな太陽光発電所の横で、昼の電気を夜に回す役目をしている。管理する地元の会社の人と一緒に、充電と放電の記録を確かめた。冬の朝に少し力が落ちる癖が見つかり、制御の設定を変えることにした。
工場に戻ると、分析室から再生材料の結果が届いていた。ブラックマスから取り出したニッケルの純度が、電池メーカーの基準をわずかに下回っている。浩二は前工程の担当と、砕く前の仕分けを一段増やす案を話し合った。電池は形を変えながら何度でも働く。その順番を決めるのが自分の役目だと、浩二は思っている。
この仕事に近づくには
今からできること
- 中学理科の電池・化学変化・電流の単元をしっかり学ぶ。使わなくなった家電の分解や、資源リサイクルの自由研究も入口になる。
- 高校化学と物理を選ぶ。工業高校の化学科や電気科で、実験や電気の基礎を身につける道もある。
- 大学・専門学校応用化学、材料工学、資源工学、電気電子工学などの学科が近い。危険物取扱者や電気工事士の資格が、電池や電気を扱う現場で役立つことがある。
今から伸ばしたい力
- 化学(電池・金属・反応)の基礎を理解する力
- 測定値と記録を見比べて、状態を判断する力
- 安全の手順を守り、危ない兆しを見逃さない注意力
- 家電や機械を分解して、しくみを確かめる手先の器用さ
- メーカー、運送会社、地域の会社など相手に合わせて説明する力
近い「今の仕事」
この仕事に近いのは、今ある次の仕事です。今の年収や進路は、それぞれのページで見られます。
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生活サービス 産業廃棄物処理の技術者 工場や建設現場から出る汚泥・廃油・廃プラスチックなどの性質を分析し、安全で法令に適合した処理方法を設計する技術者。処理設備の運転条件や再資源化の工程を決め、処理記録と施設の維持管理も確認する。
2050年の収入少し上がる -
ものづくり・研究 材料開発の技術者 樹脂、金属、繊維などの材料の配合やつくり方を研究し、強度、重さ、耐熱性、再利用しやすさなどを改善する技術者。試料をつくって性能を測定し、量産でも同じ性質を出せる材料に仕上げる。
2050年の収入ほぼ変わらない -
ものづくり・研究 化学技術者 原料を反応させて樹脂、化学繊維、洗剤などをつくる工程を開発・改良する技術者。試作品の性質を測り、量産設備で安定して同じ品質に仕上げられる温度や配合、製造条件を決める。
2050年の収入ほぼ変わらない
出典と前提
出典
- EU Policies That Will Transform Battery Recycling Industry(Battery Technology(Informa))、2026年11月4日取得
- 蓄電池産業戦略 中間とりまとめ(案)(経済産業省)、2026年11月4日取得
この仕事が広がる前提
- 電気自動車や蓄電池が広く普及し、使い終わる電池がまとまった量で出てくること。
- 電池ごとの使用履歴が記録され、回収した人が読み取れる仕組みが国内外で使われていること。
- 再生材料を使った電池が、新しい材料の電池と同じように市場で受け入れられること。